SIXTY-TWO 日曜日をやり直すなら動物園?水族館?
文字数 1,213文字
昼から晴れてきた。
日曜の午前、縁美 と僕は別行動だった。
そして縁美はとても辛いことがあった。
「口直しじゃないけど、今からどっか行かない?」
「・・・どこ・・・」
「ええと・・・・・・・動物園、とか?」
「それじゃあ水族館の立つ瀬がないよ、蓮見 くん」
「じゃあ、水族館・・・?」
「両方!」
かわいいわがままだ。
「縁美はここでよかったの?」
「うん。昔遠足に行った懐かしい場所だし」
「縁美が行ったのはいつ?」
「幼稚園の時。蓮見くんは?まさか、小学校?」
「まさか。僕も幼稚園」
つまりそういうクオリティの場所なんだ。
バスで30分で到着した。
「懐かしい・・・」
「うん。変わってないね」
本当に見事なまでに変化が無い。
公園の中の中央に位置する動物園・・・と併設された水族館。
僕と縁美は動物園の入り口の真正面に見える水場に向かった。
「動物園にいきなりペンギンだもんね」
「幼稚園の頃は何の疑問も持たなかったけどね」
来ている子たちの中には幼稚園の子すらいない。
お母さんに抱っこされた乳飲み子か、ベビーカーに乗っかった生後半年ぐらいの首が据わったばかりの子か、お父さんに手を引かれた1~3歳くらいの子か。
「ペンギンいるよー」
「ペンギンペンギンペンギン!」
縁美がにこにこする。
「かわいいね」
「うん」
「ほんとにかわいい」
縁美は子供が好きなんだな。
欲しいのかな・・・・・・
「蓮見くん。孔雀だよ」
「この孔雀、何代目かな」
「意外と幼稚園の時の孔雀のままだったりして」
「まさか」
実はそのまさかだった。
「あなたたちが幼稚園の頃だと15年ぐらい前ですよね。その時の孔雀ですよ」
「そうなんですか」
「あの・・・あなたも?」
「ふふふ。ええ、わたしは勤続20年ですから」
僕らが生まれた時から、ってことだ。
動物園だっていうのにまだペンギンと孔雀しか見てない。
どっちも鳥だ。
ようやく山羊とカピバラの檻の前を通るとフラミンゴが居た。
「鳥ばっかりだ」
「ふふ。蓮見くん、水族館だよ」
指差す縁美の人差し指の直線上に『Aquarium』と手書きされた木板が吊るされている倉庫ひとつ分ぐらいの広さの入り口をくぐると、いきなり、居た。
「オオサンショウウオ!」
笑い合う縁美と僕。
幼稚園は別々だったけど、この地方では語り継がれているこの違和感溢れる『水族館』
オオサンショウウオの水槽の次は、淡水魚。
「フナ。ドジョウ。金魚」
「あっ。そういえば、蓮見くん」
「なに」
「ドジョウって、土壌 ?」
「ううん。泥鰌 」
「あ。そっか」
地味すぎるけど、今こうして大人になってから見るとシュールでユーモアあふれる造りになってて、作り手の明確な意図を感じてしまう。
帰りのバス停までの通り道にやっぱり昔遊んだ川があった。
水には入れないけれども、流れを縁取るコンクリートの川辺まで下りられる。
何か、黒い軍団が泳いでいた。
「鯉、だね」
「うん。鯉だ」
恋だ。
そして、日曜日をやり直せた。
日曜の午前、
そして縁美はとても辛いことがあった。
「口直しじゃないけど、今からどっか行かない?」
「・・・どこ・・・」
「ええと・・・・・・・動物園、とか?」
「それじゃあ水族館の立つ瀬がないよ、
「じゃあ、水族館・・・?」
「両方!」
かわいいわがままだ。
「縁美はここでよかったの?」
「うん。昔遠足に行った懐かしい場所だし」
「縁美が行ったのはいつ?」
「幼稚園の時。蓮見くんは?まさか、小学校?」
「まさか。僕も幼稚園」
つまりそういうクオリティの場所なんだ。
バスで30分で到着した。
「懐かしい・・・」
「うん。変わってないね」
本当に見事なまでに変化が無い。
公園の中の中央に位置する動物園・・・と併設された水族館。
僕と縁美は動物園の入り口の真正面に見える水場に向かった。
「動物園にいきなりペンギンだもんね」
「幼稚園の頃は何の疑問も持たなかったけどね」
来ている子たちの中には幼稚園の子すらいない。
お母さんに抱っこされた乳飲み子か、ベビーカーに乗っかった生後半年ぐらいの首が据わったばかりの子か、お父さんに手を引かれた1~3歳くらいの子か。
「ペンギンいるよー」
「ペンギンペンギンペンギン!」
縁美がにこにこする。
「かわいいね」
「うん」
「ほんとにかわいい」
縁美は子供が好きなんだな。
欲しいのかな・・・・・・
「蓮見くん。孔雀だよ」
「この孔雀、何代目かな」
「意外と幼稚園の時の孔雀のままだったりして」
「まさか」
実はそのまさかだった。
「あなたたちが幼稚園の頃だと15年ぐらい前ですよね。その時の孔雀ですよ」
「そうなんですか」
「あの・・・あなたも?」
「ふふふ。ええ、わたしは勤続20年ですから」
僕らが生まれた時から、ってことだ。
動物園だっていうのにまだペンギンと孔雀しか見てない。
どっちも鳥だ。
ようやく山羊とカピバラの檻の前を通るとフラミンゴが居た。
「鳥ばっかりだ」
「ふふ。蓮見くん、水族館だよ」
指差す縁美の人差し指の直線上に『Aquarium』と手書きされた木板が吊るされている倉庫ひとつ分ぐらいの広さの入り口をくぐると、いきなり、居た。
「オオサンショウウオ!」
笑い合う縁美と僕。
幼稚園は別々だったけど、この地方では語り継がれているこの違和感溢れる『水族館』
オオサンショウウオの水槽の次は、淡水魚。
「フナ。ドジョウ。金魚」
「あっ。そういえば、蓮見くん」
「なに」
「ドジョウって、
「ううん。
「あ。そっか」
地味すぎるけど、今こうして大人になってから見るとシュールでユーモアあふれる造りになってて、作り手の明確な意図を感じてしまう。
帰りのバス停までの通り道にやっぱり昔遊んだ川があった。
水には入れないけれども、流れを縁取るコンクリートの川辺まで下りられる。
何か、黒い軍団が泳いでいた。
「鯉、だね」
「うん。鯉だ」
恋だ。
そして、日曜日をやり直せた。