247 アニメと漫画ならどちら?
文字数 1,331文字
「蓮見 さーん。早く早く」
真直 ちゃんが僕を急かす。
僕らの街にある大学のメディアミックス学科の卒業制作展なんだ。
会場は市民会館の中ブース。
社会人や一般の人たちの為に夜も開場していて今日は最終日。真直ちゃんは推薦入学も見越して見ておきたいと。
そしてメディアミックスとくれば本来は真っ先に観に行きたがるはずの彼女はというと。
「こ、今晩は。し、審査委員長の絵プロ鵜 さね」
並み居る教授やら准教授やらを差し置いて絵プロ鵜が卒業作品コンテストの審査委員長に大抜擢された!
「ひゃひゃひゃ。絵プちゃん緊張してるー」
縁美 もスーパーの仕事上がりに駆けつけた。
「絵プロ鵜ちゃんは?」
「ガチガチだよ」
学生コンテストと侮るなかれ。在学中に音楽やアニメーション等の作品を地元商店や企業PRのコンテンツとして提供して来たプロ集団だ。
絵プロ鵜がコンテストの趣旨を述べる。
「こ、このコンテストは単に作品を評価するだけじゃないさね。将来みなさんが仮に都会を活動拠点にクリエイターとして成功しても、この県をココロの故郷と思い起こして頂いて我ら県民の創造的活動を応援して頂くことの決意表明さね」
おおおー!と学生たちが盛り上がる。
既に県内メーカーに就職を決めた者。
卒業後は東京に戻ってアニメスタジオ入りを目指す者。
様々な立場の学生が心血を注いで予備選を戦い、ここに二作が勝ち残った。
「まず、アニメーション作品、『Mountains』」
5人共作のアニメ。女子大生の主人公が僕らの県に聳える山から見る星空のタイムラプスから始まって、次第に映像は山の地層の内部、そして深く地中のマグマの映像へと繋がって行く。
熱い、地球の中心部の溶岩。
実は、主人公の女子大生が恋人の子を宿したその胎内だったというラストシーンへ。
「ブラボー!」
会場が高揚する中、絵プロ鵜は静かに採点ボードにメモを取る。
「では、漫画作品、『日月(にちげつ)の交わり』」
一人の女子学生が書いたその漫画の発表は極めてシンプル。
現世利益を民衆に実現しようと戦う自称巫女のヒロインを描いた長編で、そのワンシーンとなる数ページを、そのままスライドショーで映し出した。
「あ」
「え」
「ふーん」
僕と縁美と真直ちゃんはその一コマに釘付けになった。
白の男物のボタンを留めないワイシャツを羽織り、髪には赤いバンダナを垂らし、原爆ドームの上空に向かって祝詞をあげる。
『爆弾を成層圏の遥か彼方へ』
数十万人の人を救おうとするオマージュに、ストーリーの説明も一切無いのに・・・・・
「蓮見くん・・・・」
「うん・・・」
「すごいね・・・・」
「審査の結果を発表するさね」
絵プロ鵜が言い淀まずに堂々と告げた。
「最優秀賞は、『Mountains』!』
わああー!と歓声と拍手が起こる。
賞金と記念品を渡した後、絵プロ鵜がスピーチした。
「そ、某 はこのふたつの作品は創作であって創作でないと思うさね。リアルそのものだと思うさね。両作品とも人のココロを救うさね」
会場は、しん、として聞き入る。
「受賞はならなかったけれども、もし『日月(にちげつ)の交わり』を被曝した方たちがお読みになったら、きっと、『報われた』って思っていただけると、そう、信じるさね」
僕らの街にある大学のメディアミックス学科の卒業制作展なんだ。
会場は市民会館の中ブース。
社会人や一般の人たちの為に夜も開場していて今日は最終日。真直ちゃんは推薦入学も見越して見ておきたいと。
そしてメディアミックスとくれば本来は真っ先に観に行きたがるはずの彼女はというと。
「こ、今晩は。し、審査委員長の
並み居る教授やら准教授やらを差し置いて絵プロ鵜が卒業作品コンテストの審査委員長に大抜擢された!
「ひゃひゃひゃ。絵プちゃん緊張してるー」
「絵プロ鵜ちゃんは?」
「ガチガチだよ」
学生コンテストと侮るなかれ。在学中に音楽やアニメーション等の作品を地元商店や企業PRのコンテンツとして提供して来たプロ集団だ。
絵プロ鵜がコンテストの趣旨を述べる。
「こ、このコンテストは単に作品を評価するだけじゃないさね。将来みなさんが仮に都会を活動拠点にクリエイターとして成功しても、この県をココロの故郷と思い起こして頂いて我ら県民の創造的活動を応援して頂くことの決意表明さね」
おおおー!と学生たちが盛り上がる。
既に県内メーカーに就職を決めた者。
卒業後は東京に戻ってアニメスタジオ入りを目指す者。
様々な立場の学生が心血を注いで予備選を戦い、ここに二作が勝ち残った。
「まず、アニメーション作品、『Mountains』」
5人共作のアニメ。女子大生の主人公が僕らの県に聳える山から見る星空のタイムラプスから始まって、次第に映像は山の地層の内部、そして深く地中のマグマの映像へと繋がって行く。
熱い、地球の中心部の溶岩。
実は、主人公の女子大生が恋人の子を宿したその胎内だったというラストシーンへ。
「ブラボー!」
会場が高揚する中、絵プロ鵜は静かに採点ボードにメモを取る。
「では、漫画作品、『日月(にちげつ)の交わり』」
一人の女子学生が書いたその漫画の発表は極めてシンプル。
現世利益を民衆に実現しようと戦う自称巫女のヒロインを描いた長編で、そのワンシーンとなる数ページを、そのままスライドショーで映し出した。
「あ」
「え」
「ふーん」
僕と縁美と真直ちゃんはその一コマに釘付けになった。
白の男物のボタンを留めないワイシャツを羽織り、髪には赤いバンダナを垂らし、原爆ドームの上空に向かって祝詞をあげる。
『爆弾を成層圏の遥か彼方へ』
数十万人の人を救おうとするオマージュに、ストーリーの説明も一切無いのに・・・・・
「蓮見くん・・・・」
「うん・・・」
「すごいね・・・・」
「審査の結果を発表するさね」
絵プロ鵜が言い淀まずに堂々と告げた。
「最優秀賞は、『Mountains』!』
わああー!と歓声と拍手が起こる。
賞金と記念品を渡した後、絵プロ鵜がスピーチした。
「そ、
会場は、しん、として聞き入る。
「受賞はならなかったけれども、もし『日月(にちげつ)の交わり』を被曝した方たちがお読みになったら、きっと、『報われた』って思っていただけると、そう、信じるさね」