202 「ダメ」と「いい」ならどっち?
文字数 1,284文字
「お前はダメだ」
真正面からこういう言葉でなくても意訳するとこう告げられることがある。
さあ、どうしようか。
「蓮見 どの、縁美 どの・・・・・辛いさね」
プロの漫画家という仕事柄、WEBの中や現実の出版関係者とのやりとりで批判に晒されることも経験してきている彼女にして辛いと打ち明けられた。
土曜夜のファミレスで絵プロ 鵜と僕らは3人で語っていた。
「絵プロ鵜ちゃん。そんなにひどいダメ出しだったの?」
「縁美どの・・・・・・漫画そのものに対してもそうなのだが・・・・・・某 自身がダメだということのようなのさね」
「?絵プロ鵜。具体的に言ってみてよ。何があったの?」
「本当は前から某の連載を別の作家に替えたかった。ようやく代わりの作家が見つかったから連載を打ち切るって担当の編集さんから言われたのさね・・・・・・」
あ・・・・・・・
え・・・・・・・
「え、絵プロ鵜ちゃん、でもその担当さんは絵プロ鵜ちゃんの漫画を面白いって言ってくれてたんじゃないの?」
「言ってたさね。でもそれは今調達可能な作品の中での話であって、編集部では切りたかったんだそうさね」
「調達?」
調達って、なんだよ。
なんだそれは。
「絵プロ鵜。その連載が終わったら、生活は?」
「し、収入のことかね?もうひとつの連載があるのと一応単行本の印税が入ってくるからまだなんとかなると思うさね」
「僕が出版社と話そうか?」
えっ、と絵プロ鵜は呆然として、縁美は唖然という感じでふたりして僕を見る。
でも、言わなきゃ。
今、言わなきゃ。
「絵プロ鵜はダメじゃない」
「し、しかしさね・・・・・もしかしたら本当に某の漫画がお金をいただく水準をクリアしてなくて出版社と・・・・板挟みになっていた編集さんに迷惑をかけていたんだとしたら・・・・・」
仮にそうだったとしても。
僕は言わなきゃいけないんだ。
「絵プロ鵜。キミはダメじゃない」
「は、蓮見どの・・・・・」
トイレへ行くと言って彼女は席を外した。
「絵プロ鵜ちゃん、泣きに行ったんだね・・・・・蓮見くん。どうしてあそこまではっきりと言えるの?冷静に絵プロ鵜ちゃんの漫画のこととかわかるの?」
「わからない」
「えっ・・・・・・・」
「ダメとかいいとか僕にはわからない。でもこれだけはわかったんだ」
「なに」
「僕が今、彼女に『キミはダメじゃない』っていう役割なんだって」
絵プロ鵜が戻ってくるまでの間、少しずつ少しずつ縁美と話した。
縁美は僕の言った、根拠も理屈も不明のことを、やっぱり根拠も理屈もなく理解してくれた。
ありがとう、縁美。
「す、すまないさね・・・・・もう大丈夫さね・・・・・」
戻って来た絵プロ鵜に縁美はこう言った。
「大丈夫じゃなくても、いいよ」
「え」
「もし大丈夫じゃないなら、大丈夫じゃないって言ってね。絵プロ鵜ちゃんを辛いまま帰したくない」
「縁美どの・・・・・・・」
「ね?」
そしたら絵プロ鵜は隣に座る縁美に言った。
「ほんとうは、まだまだ辛いさね。辛くて辛くてたまらないさね」
泣く彼女の髪に後ろからそっと手を回して胸に引き寄せ、縁美は泣き顔を周りのテーブルから隠してあげた。
真正面からこういう言葉でなくても意訳するとこう告げられることがある。
さあ、どうしようか。
「
プロの漫画家という仕事柄、WEBの中や現実の出版関係者とのやりとりで批判に晒されることも経験してきている彼女にして辛いと打ち明けられた。
土曜夜のファミレスで
「絵プロ鵜ちゃん。そんなにひどいダメ出しだったの?」
「縁美どの・・・・・・漫画そのものに対してもそうなのだが・・・・・・
「?絵プロ鵜。具体的に言ってみてよ。何があったの?」
「本当は前から某の連載を別の作家に替えたかった。ようやく代わりの作家が見つかったから連載を打ち切るって担当の編集さんから言われたのさね・・・・・・」
あ・・・・・・・
え・・・・・・・
「え、絵プロ鵜ちゃん、でもその担当さんは絵プロ鵜ちゃんの漫画を面白いって言ってくれてたんじゃないの?」
「言ってたさね。でもそれは今調達可能な作品の中での話であって、編集部では切りたかったんだそうさね」
「調達?」
調達って、なんだよ。
なんだそれは。
「絵プロ鵜。その連載が終わったら、生活は?」
「し、収入のことかね?もうひとつの連載があるのと一応単行本の印税が入ってくるからまだなんとかなると思うさね」
「僕が出版社と話そうか?」
えっ、と絵プロ鵜は呆然として、縁美は唖然という感じでふたりして僕を見る。
でも、言わなきゃ。
今、言わなきゃ。
「絵プロ鵜はダメじゃない」
「し、しかしさね・・・・・もしかしたら本当に某の漫画がお金をいただく水準をクリアしてなくて出版社と・・・・板挟みになっていた編集さんに迷惑をかけていたんだとしたら・・・・・」
仮にそうだったとしても。
僕は言わなきゃいけないんだ。
「絵プロ鵜。キミはダメじゃない」
「は、蓮見どの・・・・・」
トイレへ行くと言って彼女は席を外した。
「絵プロ鵜ちゃん、泣きに行ったんだね・・・・・蓮見くん。どうしてあそこまではっきりと言えるの?冷静に絵プロ鵜ちゃんの漫画のこととかわかるの?」
「わからない」
「えっ・・・・・・・」
「ダメとかいいとか僕にはわからない。でもこれだけはわかったんだ」
「なに」
「僕が今、彼女に『キミはダメじゃない』っていう役割なんだって」
絵プロ鵜が戻ってくるまでの間、少しずつ少しずつ縁美と話した。
縁美は僕の言った、根拠も理屈も不明のことを、やっぱり根拠も理屈もなく理解してくれた。
ありがとう、縁美。
「す、すまないさね・・・・・もう大丈夫さね・・・・・」
戻って来た絵プロ鵜に縁美はこう言った。
「大丈夫じゃなくても、いいよ」
「え」
「もし大丈夫じゃないなら、大丈夫じゃないって言ってね。絵プロ鵜ちゃんを辛いまま帰したくない」
「縁美どの・・・・・・・」
「ね?」
そしたら絵プロ鵜は隣に座る縁美に言った。
「ほんとうは、まだまだ辛いさね。辛くて辛くてたまらないさね」
泣く彼女の髪に後ろからそっと手を回して胸に引き寄せ、縁美は泣き顔を周りのテーブルから隠してあげた。