ONE HUNDRED EIGHTEEN 女神と王子ならどっち?

文字数 1,097文字

 おめでた退社した三春(みはる)ちゃんをどうしても分類するならば小悪魔キャラだったろう。
 美咲(みさき)さんは頼れる姉御キャラか。
 絵プロ鵜(えぷろう)は・・・あの子、っていう表現しかできない本流よりも太っとい支流だろうか。天才だから。

 実はこんなセクハラまがいの妄想分類をしたのは相談する相手を選別するためなんだ。

 厳選なる選考の結果、僕が相談相手に選んだのは。

蓮見(はすみ)せんぱい。これはデートという認識でよろしいんですね?」
「デートじゃないよ」
「ああ、そうですか」

 サラトちゃんを選んだのは、彼女が『王子キャラ』だから。
 本人には言えないけど。

「蓮見せんぱい。クラシックお好きなんですか?」
「この前、絵プロ鵜と来たから」
「!」
「デ、デートじゃないよ」

 場所は名曲喫茶にした。
 相談の場所としたら妥当だろう。
 しかもその相談は。

「せんぱい。驚きました」
「そうだよね」
「あの・・・内容もそうなんですけど、『それをわたしに訊きます?』という驚きです」
「え。僕はサラトちゃんにならと思って」
「でも縁美(えんみ)さんにそんなこと訊きませんよね」
「当事者だからね」
「そうじゃなくて」

 ごめん、わかってるよ。
 でも、ほんとうに他にいなくて。

「蓮見せんぱいが『養子縁組』を考えるほどに悩んでたなんて。でもわたしみたいな若輩者にそんなこと」
「いや。サラトちゃんは若いけど人格を尊敬してる」
「ならば」

 もちろん手続面のことなんかを相談するわけじゃない。
 僕が訊きたかったのはまさしく父親がこの間僕に言い放ったひとことだ。

『犬や猫じゃないんだぞ』

 だから相談もほぼその質問に凝縮されてた。

「サラトちゃん。僕は父親になれるかな?」
「蓮見せんぱいは・・・・・・」

 ぼくは・・・・・?

「もう父親みたいですよ」
「えっ」
「わたしの父親よりよっぽど色んな目に遭っておられます。ましてや兄なども比べものになりません」
「そんなこと・・・・」
「わたしは極めて客観的に冷静にお答えしてるんです。だからこれも言わざるを得ません。縁美さんも既に母親っぽいです」

 ストイックな王子様キャラのはずがサラトちゃんはヤケコーヒーだと言いつつホットケーキとわらび餅パフェも要求した。それから最後にこう言った。

「蓮見せんぱいと縁美さんはほんとに

ができないんですね・・・わたしにもチャンスがありますね」

 それは、ないよ。

「ただいま」
「あ。お帰りなさい、蓮見(はすみ)くん」

 縁美は・・・彼氏の欲目と言われようとも女神キャラだ。ただし、

 女神だけど地味。
 女神だけどよく怒る。
 女神だけど心配性。
 女神だけど・・・時々エッチ。

「どうしたの?」
「別に・・・・・」

『だけど』の部分が、とても愛おしい。
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