FIFTY-FOUR 子猫と子犬どっちを拾う?

文字数 1,202文字

 どうも動物に縁のある日々を最近過ごしている。

 アパートの前の駐車場にダンボール箱が置かれていた。

「子猫が4匹」
「捨て猫、だね」

 日曜の朝、第一発見者としてなんとかしたいと縁美(えんみ)と僕は引き取ってくれそうな先に電話をかけ続けた。

「あ、美咲(みさき)さんですか?子猫って飼えませんよね」
蓮見(はすみ)っち、ごめん。ウチのマンション、ペット禁止なんだ」

「サラトちゃん?子猫って飼える?」
「わ!猫ちゃんですか!?」

 お。実は猫好き?脈あり?

「・・・すみません。ウチは兄夫婦と同居なので少し難しいです」
「そうだよね。ごめんね」

絵プロ鵜(えぷろう)ちゃん?実は子猫が捨てられてて」
「おー、縁美殿。猫を飼う漫画家は大成すると言い申すが・・・駆け出しの(それがし)にはまだそこまでの甲斐性がござらん」
「ごめんね、無理言って」

「あ。店長ですか?突然すみません、子猫って飼えませんか?」
「うーん。実は女房が猫アレルギーでね。そうだ。猫カフェとか訊いてみたら?」

 残念ながら街に一軒あった猫カフェは先月廃業したばかりだ。

「蓮見くん、難しいね・・・」
「うん・・・いっそ、親に訊いてみようか」
「えっ・・・蓮見くんのお父様お母様に・・・?」

 あ。
 縁美を困らせてしまった。

 一緒に暮らし始めるところからそれぞれの親とはこれまでの経緯がある。

 最終手段にもできないな。

 にゃ・・・にゃあ・・・

 ダンボールの子猫たちは外の世界に出ることをしてはいけないと元飼い主に刷り込まれてでもいるのだろうか、ただ身を寄せ合って縁美と僕にだけ鳴きかけてくる。

「何してんのさ、ふたりとも・・・あ、猫?」
「あ。大家さん、おはようございます」

 アパートの前でしゃがみ込む僕たちに一階に住んでる大家のおばさんはあっさり言った。

「ふうん。アタシが面倒みるよ」
「えっ」
「部屋ん中で飼うのは無理だけど軒下に置いといて餌ぐらいは世話してやるよ。その代わり勝手にどっか行っちまってもそれはアタシはどうしようもないけどさ」
「ありがとうございます!」

 灯台下暗し。

 大家さんは里親を当たってくれるとも言い、その間しばらくはアパートの敷地内をノラ猫として4匹の子猫は僕たちと同居することになった。

 ただし、大家さんが決めたルールがある。

「アタシ以外餌やっちゃダメ。触って猫かわいがりしちゃダメ。突然居なくなっても泣いたりしちゃダメ」

「蓮見くん。大家さんって大人だね」
「まあ、お歳だからね」
「また・・・そうじゃなくて、もし里親が見つからなかったらノラ猫として自活できるように、とか、感染症の対策も考えたりとか・・・」
「そうだね。それに、泣くな、ってのがいいね」
「わたし、貰われて行ったら泣くかも」

 ところで、ふたりで考えてみた。

「捨てられてたのが子犬だったらどうだったかな」

 ちなみに、ノラ犬、という選択肢は今の日本ではあり得ない。

 出した答え。

「殺処分されるかもしれないけど、保健所に連れていくしかなかったろうね」
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