210 雪除けと融雪ならどっち?
文字数 1,153文字
僕らの街では雪対策に余念がない。
「蓮見 さん、アルバイト行こうか」
「はい、迫田 さん」
僕と迫田さんの今日の仕事は神社の防雪工事。
工事なんて大袈裟な表現をしたけど、神社の屋根から落ちてくる雪が参拝する人の頭の上にかからないように、木と藁葺の三角屋根みたいなごく短い『トンネル』を社殿の前に設置するんだ。
「いやあ、迫田さん、今年もありがとうね。ほんと手間賃程度でやって頂いて」
「いいんですよ、宮司さん。いつもお世話になってるのはこちらの方ですから」
冬場、僕ら大工は雪が降ったら仕事にならないんだけど、本降りの前のこういう仕事や、いよいよ屋根に雪が積もったら屋根に登っての雪下ろしを依頼される。
「蓮見さんよ、俺が子供の頃は家に人手がいっぱい居て、若いモンが屋根に登ってスコップで雪を下ろしたもんだが・・・今は高齢者の家ばっかりになったもんなあ」
「迫田さん、まだまだ大工の技術の無い僕でも雪下ろしならばお役に立てます」
「ありがとう。この冬は豪雪らしいから何度か出動しなきゃならんだろうね」
いくつかの神社を回って雪除けを設置して帰ってくると、迫田さんの作業場の前にも雪が積もっていて、道路の融雪装置から水が勢いよく出て融かしていた。
そこへ、真直 ちゃんが高校から帰って来た。
「よっ!はっ!たっ!」
「・・・・・なにしてるの?」
「あー。蓮見さーん。この『融雪ビーム』を避けてるの!とうっ!」
勢いよく出る融雪の水をビームって。
まるで小学生。
「真直。ご近所に恥ずかしいからやめな」
「おじいちゃん、別に恥ずかしくないよ」
「俺が恥ずかしいんだよ!」
こんな真直ちゃんだけど、今日はよい仕事をした。
「はい、おじいちゃんから頼まれてた焼き芋!」
「おお。ありがとな・・・・・・どれどれ、冬になるとこの店の焼き芋が楽しみでね。ほれ、蓮見さんも」
「これ・・・・普通の焼き芋と少し違いますね・・・」
「ああそうさ。焼く前に芋を食べやすい大きさに切ってからじっくりと焼いてるからね」
食べやすいだけでなくて甘みも歯触りもしっかりしていて・・・
「美味しいです」
「そうだ蓮見さん。縁美 さんにも持って行ってあげな」
「迫田さん、いいんですか?」
「ああいいよ」
その横から真直ちゃんが言った。
「ひと切れ百円」
「真直!」
「ひゃひゃひゃ」
真直ちゃんが山ほど買ってきてたので僕は紙袋にひとかかえお土産持ってアパートに帰った。
「焼き芋!」
「縁美は好きだったっけ」
「好き!焼き芋好き!ついでに蓮見くんも好き!」
あ・・・・・・
なんか、今のすごくかわいかった・・・・
雪の降る夜に、焼き芋を食べながらお茶を飲む僕と縁美。
「外がすごい静か」
「まだ雪が降ってるからね」
「蓮見くん。今日は温めて」
「えっ」
「お布団の中で、温めて。わたしの雪みたいに冷たい脚を」
「
「はい、
僕と迫田さんの今日の仕事は神社の防雪工事。
工事なんて大袈裟な表現をしたけど、神社の屋根から落ちてくる雪が参拝する人の頭の上にかからないように、木と藁葺の三角屋根みたいなごく短い『トンネル』を社殿の前に設置するんだ。
「いやあ、迫田さん、今年もありがとうね。ほんと手間賃程度でやって頂いて」
「いいんですよ、宮司さん。いつもお世話になってるのはこちらの方ですから」
冬場、僕ら大工は雪が降ったら仕事にならないんだけど、本降りの前のこういう仕事や、いよいよ屋根に雪が積もったら屋根に登っての雪下ろしを依頼される。
「蓮見さんよ、俺が子供の頃は家に人手がいっぱい居て、若いモンが屋根に登ってスコップで雪を下ろしたもんだが・・・今は高齢者の家ばっかりになったもんなあ」
「迫田さん、まだまだ大工の技術の無い僕でも雪下ろしならばお役に立てます」
「ありがとう。この冬は豪雪らしいから何度か出動しなきゃならんだろうね」
いくつかの神社を回って雪除けを設置して帰ってくると、迫田さんの作業場の前にも雪が積もっていて、道路の融雪装置から水が勢いよく出て融かしていた。
そこへ、
「よっ!はっ!たっ!」
「・・・・・なにしてるの?」
「あー。蓮見さーん。この『融雪ビーム』を避けてるの!とうっ!」
勢いよく出る融雪の水をビームって。
まるで小学生。
「真直。ご近所に恥ずかしいからやめな」
「おじいちゃん、別に恥ずかしくないよ」
「俺が恥ずかしいんだよ!」
こんな真直ちゃんだけど、今日はよい仕事をした。
「はい、おじいちゃんから頼まれてた焼き芋!」
「おお。ありがとな・・・・・・どれどれ、冬になるとこの店の焼き芋が楽しみでね。ほれ、蓮見さんも」
「これ・・・・普通の焼き芋と少し違いますね・・・」
「ああそうさ。焼く前に芋を食べやすい大きさに切ってからじっくりと焼いてるからね」
食べやすいだけでなくて甘みも歯触りもしっかりしていて・・・
「美味しいです」
「そうだ蓮見さん。
「迫田さん、いいんですか?」
「ああいいよ」
その横から真直ちゃんが言った。
「ひと切れ百円」
「真直!」
「ひゃひゃひゃ」
真直ちゃんが山ほど買ってきてたので僕は紙袋にひとかかえお土産持ってアパートに帰った。
「焼き芋!」
「縁美は好きだったっけ」
「好き!焼き芋好き!ついでに蓮見くんも好き!」
あ・・・・・・
なんか、今のすごくかわいかった・・・・
雪の降る夜に、焼き芋を食べながらお茶を飲む僕と縁美。
「外がすごい静か」
「まだ雪が降ってるからね」
「蓮見くん。今日は温めて」
「えっ」
「お布団の中で、温めて。わたしの雪みたいに冷たい脚を」