244 お雑煮と雑魚寝ならどちら!?

文字数 1,138文字

 なんという新年だろうか。

 真直(まなお)ちゃんと捻美(ひねみ)ちゃんという終末兵器に打ち克って迎えた泰平のアパートには縁美(えんみ)と4歳の捻美ちゃんが同じ布団で眠り。

『絶対に嫌さね!』
 と最後まで抵抗していた絵プロ鵜(えぷろう)も新年の大寒波に凍死する訳にもいかずとうとう真直ちゃんと同じ布団で寝た。

 さすがに女子四人の部屋で寝る訳にもいかず僕はキッチンにファンヒーター全開にスキー服上下と湯たんぽの完全装備で雑魚寝だったんだけどむしろ安全地帯だったと思う。

 そして意外なことに一番早く起きてキッチンにやって来たのは真直ちゃんだった。

「あけ・・・」
「ストップ!蓮見(はすみ)さーん。新年の挨拶は全員席についてからね。台所、借りるね?」

 へえ・・・・
 意外というか・・・・
 さすが迫田(さこた)さんの孫娘と言うべきか・・・・・

 次に起きてきたのは捻美ちゃん。

「蓮見さん、昨夜は泊めていただいてありがとう。とても楽しい大晦日だったよ」
「いえ・・・こちらこそ」

 捻美ちゃんは真直ちゃんの隣に椅子を置いてその上に立つ。

 次はスーパーの年末商戦を戦い尽くした縁美が起きてきた。

「蓮見くん、ごめんね。寝坊しちゃった」
「ううん。まだ早いよ。絵プロ鵜は?」
「うなされてるよ。『下を触るな!』とか言って・・・」

 深く訊かない方がよさそうだ。

「眠れなかったさね・・・」

 おそらく漫画の締め切り前はこんなんじゃないだろうかという顔をした絵プロ鵜がテーブルに座って全員揃った。
 そして女子四人がどういう訳か全員して僕を見る。

「じゃあ、なんとなく僕が。皆さん、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます!」

 こういうの、苦手なんだけど・・・成り行きだからな・・・

「ええと・・・昨年は本当にお世話になりました。そしてこうして温かな新年の朝を迎えることができました」
「死ぬところだったさね・・・」
「・・・と、とにかく無事に年を越せました。皆さん、今年もよろしくお願いします」

 ぺこっ、って全員で頭を下げる。

「そして、このお雑煮は真直ちゃんと捻美ちゃんが持参の食材で作ってくれました」

 みんなお椀に盛り付けられたお雑煮を見つめる。

 お餅の上に海老と花形にくりぬかれた人参と鶏肉、そして牛蒡が乗っかり、熱い出汁たっぷりのおすましがかけられている。
 湯気から柚と三つ葉の匂いが香り立ってくる。

「真直ちゃん。解説とかあれば」
「では。このお雑煮は迫田家の姑から嫁に代々伝承されてきてる作り方でみんなの口に合うかどうか。ただ、蓮見さんと縁美さんの作ったおせちと一緒に食べて貰えれば新春の厳かさを損ねないようにはできてると思うね」

 絵プロ鵜が口を半開きにして真直ちゃんを凝視する。

「・・・だ、大丈夫かね・・・?」
「失礼な。これがほんとのわたしなんだよ。ひゃひゃひゃ」
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