TWENTY-SIX 線画と完成画とどっちがいいね!
文字数 1,170文字
「やあやあやあ。縁美 どの、蓮見 どの、永 のご無沙汰でござった」
「絵プロ鵜 ちゃん、ほんとに久しぶり」
「絵プロ鵜 、いつも読んでるよ」
僕と縁美の数少ない中学時代の友達が僕らのアパートにやって来た。
なんと、女子だ。
そしてなんと、プロの漫画家なんだ!
「縁美どの。蓮見どの。某 の漫画っておもしろいかい?」
「おもしろいよ、ねえ縁美」
「うん。わたしも毎回楽しみにしてて・・・前回はモロヘイ野郎が木っ端ミジンコをdisturbしたのが最高にかっこよかったよ!」
「いやいやいやいや。縁美どのさすがですなあ。あの作者にしか分からないことを意図して裏設定を四重五重に重ね合わせて組んだストーリをいとも簡単に見破るとは。はっ!汝こそ最強のフォロワーさね!」
「絵プロ鵜、お茶でも飲みなよ」
僕は熱ーいお茶を彼女に淹れてお茶うけにとっておきのマロングラッセを出してあげた。
「おお!これは最高級の甘味。まさしく砂糖菓子の王様、マロンちゃん!この砂糖をシロップの如くコーティングに使用したフォルムとツヤが堪らんですわねえ!」
さすが漫画家。
才能が溢れるというよりははみ出てきているよ。
その彼女が最近の悩みを僕らに語ってくれた。
「実は・・・線画をSNSに上げたら色を塗って完成させた絵よりも評価が高いのだよ・・・これって自分がつまらない人間のように思えてきてしまうのさね・・・」
「え?どうして?」
「縁美どの・・・某は漫画としての完成度を追い求めているのさね。確かにインディーズ・バンドのように荒削りなデモ楽曲が却ってガレージで音を歪ませて演奏しているような一瞬の臨場感を叩き出せるという稀なケースはあろうけど・・・某はやはり出来上がった完成形としての絵を愛してほしいわけさ」
絵プロ鵜は破格の新人漫画として一部のマニアから認知されている。
ただ、その位置をここ3年ほど脱却できないままでいるんだ。
絵プロ鵜は不意に叫んだ。
「あっ・・・!」
「なに?どうしたの?」
縁美が反応する。
実は絵プロ鵜が少なくとも今程度の漫画の仕事を貰い続けることができてこれからも無事毎日を送れるよう祈っていた縁美はやはり安堵の息を漏らすことになった。
「未完の大樹も、芽を出したばかりの野の花も、本質は同じでござった・・・そこに気付かぬとは!まだまださね、某 は!」
なんだかうまくまとまったような何の解決にもなっていないような状態だったけれど、僕らはやっぱり未完の小説を書くワナビのごとくに称え合った。
「わずか1000文字ですべてを描こうとする文章屋がいるという!ならば某はたったひとコマで人間の機微を描こうとする漫画家さね!だから描くのをやめられないのさ、某は!」
ダァン!と絵プロ鵜は縁美が淹れたばかりのお代わりの緑茶をこぼす勢いでテーブルを拳で叩いた。
よくわかんないけどかっこいい・・・
「
「
僕と縁美の数少ない中学時代の友達が僕らのアパートにやって来た。
なんと、女子だ。
そしてなんと、プロの漫画家なんだ!
「縁美どの。蓮見どの。
「おもしろいよ、ねえ縁美」
「うん。わたしも毎回楽しみにしてて・・・前回はモロヘイ野郎が木っ端ミジンコをdisturbしたのが最高にかっこよかったよ!」
「いやいやいやいや。縁美どのさすがですなあ。あの作者にしか分からないことを意図して裏設定を四重五重に重ね合わせて組んだストーリをいとも簡単に見破るとは。はっ!汝こそ最強のフォロワーさね!」
「絵プロ鵜、お茶でも飲みなよ」
僕は熱ーいお茶を彼女に淹れてお茶うけにとっておきのマロングラッセを出してあげた。
「おお!これは最高級の甘味。まさしく砂糖菓子の王様、マロンちゃん!この砂糖をシロップの如くコーティングに使用したフォルムとツヤが堪らんですわねえ!」
さすが漫画家。
才能が溢れるというよりははみ出てきているよ。
その彼女が最近の悩みを僕らに語ってくれた。
「実は・・・線画をSNSに上げたら色を塗って完成させた絵よりも評価が高いのだよ・・・これって自分がつまらない人間のように思えてきてしまうのさね・・・」
「え?どうして?」
「縁美どの・・・某は漫画としての完成度を追い求めているのさね。確かにインディーズ・バンドのように荒削りなデモ楽曲が却ってガレージで音を歪ませて演奏しているような一瞬の臨場感を叩き出せるという稀なケースはあろうけど・・・某はやはり出来上がった完成形としての絵を愛してほしいわけさ」
絵プロ鵜は破格の新人漫画として一部のマニアから認知されている。
ただ、その位置をここ3年ほど脱却できないままでいるんだ。
絵プロ鵜は不意に叫んだ。
「あっ・・・!」
「なに?どうしたの?」
縁美が反応する。
実は絵プロ鵜が少なくとも今程度の漫画の仕事を貰い続けることができてこれからも無事毎日を送れるよう祈っていた縁美はやはり安堵の息を漏らすことになった。
「未完の大樹も、芽を出したばかりの野の花も、本質は同じでござった・・・そこに気付かぬとは!まだまださね、
なんだかうまくまとまったような何の解決にもなっていないような状態だったけれど、僕らはやっぱり未完の小説を書くワナビのごとくに称え合った。
「わずか1000文字ですべてを描こうとする文章屋がいるという!ならば某はたったひとコマで人間の機微を描こうとする漫画家さね!だから描くのをやめられないのさ、某は!」
ダァン!と絵プロ鵜は縁美が淹れたばかりのお代わりの緑茶をこぼす勢いでテーブルを拳で叩いた。
よくわかんないけどかっこいい・・・