155 ココロ固い僕と柔らかいキミとでどうする?
文字数 1,049文字
曲線の集合が直線を作っているような柔らかさを持つんだ。
ココロも。
「
「でも」
「ほら。『そうだね』って試しに言ってごらん?さん・はい!」
「・・・・そうだね」
「うんうん。じゃあ、次行こ!」
ポジティブっていうのとはちょっと違うんだよね。
泣く時は泣くから。
「蓮見くん・・・・・・」
「わ」
どうしようかと思ったよ。
映画館の暗がりとはいえ大勢人がいる前で僕の膝に顔を埋めてきたから。
「えっ・・・・く・・・・すん・・・」
泣き声をかわいく感じてしまった僕はちょっとマズいかな?
でも『すん・・・』なんて甘さと切なさが混ざったみたいな声で泣かれたら・・・僕じゃなくても男ならそうなると思うんだ。
「映画、そんなによかった?」
「うん・・・・・ずっとこのまま泣いていたい・・・・」
きゅーん、てきたよ。
隣の座席から上半身を倒して僕の膝の上に乗っかってる縁美のその髪を撫でてあげたかったけど・・・・周囲の目を気にする僕はカチカチ人間だ。
今朝なんかも僕は終末思想の布教者みたいな気分だったんだけど。
「今日、凄く気を遣うお客さんのクレーム対応に行くんだ」
「蓮見くんひとりで?」
「うん。僕が別のお客さんの紹介で取引始めた先だし、みんな他の現場があるから・・・・」
「気が重いんだね」
「うん・・・・・縁美」
「なに」
「普段仕事のことや生活全般がスムースに回ってる時はみんなのこと好きなのに、困りごとがココロに浮かんだ途端に誰かのせいにしたくなっちゃうんだ」
僕のココロの固さのせいかもだけどね。
「蓮見くん」
「うん」
「溶かしてあげるよ」
「えっ」
いきなり僕の両頬を掌で挟んでさ。
まずはぺちぺちするんだ。
「邪悪なココロよ悪逆のココロよ。蓮見くんから今すぐ・・・・・」
?
「出てけーっ!」
あれ?
「どう?」
「え?あれ?」
「頬を自分で触ってごらん?蓮見くんよぉ」
「・・・・・・ふにゃってしてる・・・・え!?一体僕に何したの!?縁美!?」
「ふふふふふ・・・・ほんとに追い出したんだよ蓮見くんの心を硬直させる悪いモノたちを」
「そんなことが・・・・」
「好きだから」
「えっ」
「蓮見くんが好きだからできるようになったんだよ。一緒に暮らし始める前はこんなことできなかったもん」
「いつからこんな能力が」
「さあ・・・・一緒に出よ?」
その後縁美にどうやったのか何度訊いても『さあ』の繰り返しだった。
「よければ毎日やってあげようか?」
「うん。毎日して欲しい」