149 バズる僕とバズらない僕とどっち?
文字数 1,305文字
バズった。
・・・・・・・・・
「縁美 。今日はちょっと大変なことがあって」
「蓮見 くん、どうしたの?」
縁美と丁度仕事帰りの電車で一緒になった。
「営業用のバンがパンクして。現場まで美咲 さん、サラトちゃん、僕の3人で電車で移動したんだ」
「うんうん」
快速の通過電車の待ち合わせで2分ほど停車する間、僕は何気なく反対側のホームを見たんだ。
高校の制服着た女の子が立ってる。
待ち合わせの通過電車が駅の向こうの方にぼやけて視界に入って来た時。
落ちた!
「あ!ダメだ!」
「蓮見っち!」
貧血だろうか、ほんとうに、ふっ、って感じでその子は持ってたスマホを落っことした瞬間に自分の体も倒れ込んで、線路の二本線の間に肩から落ちたんだ。
僕はモップを持ったままで停車中の電車から飛び出してホームの階段を駆け上がった。
ホームには何人か人がいるけどもう迫って来てる電車のスピードに躊躇してる。
「危ない!早く上がって!」
スーツ姿の女性が声をかけたら女の子は意識を戻したけど転落のダメージからか上半身を起こすのがやっとみたいだ。
僕は女の子が落ちたホームの階段を今度はつんのめりそうになりながら駆け下りて転落現場に滑り込んだ。
「つかんで!」
女の子の前にモップを差し出すけど完全にパニックになってる。迫ってくる電車の正面を凝視して悲鳴を上げ続けるだけだ。
後先考えずに僕は飛び降りた。
「蓮見せんぱい!」
サラトちゃんがもうそこまでダッシュしてきていた。
「サラトちゃん!モップを引っ張って!」
僕は女の子の腰に右腕を回して力一杯締め付けた。
左手にモップの刷毛の方を握り柄をサラトちゃんに差し出す。
「蓮見っち!サラトちゃん!」
美咲さんも駆け込んで来た。
二人して柄を握り力を込める。
サラトちゃんが、吠えた。
「みなさーーん!お力をーーっ!」
躊躇していたひとたちが具体的解決法を提示された途端に大勢集まってきた。
全員で柄の左右に交互に並び、綱引きの要領で引っ張る。
「くっ・・・うぅぅう・・・」
「蓮見せんぱい!」
僕の左手の握力をサラトちゃんが励ましてくれた。
激烈なるエールで。
「せんぱい!根性ですっ!!」
サラトちゃんの声がまるで合図だったみたいに、ずぼっ、と僕らはホームに引き上げられた。
キキュキキュキキュキキュ・・・
ブレーキをかけた電車は、僕らが居た位置を5mほど通過して停まった。
「蓮見 っち!すごいよ!」
「美咲さん、ありがとうございます」
「蓮見せんぱい!素敵です!」
「サラトちゃん、ありがとう」
「あなた蓮見さんっていうの?ヒーローだよ!」
「いえそんな。皆さんのお陰です」
「蓮見さん」
「蓮見さん」
「蓮見さん」
・・・・・・・・・・
「蓮見くん、すごい!でも・・・」
人目を気にせず、縁美が、とっ、て僕の額におでこをくっつける。
目が潤んでいる。
「ヒーローじゃなくていいから、危ないこと、しないで?」
「うん・・・・実際助けようとして亡くなった方もいるしね・・・」
「ニュースに出てるかな?」
縁美がスマホをスクロールする。
それからびっくりした顔で言った。
「蓮見くんがハッシュタグになってる!」
#人命救助
#清掃スタッフ
#蓮見さん
・・・・・・・・・
「
「
縁美と丁度仕事帰りの電車で一緒になった。
「営業用のバンがパンクして。現場まで
「うんうん」
快速の通過電車の待ち合わせで2分ほど停車する間、僕は何気なく反対側のホームを見たんだ。
高校の制服着た女の子が立ってる。
待ち合わせの通過電車が駅の向こうの方にぼやけて視界に入って来た時。
落ちた!
「あ!ダメだ!」
「蓮見っち!」
貧血だろうか、ほんとうに、ふっ、って感じでその子は持ってたスマホを落っことした瞬間に自分の体も倒れ込んで、線路の二本線の間に肩から落ちたんだ。
僕はモップを持ったままで停車中の電車から飛び出してホームの階段を駆け上がった。
ホームには何人か人がいるけどもう迫って来てる電車のスピードに躊躇してる。
「危ない!早く上がって!」
スーツ姿の女性が声をかけたら女の子は意識を戻したけど転落のダメージからか上半身を起こすのがやっとみたいだ。
僕は女の子が落ちたホームの階段を今度はつんのめりそうになりながら駆け下りて転落現場に滑り込んだ。
「つかんで!」
女の子の前にモップを差し出すけど完全にパニックになってる。迫ってくる電車の正面を凝視して悲鳴を上げ続けるだけだ。
後先考えずに僕は飛び降りた。
「蓮見せんぱい!」
サラトちゃんがもうそこまでダッシュしてきていた。
「サラトちゃん!モップを引っ張って!」
僕は女の子の腰に右腕を回して力一杯締め付けた。
左手にモップの刷毛の方を握り柄をサラトちゃんに差し出す。
「蓮見っち!サラトちゃん!」
美咲さんも駆け込んで来た。
二人して柄を握り力を込める。
サラトちゃんが、吠えた。
「みなさーーん!お力をーーっ!」
躊躇していたひとたちが具体的解決法を提示された途端に大勢集まってきた。
全員で柄の左右に交互に並び、綱引きの要領で引っ張る。
「くっ・・・うぅぅう・・・」
「蓮見せんぱい!」
僕の左手の握力をサラトちゃんが励ましてくれた。
激烈なるエールで。
「せんぱい!根性ですっ!!」
サラトちゃんの声がまるで合図だったみたいに、ずぼっ、と僕らはホームに引き上げられた。
キキュキキュキキュキキュ・・・
ブレーキをかけた電車は、僕らが居た位置を5mほど通過して停まった。
「
「美咲さん、ありがとうございます」
「蓮見せんぱい!素敵です!」
「サラトちゃん、ありがとう」
「あなた蓮見さんっていうの?ヒーローだよ!」
「いえそんな。皆さんのお陰です」
「蓮見さん」
「蓮見さん」
「蓮見さん」
・・・・・・・・・・
「蓮見くん、すごい!でも・・・」
人目を気にせず、縁美が、とっ、て僕の額におでこをくっつける。
目が潤んでいる。
「ヒーローじゃなくていいから、危ないこと、しないで?」
「うん・・・・実際助けようとして亡くなった方もいるしね・・・」
「ニュースに出てるかな?」
縁美がスマホをスクロールする。
それからびっくりした顔で言った。
「蓮見くんがハッシュタグになってる!」
#人命救助
#清掃スタッフ
#蓮見さん