141 普通養子縁組と特別養子縁組ならどっち?

文字数 1,064文字

 僕は社長に相談した。

「ウチの会社の顧問弁護士の先生を紹介していただけませんか」
蓮見(はすみ)くん。ウチは顧問弁護士はいなくて、業務上の法律相談はまずは司法書士の先生にしてるよ」

 それが、たなべ司法書士事務所のたなべご夫妻だった。

「こんにちは。蓮見と申します」
「あ、いらっしゃいませ。社長さんから電話頂いてました。お知りになりたいのは『養子縁組』についてですね?」
「はい」

 応対してくださったのは奥さんの方だった。

 会社の終業時刻になるとと同時にやってきたたなべ司法書士事務所は夜に相談に来る勤め人に対しても応対してくれる。

 養子縁組についてある程度はWEBで調べてるけど僕が訊いてみたいのは具体的な事例だ。

 ・トラブルを避けるためには。
 ・収入等による制約はあるのか
 ・養子も養親も幸せになれるような手続きは・・・etc・・・・・

「蓮見さんはご結婚は」
「まだしてません」
「ご結婚のご予定は?」
「あります。彼女と一緒に暮らしています」
「じゃあもうかなり具体的なご予定なんですね」
「いいえ・・・・ものすごく変な話だと思われるかもしれませんけど、僕と彼女が結婚するかどうかは養子縁組の話とセットなんです」
「差し支えなければご事情を」
「はい」

 奥さんの方のたなべ先生は多分30代前半ぐらいじゃないかな。
 生理的不快感を与えるかもしれない僕の『生殖機能』の状態について止むを得ず話した。

 たなべ先生はごく自然に聴いてくださった。

「それはお辛いですね。不妊のご夫婦からの相談は増えて来ていますよ」
「僕らはやっぱり子供が欲しいんです。だから子供を持てるかどうかを結婚を決断する上での条件としてるんです」
「わかりました。では少し質問させてください。『普通養子縁組』と『特別養子縁組』の違いはご存知ですか?」
「はい。現在の親との親子関係を継続したままにするか断ち切るかですよね」
「そうです。そして特別養子縁組の場合は夫婦セットでないと養親にはなれず片方が25歳以上でなくてはなりません。蓮見さんのお歳は?」
「僕も彼女も20歳です」
「そうなると現時点では『普通養子縁組』が選択肢となりますね。ところで養子縁組にこだわりますか?里親制度ではダメなんですか?」

 里親制度はつまり法律上の親子となるのでなく、養育の『委託』という扱いになる。

「僕はやっぱり『親子関係』を築きたいんです」
「わかりました。わたしもいっぺんにはアドバイスできないのでまた日を置いてお話ししましょう」
「ありがとうございます」
「蓮見さん」
「はい」
「あなたと彼女さん、素敵なおふたりですね」
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