FIFTY-SEVEN 剥き出しの闘志と秘めた闘志、キミはどっちさ!
文字数 1,217文字
「蓮見 くんって内に秘めるタイプだよね」
「縁美 。それって褒めてるの?」
「もちろん」
僕も言ってみた。
「縁美も内に秘めるタイプだよね」
「わたしはヘタレだから」
そんなことない。
僕は身を持って知ってる。
縁美はホンキで怒らせてはいけない人間の一人だ。
「サラトちゃんは試合の時は闘志剥き出しだよね」
「抑えきれないんです」
「でも普段はとても静かで冷静なイメージだけどね」
「マグマを溜めておくんです」
なるほど。
よく分かる。
「蓮見せんぱい。恋愛だって同じですよ」
「えっ」
「普段は耐えて耐えて忍んで忍んで・・・最後には意中の人と思いを遂げるんです」
現時点で十分マグマが噴出してる。
「社長、すみませんねえ。人出が足りないからって」
「いいよ、美咲 ちゃん。俺、掃除が好きでこの仕事始めたんだから」
今日は社長自ら現場に出てビルクリーニングの作業に当たってくれる。
新規のお客さんで今後も受注を取りたいから、って思いも一応はあるみたいだ。
「社長、さっき掃除が好きでこの仕事を始めたとおっしゃいましたね」
「ああ。サラトちゃん、俺ほんとに掃除が好きなんだよ。小中高と学校の掃除の時間は一度もサボったことないし、なんならトイレ掃除とか率先してやってたからね」
「そうなんですか」
「社長。相変わらず惚れ惚れしますね、その技術」
美咲さんがつまようじを使って顧客事務所のトイレの便器を磨く社長の手際を見て感嘆すると社長は少し寂しそうにこう言った。
「そんなこと言ってくれるのはウチの社員さんたちだけだね」
「そんなことないですよ」
「いやあ、蓮見くんよ。そんなことあるんだよ。俺が学校時代に掃除を真面目にやってるとみんなして俺を変なヤツ扱いしてなあ・・・」
「内に秘めてたんですね」
「サラトちゃん。内に秘めるも何も、俺はほんとに掃除が好きなだけなんだ」
正直、僕も少し理解し難い部分がある。
僕だってお釈迦様がある不器用な弟子にひたすら掃き清めよと掃除を修行として与えて遂にはその弟子が悟りに至った、っていう話も知ってる。
でも、社長は心底純粋すぎる、もっと言うと・・・
「いやあ、俺、バカだから」
作業を終えて社長が僕らにそう言って笑っていると今日の顧客企業の社長がこう持ち掛けてきた。
「あのさ、これ、ウチの会社で要らなくなった溶液なんだけどさ。捨てといてくれない?」
「あ。はい。ええと廃棄ルートをお教えいただけたら処理しておきます」
美咲さんが応対すると相手企業の社長は信じられないことを言った。
「市の西に山があんでしょ?あそこに捨てときゃ誰も分かんないから」
不法投棄だ。
「お断りしますよ」
ウチの社長が間髪入れずに言った。
「なんだよ。固いこと言わずに。アンタの会社だってラクじゃないだろ?今後も仕事やるからさ」
「要らないよ!今日の料金も要らないよ!もうオタクの仕事は受けないからな!」
社長がものすごい剣幕で相手を怒鳴りつけて、それから僕らにこう言った。
「帰るよ」
「
「もちろん」
僕も言ってみた。
「縁美も内に秘めるタイプだよね」
「わたしはヘタレだから」
そんなことない。
僕は身を持って知ってる。
縁美はホンキで怒らせてはいけない人間の一人だ。
「サラトちゃんは試合の時は闘志剥き出しだよね」
「抑えきれないんです」
「でも普段はとても静かで冷静なイメージだけどね」
「マグマを溜めておくんです」
なるほど。
よく分かる。
「蓮見せんぱい。恋愛だって同じですよ」
「えっ」
「普段は耐えて耐えて忍んで忍んで・・・最後には意中の人と思いを遂げるんです」
現時点で十分マグマが噴出してる。
「社長、すみませんねえ。人出が足りないからって」
「いいよ、
今日は社長自ら現場に出てビルクリーニングの作業に当たってくれる。
新規のお客さんで今後も受注を取りたいから、って思いも一応はあるみたいだ。
「社長、さっき掃除が好きでこの仕事を始めたとおっしゃいましたね」
「ああ。サラトちゃん、俺ほんとに掃除が好きなんだよ。小中高と学校の掃除の時間は一度もサボったことないし、なんならトイレ掃除とか率先してやってたからね」
「そうなんですか」
「社長。相変わらず惚れ惚れしますね、その技術」
美咲さんがつまようじを使って顧客事務所のトイレの便器を磨く社長の手際を見て感嘆すると社長は少し寂しそうにこう言った。
「そんなこと言ってくれるのはウチの社員さんたちだけだね」
「そんなことないですよ」
「いやあ、蓮見くんよ。そんなことあるんだよ。俺が学校時代に掃除を真面目にやってるとみんなして俺を変なヤツ扱いしてなあ・・・」
「内に秘めてたんですね」
「サラトちゃん。内に秘めるも何も、俺はほんとに掃除が好きなだけなんだ」
正直、僕も少し理解し難い部分がある。
僕だってお釈迦様がある不器用な弟子にひたすら掃き清めよと掃除を修行として与えて遂にはその弟子が悟りに至った、っていう話も知ってる。
でも、社長は心底純粋すぎる、もっと言うと・・・
「いやあ、俺、バカだから」
作業を終えて社長が僕らにそう言って笑っていると今日の顧客企業の社長がこう持ち掛けてきた。
「あのさ、これ、ウチの会社で要らなくなった溶液なんだけどさ。捨てといてくれない?」
「あ。はい。ええと廃棄ルートをお教えいただけたら処理しておきます」
美咲さんが応対すると相手企業の社長は信じられないことを言った。
「市の西に山があんでしょ?あそこに捨てときゃ誰も分かんないから」
不法投棄だ。
「お断りしますよ」
ウチの社長が間髪入れずに言った。
「なんだよ。固いこと言わずに。アンタの会社だってラクじゃないだろ?今後も仕事やるからさ」
「要らないよ!今日の料金も要らないよ!もうオタクの仕事は受けないからな!」
社長がものすごい剣幕で相手を怒鳴りつけて、それから僕らにこう言った。
「帰るよ」