THIRTY 忙と閑ならどっちがマシ?
文字数 1,333文字
「うっわ、忙しっ!」
「はいはいはいはいごめんなすってごめんなすって~!」
「おーい、焼きそば10玉追加投下~っ!」
三春 ちゃんが醒めた女子高生みたいなコメントをした。
「うわー。内輪ウケって最高に盛り下がりますねー」
僕らの今日の仕事は隣市にある私立大学のキャンパスの清掃。
新入生歓迎FES。三日間に渡る学校を挙げての大騒動の最終日。
僕らは宴がさっさと鎮まって欲しい宵の口に現場に到着した。
「うっわ、忙しっ!」
「はいはいははい学生さん、退いてくださいね~」
「三春ちゃん。洗浄液10リットル追加投下」
僕らも学生たちみたいに自分たちの『お仕事小説』のような内輪ウケで作業した。
「美咲 さぁん。終わんないですねぇ。ゲロい汚物もいっぱい垂れ流しですしぃ~」
「まあそう言わないの三春ちゃん。こういうことで青春を感じてる子たちもいるんだろうから。蓮見 っちあと何時間?」
「5:00までには終わらせてくれって大学側のオーダーですから・・・あと4時間切りましたね」
「ふう・・・なんなのこの広さは」
確かにウチの会社の三人だけで清掃し尽くすには持て余す広大さだ。
一晩じゅう忙殺された。
「あ・・・あの男の子、芝生で寝ちゃってますよぉ」
「しょうがないわね」
美咲さんがモップで突つく。
「ほら!起きなさい。風邪ひいちゃうよ」
「うぅぅぅぅ・・・・俺なんてどうなってもいいんだぁ」
「蓮見っち、手伝って」
熟睡態勢だったけど無理やり生協の建物の横にあるベンチまで引きずった。
「ほら。コーラよ。飲みなさい」
「うぅぅ・・・すんませーん」
「で?キミは?新入生?」
「はぃぃ・・・あーあ」
「なにため息ついてんの」
いつの間にか美咲さんがカウンセラーみたいになってる。
「俺、第一志望の大学落っこちてしょうがなくここに入ったんですよぉ・・・もうなんかどうでもよくなったなぁ」
「ふうん。でもなんかいい大学みたいじゃない。みんな楽しそうで」
「ただ騒いでるだけですよ・・・辞めてもう一回別の大学受けようかな・・・」
「蓮見せんぱぁい」
突然三春ちゃんが美咲さんと学生の間に割り込んだ。
「せんぱいからこの子になんか言ってやってくださいよぉ」
そう言えば三春ちゃんもほんとは大学に行きたかったって言ってたな。
なら。
「受けてみたら?」
「はい?」
「カネがあるなら受けてみたら」
「おカネ・・・ですか?」
「うん。カネ」
「ええと・・・」
学生が答えに詰まってるといつの間にか日が昇り始めてた。
キャンパスの真ん中を貫く大通りを、朝日の逆光に真っ黒な輪郭が歩いてくる。
背が高くて、姿勢のいい真っすぐなシルエット。
「おはようございます」
縁美 だ。
「縁美ちゃん?どうしたの?」
「ふふふ。今日はわたしお休みなんで皆さんに朝ごはんをと思って。始発で来ました」
「わぁぁ・・・もしかして蓮見せんぱいの!?」
「あなたが三春ちゃんね。縁美って言います」
おにぎりとお惣菜とみそ汁の入った保温ジャー。
「あの・・・この人の彼女さんですか?」
「ええ・・・そうですけど」
美咲さんが縁美に学生の状況を話した。
三春ちゃんがまたけしかける。
「縁美さんも何か言ってやってくださいよぉ」
「なら」
縁美が学生に向き直る。
「今の内に退屈を味わっておくのも勉強かも」
「はいはいはいはいごめんなすってごめんなすって~!」
「おーい、焼きそば10玉追加投下~っ!」
「うわー。内輪ウケって最高に盛り下がりますねー」
僕らの今日の仕事は隣市にある私立大学のキャンパスの清掃。
新入生歓迎FES。三日間に渡る学校を挙げての大騒動の最終日。
僕らは宴がさっさと鎮まって欲しい宵の口に現場に到着した。
「うっわ、忙しっ!」
「はいはいははい学生さん、退いてくださいね~」
「三春ちゃん。洗浄液10リットル追加投下」
僕らも学生たちみたいに自分たちの『お仕事小説』のような内輪ウケで作業した。
「
「まあそう言わないの三春ちゃん。こういうことで青春を感じてる子たちもいるんだろうから。
「5:00までには終わらせてくれって大学側のオーダーですから・・・あと4時間切りましたね」
「ふう・・・なんなのこの広さは」
確かにウチの会社の三人だけで清掃し尽くすには持て余す広大さだ。
一晩じゅう忙殺された。
「あ・・・あの男の子、芝生で寝ちゃってますよぉ」
「しょうがないわね」
美咲さんがモップで突つく。
「ほら!起きなさい。風邪ひいちゃうよ」
「うぅぅぅぅ・・・・俺なんてどうなってもいいんだぁ」
「蓮見っち、手伝って」
熟睡態勢だったけど無理やり生協の建物の横にあるベンチまで引きずった。
「ほら。コーラよ。飲みなさい」
「うぅぅ・・・すんませーん」
「で?キミは?新入生?」
「はぃぃ・・・あーあ」
「なにため息ついてんの」
いつの間にか美咲さんがカウンセラーみたいになってる。
「俺、第一志望の大学落っこちてしょうがなくここに入ったんですよぉ・・・もうなんかどうでもよくなったなぁ」
「ふうん。でもなんかいい大学みたいじゃない。みんな楽しそうで」
「ただ騒いでるだけですよ・・・辞めてもう一回別の大学受けようかな・・・」
「蓮見せんぱぁい」
突然三春ちゃんが美咲さんと学生の間に割り込んだ。
「せんぱいからこの子になんか言ってやってくださいよぉ」
そう言えば三春ちゃんもほんとは大学に行きたかったって言ってたな。
なら。
「受けてみたら?」
「はい?」
「カネがあるなら受けてみたら」
「おカネ・・・ですか?」
「うん。カネ」
「ええと・・・」
学生が答えに詰まってるといつの間にか日が昇り始めてた。
キャンパスの真ん中を貫く大通りを、朝日の逆光に真っ黒な輪郭が歩いてくる。
背が高くて、姿勢のいい真っすぐなシルエット。
「おはようございます」
「縁美ちゃん?どうしたの?」
「ふふふ。今日はわたしお休みなんで皆さんに朝ごはんをと思って。始発で来ました」
「わぁぁ・・・もしかして蓮見せんぱいの!?」
「あなたが三春ちゃんね。縁美って言います」
おにぎりとお惣菜とみそ汁の入った保温ジャー。
「あの・・・この人の彼女さんですか?」
「ええ・・・そうですけど」
美咲さんが縁美に学生の状況を話した。
三春ちゃんがまたけしかける。
「縁美さんも何か言ってやってくださいよぉ」
「なら」
縁美が学生に向き直る。
「今の内に退屈を味わっておくのも勉強かも」