ONE HUNDRED TWO ネタ切れとネタバレ怖いのどっち?
文字数 1,217文字
平日の夕方。
場所は僕らの街に一軒だけあるメイドカフェ。
「なんでここに」
「
とにかく刺激の多い場所でアイディアを絞り出したかったということと、僕と縁美という同棲カップルをメイドカフェに来させることによってネタになりそうなシチュエーションを作りたかったのだという。
「うーむむむ。早く縁美どのが来ないだろうか・・・はっ!」
「ど、どうしたの絵プロ鵜?」
「某と蓮見どのがデートというシチュでもネタになり得る」
血迷っているようだ。
僕は店員さんを呼んだ。
「すみません、注文を」
「ただいま参りますぅ、ダンナさま!お嬢さま!」
縁美、早く来てくれ。
「お待たせ。遅くなってごめんね」
「縁美、待ってたよ」
「縁美どの、もう少し遅かったら某と蓮見どのが男女の仲になるところだったのだ」
「また・・・」
縁美がまたいい反応をする。
「蓮見くん。メイドカフェ、当然初めてだよね」
「も、もちろんだよ」
「ほんとうだろうか」
「絵プロ鵜!」
絵プロ鵜はメイドさんがテーブルにやってくるごとにメイド服のデザインのチェックだけでなくスカートの丈やフリルのシェイプ、プリーツの数など微に入り細に入り顕微鏡を覗き込むように観察し、かつメモをとっていた。
「うむ。次の回のプロットは大体頭の中で完成したでござる」
「あの」
隣のテーブルに居た若いスーツ姿の男性ふたりから声を掛けられた。
「絵プロ鵜先生ですよね」
突然うろたえる絵プロ鵜。
「そ、某は
せんせい
ではござらぬ」縁美が言った。
「絵プロ鵜ちゃん、ファンサービスしないと」
絵プロ鵜はかなり動揺しながら男性ふたりに対応した。
「取材ですか?」
「は、はい。そうです・・・」
「と、いうことは次回はメイドカフェが舞台なんですね」
「そ、それもあるがこのふたりをモデルにしたエピソードを書くつもりさね」
「先生、今おっしゃった内容、ツイートしてもいいですか?」
「ええと・・・それは・・・」
僕は困ってる絵プロ鵜の代わりに言った。
「彼女が一生懸命知恵を絞ったアイディアですのでネタバレはやめて上げてください」
代わりに絵プロ鵜が即興でイラストを描いて、それを写真に撮ってツイートしてもらうことになった。
そのイラストは・・・・・・
「え、これ、わたし!?」
「確かに・・・似てる」
絵プロ鵜は僕と縁美がひとつのグラスのトロピカルジュースにストローを差して飲んでいるベタなイラストを描いた。
「ふたりは某の大切な友達で・・・このイラストをツイートして、『いいね』をいっぱい貰って欲しいので・・・」
「絵プロ鵜先生、ありがとうございます!」
ちょうど注文してたものがテーブルに運ばれて来た。
「甘味極限ちまき味シェイク、漆黒のザッハ・トルテ黒魔術編、灼熱のシナモン五本使用ストレート・ティー、召し上がれ!」
とても、飲めない。