227 ショウキュウとショウダンならどっち?
文字数 967文字
アパートに帰って来るなり縁美が言った。
「蓮見 くん、ショウキュウしたよ!」
「?」
昇給だった。
「へえ!おめでとう、縁美 !」
「ふふ。年次に応じた定期的な昇給だけどね」
「それでもすごい。それって偉くなったってこと?」
「偉くはないですが給料が上がります。微量ですが」
ん?
「じゃ、じゃあお祝いしないとね」
「蓮見くん、これ!ウチのスーパーにも入れました!」
日本酒だ。
あ、そうか。
「これ、迫田 さんの奥さんの・・・」
「そう!奥さまのお里の酒蔵で作った大吟醸。蓮見くん、一献いかがですか?」
さっきから敬語で話す縁美はそれだけ昇給が嬉しかったんだろう。
やっぱり勤め人だからね。
爽やかな果実の香りが匂い立つようなグラスから気化するアルコールで縁美の白い肌が火照ったようなピンク色に変わっていく。
いいなあ、とほっこりしていると、現代音楽の不協和音が大音量で流れた。
「蓮見くん、な、なに、それ?」
「ああ・・・・真直 ちゃんのメールの着信音だよ」
「なんでホラー映画みたいな音楽なの?」
縁美・・・わかってよ・・・・
「ええと。ん?」
真直:昇段したよ!
「昇段・・・?」
縁美が『昇給したよ!』と言ったばかりのタイミングで字面と意味は違うけど『昇段したよ!』とカウンターのようなメールを送りつけてくる真直ちゃんに底知れぬ恐ろしさを感じるけど・・・
「なんだろ?蓮見くん、真直ちゃんって柔道とか空手とかやってるの?」
「いや・・・・そんなの聞いたことないけど・・・」
でも武道というか格闘系ならあるような気がした。真直ちゃんは常に誰かから恨みを買っているから護身のためにかな?
「蓮見くん、それ違うよ。『攻撃』のためにだよ、きっと」
「縁美・・・・エスパー?」
「え。ううん、蓮見くんの思考パターンを考えてみただけ」
縁美もちょっと底知れない。
ただ真直ちゃんはあっさりと正解を教えてくれた。
真直:幼稚園の頃から書道を習ってて。ついに六段になったよ!
「六段って・・・・」
「多分相当凄いと思うよ」
本当に達筆だった。
真直ちゃんは書初めに書いた半紙を写真に撮ってメールしてくれた。
『臥薪嘗胆』
『魔王礼賛』
『悪鬼神乱心』
『水耕栽培』
『究極奥義』
「今年一年、何するつもりなんだ・・・」
真直:これどう?蓮見さんと縁美さんに
最後のメールが送られてきた。
『夫婦円満』
許そう。
「
「?」
昇給だった。
「へえ!おめでとう、
「ふふ。年次に応じた定期的な昇給だけどね」
「それでもすごい。それって偉くなったってこと?」
「偉くはないですが給料が上がります。微量ですが」
ん?
「じゃ、じゃあお祝いしないとね」
「蓮見くん、これ!ウチのスーパーにも入れました!」
日本酒だ。
あ、そうか。
「これ、
「そう!奥さまのお里の酒蔵で作った大吟醸。蓮見くん、一献いかがですか?」
さっきから敬語で話す縁美はそれだけ昇給が嬉しかったんだろう。
やっぱり勤め人だからね。
爽やかな果実の香りが匂い立つようなグラスから気化するアルコールで縁美の白い肌が火照ったようなピンク色に変わっていく。
いいなあ、とほっこりしていると、現代音楽の不協和音が大音量で流れた。
「蓮見くん、な、なに、それ?」
「ああ・・・・
「なんでホラー映画みたいな音楽なの?」
縁美・・・わかってよ・・・・
「ええと。ん?」
真直:昇段したよ!
「昇段・・・?」
縁美が『昇給したよ!』と言ったばかりのタイミングで字面と意味は違うけど『昇段したよ!』とカウンターのようなメールを送りつけてくる真直ちゃんに底知れぬ恐ろしさを感じるけど・・・
「なんだろ?蓮見くん、真直ちゃんって柔道とか空手とかやってるの?」
「いや・・・・そんなの聞いたことないけど・・・」
でも武道というか格闘系ならあるような気がした。真直ちゃんは常に誰かから恨みを買っているから護身のためにかな?
「蓮見くん、それ違うよ。『攻撃』のためにだよ、きっと」
「縁美・・・・エスパー?」
「え。ううん、蓮見くんの思考パターンを考えてみただけ」
縁美もちょっと底知れない。
ただ真直ちゃんはあっさりと正解を教えてくれた。
真直:幼稚園の頃から書道を習ってて。ついに六段になったよ!
「六段って・・・・」
「多分相当凄いと思うよ」
本当に達筆だった。
真直ちゃんは書初めに書いた半紙を写真に撮ってメールしてくれた。
『臥薪嘗胆』
『魔王礼賛』
『悪鬼神乱心』
『水耕栽培』
『究極奥義』
「今年一年、何するつもりなんだ・・・」
真直:これどう?蓮見さんと縁美さんに
最後のメールが送られてきた。
『夫婦円満』
許そう。