NINETY 慰めは愛撫とキスのどちら?
文字数 1,113文字
僕は縁美 の髪をぽんぽんとパフするようなのが好きだけど、今日は髪を梳くように撫でてあげた。
「蓮見 くん、ありがとう・・・」
本心なんだと思う。
それほどに墓参で僕の両親と鉢合わせたことが彼女にダメージを与えてた。
「お元気そうだったね」
「ごめん。無理しなくていいよ」
「無理なんか・・・」
してるよね。
「蓮見くん」
「なに」
「もっと撫でて」
もちろんさ。
撫でながら次第に僕は縁美のうなじまで手を滑らせていく。
「気持ちいい?」
「うん」
すこし恥ずかしそうに目を閉じる。
「気持ち、いい・・・」
疲れてるんだろうな。
「このまま眠ってもいいよ」
「眠りたくない」
甘える彼女。
甘えさせる僕。
けれどもそれは僕らのどちらかの一方的な求めるココロじゃなくって・・・相手のココロの凹んだ形に合わせてあげたいっていう自由自在なココロなんだ。
僕らは互いの背を両手でさすってあげて・・・そのまま布団に入って温めあった。
自然と唇を重ねる。
15歳は大人だ。
誰がなんて言ったって。
だから僕らがふたりして暮らし始めたその最初の夜に。
僕はそういうことができないカラダだから、唇を重ねて、互いの背をさすり合ったあの夜が、僕らの大人の初まりだった。
変な表現だけど、元服の儀だったんだろうな。
何度もキスをして、それはソフトなそれだけでなくって、すこし強く、ちゅっ、と音を立ててあげたり、ほんのすこしだけ縁美の舌に触れてあげたり、縁美も触れてくれたり。
そのうちに眠ってしまった・・・
「蓮見くん。涼みに行かない?」
夜中に目が覚めた。
昼間には乗れなかった自転車に乗ってふたりで横にならんで月の真下を進んだ。
風がぬるいけどそのぬるい風の中にいくすじか突然冷たい空気が混じってくる。
だって、もうお盆だ。
いずれ秋になって行く。
「ほたるがみたい」
多分子供の頃にそうやってひらがなでつぶやいたんだろう、縁美は僕らのアパートの近くを流れる小さな川の隣の遊歩道でそうつぶやいた。
「みたの?」
「うん」
「どこで?」
「実家の前にあった用水で。幼虫がいてね。それで、暑い時期になるとその用水の壁面だとか、家の庭の植え込みとかに」
僕はサラトちゃんのおばあちゃんの家で蛍が見れるという話を思い出した。
「みにいこう」
「・・・うん」
縁美は答えた後で、もうひとことつぶやいた。
「もう一度」
縁美はペダルから素足に履いたサンダルを離して地面を支え、ハンドルに軽く手をかけたままで顔を近づけてきた。
目を開けたままで唇を触れ合わせた。
手を相手の体に添えずにキスするのはとても難しいけれども、彼女は目を閉じた。
僕も閉じた。
まぶたが作った黒い天幕に蛍のグリーンを点滅させた。
「
本心なんだと思う。
それほどに墓参で僕の両親と鉢合わせたことが彼女にダメージを与えてた。
「お元気そうだったね」
「ごめん。無理しなくていいよ」
「無理なんか・・・」
してるよね。
「蓮見くん」
「なに」
「もっと撫でて」
もちろんさ。
撫でながら次第に僕は縁美のうなじまで手を滑らせていく。
「気持ちいい?」
「うん」
すこし恥ずかしそうに目を閉じる。
「気持ち、いい・・・」
疲れてるんだろうな。
「このまま眠ってもいいよ」
「眠りたくない」
甘える彼女。
甘えさせる僕。
けれどもそれは僕らのどちらかの一方的な求めるココロじゃなくって・・・相手のココロの凹んだ形に合わせてあげたいっていう自由自在なココロなんだ。
僕らは互いの背を両手でさすってあげて・・・そのまま布団に入って温めあった。
自然と唇を重ねる。
15歳は大人だ。
誰がなんて言ったって。
だから僕らがふたりして暮らし始めたその最初の夜に。
僕はそういうことができないカラダだから、唇を重ねて、互いの背をさすり合ったあの夜が、僕らの大人の初まりだった。
変な表現だけど、元服の儀だったんだろうな。
何度もキスをして、それはソフトなそれだけでなくって、すこし強く、ちゅっ、と音を立ててあげたり、ほんのすこしだけ縁美の舌に触れてあげたり、縁美も触れてくれたり。
そのうちに眠ってしまった・・・
「蓮見くん。涼みに行かない?」
夜中に目が覚めた。
昼間には乗れなかった自転車に乗ってふたりで横にならんで月の真下を進んだ。
風がぬるいけどそのぬるい風の中にいくすじか突然冷たい空気が混じってくる。
だって、もうお盆だ。
いずれ秋になって行く。
「ほたるがみたい」
多分子供の頃にそうやってひらがなでつぶやいたんだろう、縁美は僕らのアパートの近くを流れる小さな川の隣の遊歩道でそうつぶやいた。
「みたの?」
「うん」
「どこで?」
「実家の前にあった用水で。幼虫がいてね。それで、暑い時期になるとその用水の壁面だとか、家の庭の植え込みとかに」
僕はサラトちゃんのおばあちゃんの家で蛍が見れるという話を思い出した。
「みにいこう」
「・・・うん」
縁美は答えた後で、もうひとことつぶやいた。
「もう一度」
縁美はペダルから素足に履いたサンダルを離して地面を支え、ハンドルに軽く手をかけたままで顔を近づけてきた。
目を開けたままで唇を触れ合わせた。
手を相手の体に添えずにキスするのはとても難しいけれども、彼女は目を閉じた。
僕も閉じた。
まぶたが作った黒い天幕に蛍のグリーンを点滅させた。