185 授けものと授かりものならどっち?

文字数 667文字

 金曜の夜、僕と縁美(えんみ)は人と遭った。

野々原(ののはら)です。よろしく」
「よろしくお願いします」

 面談場所は駅前のカフェ。
 野々原さんは実年齢よりも相当若く見える女性だ。

 お別れ会の時に『子供の手配師』などと美咲(みさき)さんがふざけて言っていたその女性は『特別養子縁組』を考えているひとと子供たちをめぐり合わせる団体のスタッフさんだ。

「それで、あなたたちが子供を欲しい理由は?」

 一番緊張する質問を僕らはぶつけられた。

 答えよう。

「親になりたいからです」
「シンプル!」

 野々原さんは僕らのことを好きになってくれたみたいだ。

「どんな子がいいの?」
「どんな子でも」
「ほんとに?」
「はい。特別養子縁組を考えていると父親に言ったら『犬や猫じゃないんだぞ』と言われました。父親に言われるまでもありません。毛並みやかわいさや性格やそんなことはどうでもいいんです」
「なら、何?」
「僕らのところに来てくれる子が縁のある子だと思うんです」
「素晴らしい!」

 野々原さんはとてもドラマティックなひとだ。
 感極まった声で僕らを讃えてくれた。

「あなたたちふたりは、もう、親よ」

 そして核心を話してくれた。

「特別養子縁組の親になろうと思ったらとても大切な条件があるのよ」
「はい」

 知ってた。

 もしかしたら僕らはそのために、5年間の僕らの生きてきた結果を出すために・・・・・・決断するために親になろうとしているのかもしれない。

「蓮見さん、縁美さん。結婚なさい」

 返事は決まってる。

「はい」

 ただ・・・・・・・・・実は更に条件があって。

 後5年、僕らは親になるための準備期間が必要なんだ。
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