FORTY-EIGHT 才能と努力とどっちも?

文字数 928文字

 日曜の夜には憩いの時間を過ごす僕と縁美(えんみ)だけど彼女がこうつぶやいた。

「わたしは・・・ずっとこのままなのかな」

 丁寧に訊かないとな、って僕は思った。
 珍しく縁美は抱擁を求めてきた。
 お互いパジャマで、縁美の方から僕の布団に入ってきた。
 そのまま背中をとんとんしてあげる。

「もしかして、サラトちゃんのこと?」
「うん」
「将来の展望を持ってる、って感じではあるけど」
蓮見(はすみ)くん。わたしはこの5年間の蓮見くんと一緒にしてきた色んな選択は必然だったって思ってるよ」
「僕もだよ」
「でも、サラトちゃんの試合を観て、なんだか焦ってしまって」

 とても切ない告白をしてくれた。

「泣けてきてしまうの」

 表情を見せないように僕の胸に顔を埋める縁美。

 弱い人間だろうか、僕たちは。

 愚痴なんだろうか、これは。

 傷の舐め合いをしてる、って15歳の時にもさんざん周囲から言われた。

「ちょっとごめん」

 僕は縁美の髪をそっとぽんぽんしながら布団から出てテーブルの上の額を持って来てまた布団に入った。

 今度はふたりでうつ伏せになってその写真を観る。
 お互い髪をこつん、とぶつけるようにして。

「最初のアパート。みんないいひとたちだったよね」
「そうだね・・・あんまりにぎやかすぎて蓮見くんはちょっと嫌がってたけどね」
「お節介な和田のおばさん、どうしてるかな」
「きっと、今でも元気にしておられるわ」

 15歳で初めて暮らしたアパートから次のアパートへ引っ越す時、建物の前で住人全員で記念撮影してくれた。

「ねえ、縁美」
「なに?蓮見くん」
「才能ってなんだと思う?」
「う・・・んとね・・・今、ちょっと分からなくなってる」
「決まってないことが、才能だよね、きっと」
「あっ」

 縁美も気づいたみたいだ。

 15歳の時、不安しかなかった。
 でも、5年経って、今こうしてやっぱりふたりで居る。

 25歳の時はどうだろう。

「じゃあ、蓮見くん。努力ってなんだと思う?」
「ええとね。多分、こうじゃないかって思うことを、ふたりで言ってみない?」
「うん。いいよ」

 せーの。

「ふたりでいること」

 僕らは答えを確認できたのでぐっすりと眠った。                                               
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