160 肉まんとあんまん、ズバリどっち!?

文字数 1,038文字

 もうそろそろ冬も近づいて来てコンビニに入ったら厳しい選択を迫られる。

「ええと」
「はい」
「うーんと」
「はいはい」
「肉・・・・・・・あんまんを」
「ありがとうございます」

 仕事の帰り道、あったまるのをメインに買うおやつ。

 これからアパートに帰って縁美(えんみ)と一緒にご飯を食べる前に、両方はいけない。肉まんかあんまんかを選ばないといけないのだ。今日は糖分の誘惑に勝てなかった。

 結果のあんまん。

 そのままコンビニの前で、かぷ、とひとくち齧る。

「熱っ」

 おそらく黒胡麻を練り込むことで保温性がアップするのだろう、餡の少しごつっ、とした舌触りと火傷しそうなぐらいの熱さがたまらない。

 え?

 縁美におみやげを買っていかないのかって?

 いえいえ。アパートの冷凍庫にちゃんと肉まんもあんまんもあるのだ。

 僕はストックされたそれじゃなくって、疲れ果てた勤め人の『レジャー』としての一個の肉まん・あんまんが欲しいんだ。

「ただいま」
「あー、蓮見(はすみ)くん!」
「な、なに?」
「あんまん食べたね!?」
「ど、どうしてわかるの?」

 察しはついた。

「唇が黒くなってるよ」

 きちんとハンカチで拭いたつもりでもこの濃厚な黒胡麻練り込み餡の漆黒は消せなかったということだ。

 やはり深い。

 夕食を食べ終わった後、縁美が冷凍庫を開けた。

「どう?こんなの買ってみたんだけど」

 なんだろう、これは。

 でっかい。

 初めて見る物体だ・・・・・・

「カレーパンまん!」
「えっ」

 目だけでなく耳も疑った。

「ウチのスーパーで新規で仕入れてみたんだよね」
「それって・・・・商標登録とか大丈夫なの・・・?・・・著作権とか・・・・」
「どうして?」
「だってカレーパンマ・・・・」
「ストップ!蓮見くん!ダメだよ、カタカナで言っちゃ。『カレーパンまん』ってちゃんとひらがなを混ぜないと」

 カレーまんではなかった。

 まんじゅうの皮の中にカレーパンがそのまま丸ごと入っているんだ。

 レンジであっためて半分こした。

「・・・・・・・美味しい・・・・」
「でしょう?揚げてあるパン粉が蒸されてしっとりしてるのも却っていいでしょ?」
「うん」
「ただ難点はわざわざ小さいカレーパンを作るのだとコストがかかるから普通のカレーパンをそのまま入れたら大きさもカロリーも半端ないところだよね」

 確かにこれは晩ご飯前の買い食いでは無謀だ。

「縁美。卸業者さんには他にも変わった中華まんってあるの?」
「今度仕入れてみようって思ってるのはねー」
「うん」
「焼きそばパンまん!」

 やめた方がいい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み