TEN バンとセダン乗るならどっち?
文字数 1,278文字
「車はやっぱりセダンだよ」
「すみませぇん、美咲 さん。セダンってなんですかぁ?」
「三春 ちゃーん。まったく最近の若い娘は・・・ほら、蓮見 っち、教えてあげて」
「すみません。僕もピンと来ません」
10代終わりの女子と20歳男子の無知ぶりに嘆く美咲さん。そこから演説が始まった。
「車はセダンよ。わたしがイケイケの頃乗ってた車、なんだかわかる?」
イケイケ・・・?
「あー。もしかしてーベンツですかぁー?」
「いきなり最高峰行かれちゃったけど・・・ギャランよ」
「わぁー!すごいですぅー!」
ギャラン?
三春ちゃん、分かってるんだろうか。
悪いけど僕は分からない。
「ただいまー」
「蓮見くん!」
わっ。
いきなり抱きつく勢いで縁美 に手を握られた。
なんか、終わり良ければいい日だな・・・
「そうじゃなくて。ピンチなんだよ蓮見くん」
「どうしたの?」
「トラックを運転しなくちゃいけなくなったの」
よく聞くと縁美が正社員として働くスーパーマーケットのバンで高齢のお客さんを送迎することになったのだそうだ。
大きい車はトラックだという発想は昼間僕と三春ちゃんが美咲さんからダメ出しされたのと同じだ。
「ほら。ウチは社長が八百屋さんからスタートさせた個人商店みたいなスーパーだからさ。地元のご高齢の方たちをなんとかして取り込もうと必死で」
「ふうん。縁美が送迎役になるの?」
「ローテーションでね。普段は運転するとしても軽四ワゴンだから・・・蓮見くんは大きな車、仕事で運転してるんでしょう?」
「まあ、現場から現場に清掃用具積んでバンを運転してるよ」
「ねえ、教えて!」
なんだろう。縁美に頼られるなんてなんかすごく気分がいいな。
僕も大人になったもんだ。
そんなわけで次の休みの日、僕も一応正社員であるビルメンテナンス会社の社長に特別に許可を取って営業用のバンを貸してもらった。
近所の河川敷近くにある大きな青空駐車場へ練習しに出掛けた。
「わあ・・・シートが高い」
「見晴らしいいでしょ、縁美」
「うん。怖い」
まあそうだろうと思う。僕も免許取り立てで美咲さんから「運転しな」と業務命令を出された時は相当焦った。
「ええと。縁美は軽四ワゴンは運転してるわけだからバンの車体の大きさの感覚を掴む、って練習をすればいいと思うんだ」
「うん。どうするの?」
「バックの練習だよ」
聞けば送迎ルートは結構細い道が多く、切り返しなどをするためにはバックで塀を擦ったり側溝で脱輪しないように車長や車幅の感覚を身につけておかなくてはならない。
「蓮見くんの会社のバンってバックモニターないんだね・・・」
「うん。だからこれでバックで車庫入れ何度も練習すれば縁美の所のバンならバックモニター使ってなんとかなるでしょ」
「う、うん。頑張る」
最初は僕が降りて後ろからオーライオーライとやりながら。
その後は自分の目視で白線の中にきれいに停められるようになるまで。
「うまいうまい。さすが縁美」
「いやー。ねえ、蓮見くん」
「なに」
「このままドライブ行かない?」
「・・・『(有)零細清掃社』のロゴが入ったこのバンで縁美がいいのなら・・・」
「すみませぇん、
「
「すみません。僕もピンと来ません」
10代終わりの女子と20歳男子の無知ぶりに嘆く美咲さん。そこから演説が始まった。
「車はセダンよ。わたしがイケイケの頃乗ってた車、なんだかわかる?」
イケイケ・・・?
「あー。もしかしてーベンツですかぁー?」
「いきなり最高峰行かれちゃったけど・・・ギャランよ」
「わぁー!すごいですぅー!」
ギャラン?
三春ちゃん、分かってるんだろうか。
悪いけど僕は分からない。
「ただいまー」
「蓮見くん!」
わっ。
いきなり抱きつく勢いで
なんか、終わり良ければいい日だな・・・
「そうじゃなくて。ピンチなんだよ蓮見くん」
「どうしたの?」
「トラックを運転しなくちゃいけなくなったの」
よく聞くと縁美が正社員として働くスーパーマーケットのバンで高齢のお客さんを送迎することになったのだそうだ。
大きい車はトラックだという発想は昼間僕と三春ちゃんが美咲さんからダメ出しされたのと同じだ。
「ほら。ウチは社長が八百屋さんからスタートさせた個人商店みたいなスーパーだからさ。地元のご高齢の方たちをなんとかして取り込もうと必死で」
「ふうん。縁美が送迎役になるの?」
「ローテーションでね。普段は運転するとしても軽四ワゴンだから・・・蓮見くんは大きな車、仕事で運転してるんでしょう?」
「まあ、現場から現場に清掃用具積んでバンを運転してるよ」
「ねえ、教えて!」
なんだろう。縁美に頼られるなんてなんかすごく気分がいいな。
僕も大人になったもんだ。
そんなわけで次の休みの日、僕も一応正社員であるビルメンテナンス会社の社長に特別に許可を取って営業用のバンを貸してもらった。
近所の河川敷近くにある大きな青空駐車場へ練習しに出掛けた。
「わあ・・・シートが高い」
「見晴らしいいでしょ、縁美」
「うん。怖い」
まあそうだろうと思う。僕も免許取り立てで美咲さんから「運転しな」と業務命令を出された時は相当焦った。
「ええと。縁美は軽四ワゴンは運転してるわけだからバンの車体の大きさの感覚を掴む、って練習をすればいいと思うんだ」
「うん。どうするの?」
「バックの練習だよ」
聞けば送迎ルートは結構細い道が多く、切り返しなどをするためにはバックで塀を擦ったり側溝で脱輪しないように車長や車幅の感覚を身につけておかなくてはならない。
「蓮見くんの会社のバンってバックモニターないんだね・・・」
「うん。だからこれでバックで車庫入れ何度も練習すれば縁美の所のバンならバックモニター使ってなんとかなるでしょ」
「う、うん。頑張る」
最初は僕が降りて後ろからオーライオーライとやりながら。
その後は自分の目視で白線の中にきれいに停められるようになるまで。
「うまいうまい。さすが縁美」
「いやー。ねえ、蓮見くん」
「なに」
「このままドライブ行かない?」
「・・・『(有)零細清掃社』のロゴが入ったこのバンで縁美がいいのなら・・・」