211 サラトちゃんと真直ちゃんならどっち?
文字数 1,328文字
サラトちゃんがテレビに出る!
といってもケーブルテレビだけど、地元の実業団バドミントンチームが中国のプロ選手と親善試合をするのだ。
今夜、市の体育館で行われるその試合が中継される。
そして、いわゆる『浪人生活中』のサラトちゃんも実力を認められて特別に参戦するのだ。
本当は観に行きたいんだけど小中高のバドミントン部員や関係者に優先してチケットが用意されていたので叶わなかった。
そして僕と縁美の部屋にはケーブルテレビの契約が無いのでアパートの大家さんの部屋にお邪魔した。
「この子は誰だい?」
「真直 だよ、ひゃひゃひゃ」
同年代のサラトちゃんの存在を教えたら一緒に観たいと言って着いて来た。
観戦させてもらうお礼に縁美がスーパーで買ってきてくれたオードブルとお寿司を並べて、4人で晩御飯を食べ始める。
「お、始まったね」
大家さんは地元が盛り上がるイベントならなんでも応援するんだという。
だから初見のサラトちゃんのこともすぐに気に入った。
「背が高いね。縁美 ちゃんぐらいかい?」
「そうですね・・・」
実は縁美の方が高いけど。
「へえ・・・・・・まあ、わたしといい勝負かな」
真直ちゃんいわく、ルックスの話だという。
僕はスルーして画面に集中する。
驚いたことにサラトちゃんは第一シングルスでいきなりの試合だった。
相手がすごい。
「中国側の女の子も若いね・・・それに背が高くて」
美人。
絶世の、をつけてもいいぐらいの。
「去年の世界ジュニア優勝の子だって!サラトちゃんと同じ15歳!」
縁美が興奮する間もなくラブオール・プレイのコールが。
「えっ!」
サラトちゃんがこの気合いの声を発する時は全力全開だって僕は知ってる。
最初からすべて出さないと試合にすらならないぐらい余裕がないんだろうと僕も思ったし、会場の小中高生もそう思っているみたいだった。
でも。
5分、10分経つと、徐々に変わって行った。
まるで革命当夜のように。
「せっ!」
「くああっ!」
中国の子が、完全にサラトちゃんに振り回されている。
相手は完全に裏を突かれて、フットワークすらバラバラになっている。
一セット目、サラトちゃんが相手に与えたのは10ポイント。
二セット目はなんと3ポイントしか与えていない。
マッチポイント。
「えっ!」
「ああっ!」
サラトちゃんのジャンピングスマッシュが相手のバックハンドに叩きつけられてそのままコートの外までシャトルが滑り出て行った。
「マッチ・ウォン・バイ・サラト!」
サラトちゃんの勝利が告げられると小中の女の子たちは憧れの黄色い声援と拍手を送り、サラトちゃんをライバル視していた高校の女子たちは奥歯を噛み締め、実業団のコーチは目の色を変えている。
「すごい・・・ジュニア王者に勝っちまったよ」
大家さんが感嘆している横で真直ちゃんがすっと立ち上がった。
「わたしもできるよ」
大家さんの部屋の箒 を持っている。
嫌な予感が。
「アターック!」
アタックでなくスマッシュなんだけど、真直ちゃんはサラトちゃんばりのジャンピングスマッシュのフォームを披露した。
ちゃぶ台の真上で。
蛍光灯が割れて部屋が真っ暗になった。
大家さんが僕ら3人に言った。
「・・・・・・出てお行き」
といってもケーブルテレビだけど、地元の実業団バドミントンチームが中国のプロ選手と親善試合をするのだ。
今夜、市の体育館で行われるその試合が中継される。
そして、いわゆる『浪人生活中』のサラトちゃんも実力を認められて特別に参戦するのだ。
本当は観に行きたいんだけど小中高のバドミントン部員や関係者に優先してチケットが用意されていたので叶わなかった。
そして僕と縁美の部屋にはケーブルテレビの契約が無いのでアパートの大家さんの部屋にお邪魔した。
「この子は誰だい?」
「
同年代のサラトちゃんの存在を教えたら一緒に観たいと言って着いて来た。
観戦させてもらうお礼に縁美がスーパーで買ってきてくれたオードブルとお寿司を並べて、4人で晩御飯を食べ始める。
「お、始まったね」
大家さんは地元が盛り上がるイベントならなんでも応援するんだという。
だから初見のサラトちゃんのこともすぐに気に入った。
「背が高いね。
「そうですね・・・」
実は縁美の方が高いけど。
「へえ・・・・・・まあ、わたしといい勝負かな」
真直ちゃんいわく、ルックスの話だという。
僕はスルーして画面に集中する。
驚いたことにサラトちゃんは第一シングルスでいきなりの試合だった。
相手がすごい。
「中国側の女の子も若いね・・・それに背が高くて」
美人。
絶世の、をつけてもいいぐらいの。
「去年の世界ジュニア優勝の子だって!サラトちゃんと同じ15歳!」
縁美が興奮する間もなくラブオール・プレイのコールが。
「えっ!」
サラトちゃんがこの気合いの声を発する時は全力全開だって僕は知ってる。
最初からすべて出さないと試合にすらならないぐらい余裕がないんだろうと僕も思ったし、会場の小中高生もそう思っているみたいだった。
でも。
5分、10分経つと、徐々に変わって行った。
まるで革命当夜のように。
「せっ!」
「くああっ!」
中国の子が、完全にサラトちゃんに振り回されている。
相手は完全に裏を突かれて、フットワークすらバラバラになっている。
一セット目、サラトちゃんが相手に与えたのは10ポイント。
二セット目はなんと3ポイントしか与えていない。
マッチポイント。
「えっ!」
「ああっ!」
サラトちゃんのジャンピングスマッシュが相手のバックハンドに叩きつけられてそのままコートの外までシャトルが滑り出て行った。
「マッチ・ウォン・バイ・サラト!」
サラトちゃんの勝利が告げられると小中の女の子たちは憧れの黄色い声援と拍手を送り、サラトちゃんをライバル視していた高校の女子たちは奥歯を噛み締め、実業団のコーチは目の色を変えている。
「すごい・・・ジュニア王者に勝っちまったよ」
大家さんが感嘆している横で真直ちゃんがすっと立ち上がった。
「わたしもできるよ」
大家さんの部屋の
嫌な予感が。
「アターック!」
アタックでなくスマッシュなんだけど、真直ちゃんはサラトちゃんばりのジャンピングスマッシュのフォームを披露した。
ちゃぶ台の真上で。
蛍光灯が割れて部屋が真っ暗になった。
大家さんが僕ら3人に言った。
「・・・・・・出てお行き」