NINETY-NINE お金持ちと貧乏人どっちが好き?
文字数 1,031文字
「お金が欲しい」
「どうしたんですか美咲 さん」
そういうことは言わないだろうと思ってた人が言うと僕まで焦ってしまう。
「蓮見 っち。人間経済力だよ」
「否定はしませんけど・・・金銭面含めた総合的な生活力なんじゃないですか」
「蓮見っちは縁美 ちゃんが居るからそんなゆとりを持てるんだよ」
まあ・・・そうだとは思う。
「サラトちゃん。お金あった方がいいよね?」
「美咲さん、仕事しましょう」
「ごめん」
夏場暑いからと言って受注料金が割増になるわけじゃない。
いや、もしかしたら割増して請求してる会社もあるかもしれないけど、ウチがそんなことしてたら「じゃあいいです」とお客さんから言われてしまう。
「そういえば・・・今日って給料日ですよね」
「ぎくり」
「美咲さん、やっぱり今日変ですよ」
「あのね、蓮見っち」
「はい」
「親が入院したわけさ」
「えっ」
知らなかった。
美咲さんのご両親は離婚しててウチの会社に入る前はお母さんのパート収入と美咲さんのアルバイト収入とで生活してたはずだ。
だから美咲さんがウチみたいな小さな会社でも正社員として就職した時にはお母さんがはしゃぎ過ぎてホールでケーキを買って来て冷凍までして三日間かけて食べ切ったと聞いていた。
「なんのご病気ですか」
「狭心症、ってやつで。まあカテーテルするぐらいで大掛かりな手術じゃないから心配はしてないんだけど・・・お金がねえ・・・」
「美咲ちゃん、水臭いぞ」
「社長・・・」
社長がウチの福利厚生規定をプリントアウトして持ってきてくれた。
「補助や手当みたいな形でできれば一番いいんだけど難しいんでね。その代わり入院費貸与制度があるから」
「一応ウチに出入りしてる生保で財形もやってたんですけど・・・足りなくて。でも社長、資金繰りに余裕あるんですか?」
「余裕ぶちかまし・・・とは言えないけど健全経営はしてるつもりだよ。内海中型船に乗った気持ちで」
「例示がリアル過ぎます」
アパートに帰ってから縁美に訊いてみた。
「お金、あった方がいいよね?」
「蓮見くん。なに当たり前のこと言ってるの?」
けど、こんな風にも訊いてみた。
「縁美。何もしなくてお金がいっぱいあるのと、体も心も苦労してちょっとだけお金があるのとどっちがいい?」
「意地悪な質問だね」
「ごめん」
「どうしてもどっちかを選ばないといけないってなったら、ちょっとだけお金があるほうかな」
「どうして」
「ふふっ。どうして?だって、そうじゃなきゃ蓮見くんと一緒に暮らしてなんかいないよ」
ごめん。
「どうしたんですか
そういうことは言わないだろうと思ってた人が言うと僕まで焦ってしまう。
「
「否定はしませんけど・・・金銭面含めた総合的な生活力なんじゃないですか」
「蓮見っちは
まあ・・・そうだとは思う。
「サラトちゃん。お金あった方がいいよね?」
「美咲さん、仕事しましょう」
「ごめん」
夏場暑いからと言って受注料金が割増になるわけじゃない。
いや、もしかしたら割増して請求してる会社もあるかもしれないけど、ウチがそんなことしてたら「じゃあいいです」とお客さんから言われてしまう。
「そういえば・・・今日って給料日ですよね」
「ぎくり」
「美咲さん、やっぱり今日変ですよ」
「あのね、蓮見っち」
「はい」
「親が入院したわけさ」
「えっ」
知らなかった。
美咲さんのご両親は離婚しててウチの会社に入る前はお母さんのパート収入と美咲さんのアルバイト収入とで生活してたはずだ。
だから美咲さんがウチみたいな小さな会社でも正社員として就職した時にはお母さんがはしゃぎ過ぎてホールでケーキを買って来て冷凍までして三日間かけて食べ切ったと聞いていた。
「なんのご病気ですか」
「狭心症、ってやつで。まあカテーテルするぐらいで大掛かりな手術じゃないから心配はしてないんだけど・・・お金がねえ・・・」
「美咲ちゃん、水臭いぞ」
「社長・・・」
社長がウチの福利厚生規定をプリントアウトして持ってきてくれた。
「補助や手当みたいな形でできれば一番いいんだけど難しいんでね。その代わり入院費貸与制度があるから」
「一応ウチに出入りしてる生保で財形もやってたんですけど・・・足りなくて。でも社長、資金繰りに余裕あるんですか?」
「余裕ぶちかまし・・・とは言えないけど健全経営はしてるつもりだよ。内海中型船に乗った気持ちで」
「例示がリアル過ぎます」
アパートに帰ってから縁美に訊いてみた。
「お金、あった方がいいよね?」
「蓮見くん。なに当たり前のこと言ってるの?」
けど、こんな風にも訊いてみた。
「縁美。何もしなくてお金がいっぱいあるのと、体も心も苦労してちょっとだけお金があるのとどっちがいい?」
「意地悪な質問だね」
「ごめん」
「どうしてもどっちかを選ばないといけないってなったら、ちょっとだけお金があるほうかな」
「どうして」
「ふふっ。どうして?だって、そうじゃなきゃ蓮見くんと一緒に暮らしてなんかいないよ」
ごめん。