ONE HUNDRED SEVEN フィクションとノンフィクションならどっち?
文字数 1,062文字
「ヒーックション!」
「また・・・」
僕がフィクションとノンフィクションの境界線について
「まあ僕はクリエイターでもなんでもないから」
「
最近昼休みに絵プロ鵜から呼び出される頻度が増えてきてて彼女の不振を心配したのだけど相変わらず連載の読者投票では上位をキープしてるし単行本の売れ行きも順調だという。
「
「欠陥?」
「某が今まで参考にしてきた資料は二次資料が大半」
「二次資料ってなに?」
「漫画・小説・映画・音楽・・・つまりは創作品」
「うーん。創作はそれ自体が鮮やかな感動を持ってる訳だから学術的な二次資料とは意味が違うと思うけどな」
「某もそれは分かっている。でもたとえばこの店」
ここ・・・?
「名曲喫茶など某は漫画の中でしか観たことがなかったがこうして蓮見どのとふたりで入って初めて、と」
「と?」
「と、と」
「なに」
「とととととととと、ときめいておるのさね」
「誰が」
「そ、某が」
「誰に」
「おそらくは、蓮見どのに」
僕は席を立った。
伝票を掴む。
「ま、待つのだ蓮見どの!」
「訳をきちんと話しなよ」
座り直した。
「そ、某は恋愛漫画を書いてはおるが・・・恋愛感情そのものが分からぬのだ」
「・・・そうだったの?」
「蓮見どのと縁美どのを観察して『好き、蓮見くん、チュッ』『僕もだよ、縁美、チュッ・チュッ』というシーンを描いたところで!」
「や、やめろ!」
クラシックのアナログレコードが流れる中、妄想で他の客に迷惑行為をする彼女を制した。
「も、申し訳ござらぬ・・・つい」
「つまり感情移入できないと?」
「移入もなにも『好き』という言葉の概念が分からぬのだ」
「そんなことないだろう。初恋とかないの?」
「某、福砂屋のカステラはこよなく愛しておるが」
「違う。人間は?」
「ノンフィクションでそういう存在はおらぬし、フィクションで愛情の対象を描こうとしても食べ物しか浮かんで来ぬのだ」
「・・・・・・・ならば、食べ物をモチーフにしたキャラばかり出てくるすごく有名な作品があるじゃない」
「そ、それは余りにも偉大な作品で某などがまさか!」
なにを言ってるんだ。
「か、彼に愛を語ると全国の男子女子からバッシングのツイートが!」
「・・・・・・ならば自分で食べ物をモチーフにしたキャラを描けばいいだろ」
「た、たとえば?」
ええ?
ランチメニューはカレーか・・・
ああ・・・
「福神王子とか」
「蓮見どのに相談した某が間違っておった」
「帰るよ」