228 ダウンとあったか下着ならどっち?
文字数 1,234文字
物理的に温かい、ということは人間にとって極めて大切で。
温かいと実は思考もココロも落ち着いて過ごすことができる。
「お店が寒くて!」
縁美 が切実に言うので仕事が終わった後、駅前で落ち会って、僕らの街に一軒だけある都会地で多店舗展開する衣料品量販店に出かけた。
「あ。蓮見 くん、これ、いいんじゃない?」
縁美が手に取ったのはメンズのダウンのパーカー。確かに値段も手頃だ。
量販店なのでデザインや色は限られるけれども縫製もしっかりしてるし何よりほんとにあったかい。
「縁美のスーパーでの寒さ対策は?」
「あったかい下着だね」
それはロングTシャツ仕様になったインナーなんだけれど、暖かさが今までよりも増し増しなんだと表示されていた。
「あと、タイツも」
スーパーの制服は上は赤のストライプが入ったワイシャツにエプロンで下はスラックス。
だから、あたたかいタイツも必須なのだという。
「ねえ、蓮見くん。どの色がいい?」
「ええ?」
いわゆるファッションとしてのタイツでもないけれど縁美は服を買う時は必ず僕の好みを訊く。
答えざるを得まい。
「モスグリーン」
「えっち」
モスグリーンがどうしてえっちなのか全く理解できなかったけど、なんとなく黒や紺やグレーと言ったスタンダードな色を選ばないことがそういう印象を与えたんだろう。
なら。
「縁美。じゃあ僕もタイツを買いたいけど、何色がいい?」
「うーん・・・・・・・・・」
あ。
ホンキで考えてる顔だ。
「モスグリーンと黒のボーダー」
「ずっとえっちだよ、縁美」
その他にそれぞれ温かいソックスも買った。普段履いてる靴を履いても窮屈にならない薄さで且つ保温性の高い高性能のものだ。
駅からアパートまで歩く間、雪がひらひらと降ってきた。
「寒いね」
「明日の朝はまた積もるね」
今日は帰ればまとめて作ってあったおでんがある。だから寒い道もそれを頼りにして歩く。
うつむき加減になって、除雪で道路脇に寄せられている雪とアスファルトの上に薄く積もり始める雪を見つめる。
「縁美。白線の上は滑りやすいから」
「ふふ。わたしも雪国生活20年のベテランだよ?」
「お互いにね」
「ねえ、蓮見くん」
「?なに」
縁美はコートを着た僕の腕に、やっぱりコートを着た腕を絡めてきた。
「うーん、コートの上じゃ触れ合ってる感じがしないね」
「まあね」
でも、僕は縁美の方から僕に近づいてくれることがいつでも嬉しい。
「蓮見くん。じゃあ、これは?」
縁美が僕の左手の手袋をいきなり、するっ、て外した。
「なになに?」
「わたしも」
そう言って縁美は自分の右の手袋を外して、僕の手を握った。
「どう?生の手ならもっと温かいでしょ?」
「でも、甲に風が当たるよ」
「なら」
強引に僕のコートの左ポケットに、握ったままの二人の手を彼女はねじ込んできた。
狭いポケットの中で、生の肌を剥き出しにしたお互いの手を指を・・・それから滑らかな爪を、まさぐりあう縁美と僕。
「どう?蓮見くん?」
「・・・・・ずっと、えっちだ」
温かいと実は思考もココロも落ち着いて過ごすことができる。
「お店が寒くて!」
「あ。
縁美が手に取ったのはメンズのダウンのパーカー。確かに値段も手頃だ。
量販店なのでデザインや色は限られるけれども縫製もしっかりしてるし何よりほんとにあったかい。
「縁美のスーパーでの寒さ対策は?」
「あったかい下着だね」
それはロングTシャツ仕様になったインナーなんだけれど、暖かさが今までよりも増し増しなんだと表示されていた。
「あと、タイツも」
スーパーの制服は上は赤のストライプが入ったワイシャツにエプロンで下はスラックス。
だから、あたたかいタイツも必須なのだという。
「ねえ、蓮見くん。どの色がいい?」
「ええ?」
いわゆるファッションとしてのタイツでもないけれど縁美は服を買う時は必ず僕の好みを訊く。
答えざるを得まい。
「モスグリーン」
「えっち」
モスグリーンがどうしてえっちなのか全く理解できなかったけど、なんとなく黒や紺やグレーと言ったスタンダードな色を選ばないことがそういう印象を与えたんだろう。
なら。
「縁美。じゃあ僕もタイツを買いたいけど、何色がいい?」
「うーん・・・・・・・・・」
あ。
ホンキで考えてる顔だ。
「モスグリーンと黒のボーダー」
「ずっとえっちだよ、縁美」
その他にそれぞれ温かいソックスも買った。普段履いてる靴を履いても窮屈にならない薄さで且つ保温性の高い高性能のものだ。
駅からアパートまで歩く間、雪がひらひらと降ってきた。
「寒いね」
「明日の朝はまた積もるね」
今日は帰ればまとめて作ってあったおでんがある。だから寒い道もそれを頼りにして歩く。
うつむき加減になって、除雪で道路脇に寄せられている雪とアスファルトの上に薄く積もり始める雪を見つめる。
「縁美。白線の上は滑りやすいから」
「ふふ。わたしも雪国生活20年のベテランだよ?」
「お互いにね」
「ねえ、蓮見くん」
「?なに」
縁美はコートを着た僕の腕に、やっぱりコートを着た腕を絡めてきた。
「うーん、コートの上じゃ触れ合ってる感じがしないね」
「まあね」
でも、僕は縁美の方から僕に近づいてくれることがいつでも嬉しい。
「蓮見くん。じゃあ、これは?」
縁美が僕の左手の手袋をいきなり、するっ、て外した。
「なになに?」
「わたしも」
そう言って縁美は自分の右の手袋を外して、僕の手を握った。
「どう?生の手ならもっと温かいでしょ?」
「でも、甲に風が当たるよ」
「なら」
強引に僕のコートの左ポケットに、握ったままの二人の手を彼女はねじ込んできた。
狭いポケットの中で、生の肌を剥き出しにしたお互いの手を指を・・・それから滑らかな爪を、まさぐりあう縁美と僕。
「どう?蓮見くん?」
「・・・・・ずっと、えっちだ」