265 イタズラっ子とオモチャならどっち?
文字数 1,339文字
この世で最も人間を突き動かすのは使命感でも責任感でもなくて。
義務感かもしれない。
『いつできる!?』
『あ、明日には』
『ひゃひゃひゃ』
『間に合わなかったら違約金だぞ!』
『が、頑張ります』
『ちゅるっちゅちゅ、ちゅるりら〜』
「わあっ!」
「は、蓮見 くん!?」
急ぎの仕事は昨日の金曜までになんとか全部出来上がった。『エクステリアの迫田 』は面目を保つことができた。
でも終わってもうなされ続けてる。
経営者としての『義務』の中で戦い続けていた迫田さんは偉大だったと思う。
そして僕が心底感心したのは魔直 ちゃんだ。
いやもちろん大工の孫娘としての技量やセンスという面もそうなんだけれども、驚愕すべきはその楽天さだ。
頓着ない、とでもいうか、やることが同じならばジタバタせずに平常心でギリギリの締め切りにも「ちゅるっちゅちゅちゅるりら〜」という歌混じりで作業を続け、夕方にはきっちり仕上げるということを何日も続けてやってのけた。
「縁美 さん、おはよう」
「おはよう、真直 ちゃん。まだ寝ててもいいのに」
「ううん。もう起きた」
迫田さんが亡くなってからは真直ちゃんは僕らのアパートで寝起きしてる。僕と真直ちゃんは朝一緒に出て迫田家の作業所に行って仕事して夜また縁美の待つアパートに戻って来て、っていう日々だったけど・・・・・・
「いつまでもこれじゃマズいな」
「蓮見くん。親子になるんだからいいんじゃない?」
「いや。今週は必ず縁美が居るタイミングばっかりだったけど・・・・・僕と真直ちゃんがふたりきりになることがあったらマズいだろう」
「蓮見さん。エッチな妄想してる?ひゃひゃひゃ」
笑いごとじゃない。
いや、僕はこの超イタズラっ子の真直ちゃんに恐怖を感じることこそあれ
けど、妄想逞しいのは世間のひとたちだろう。20歳の父親と15歳の娘を観て『麗しい』と済ませてくれるひとたちばかりじゃない。
それに縁美にも真直ちゃんにも要らぬ気遣いをさせたくない。
完全同居はマズい。
かと言って15歳の女の子を一軒家に一人で置いておくのも無防備だし・・・
「お邪魔するさね」
「「あっ!」」
無防備な訪問者の登場に僕も縁美も同時に声を上げた。
「絵プロ鵜 。確か今のアパート、漫画の資料置いたりするの手狭になってるって言ってたよね?」
「?蓮見どの、基地みたいな部屋で気に入ってはいるが確かに仕事するには限界の狭さになってきてるさね」
「絵プロ鵜ちゃん、広ーい作業場があるんだけど」
縁美の言葉に絵プロ鵜がやや警戒を示し始めた。
「どこかね・・・・?」
「ウチ!ひゃひゃひゃ!」
当事者である真直ちゃんが僕と縁美の意図をすぐに察して発言すると。
「嫌さね!」
「でも、快適だよ?」
「嫌と言ったら嫌さね!」
そのまま朝ごはんを食べながら1時間僕と縁美とで絵プロ鵜を説得した。
とうとう折れてくれたけど。
「条件があるさね」
「絵プちゃーん。なんなりと」
「・・・・・・某 が仕事中は決してイタズラしないで欲しいさね」
「うん、分かった」
真直ちゃんは素直に返事した。
そして直ぐに付け足した。
「仕事中以外はイタズラし続けるから。ひゃひゃひゃ」
「やっぱり嫌さね!」
義務感かもしれない。
『いつできる!?』
『あ、明日には』
『ひゃひゃひゃ』
『間に合わなかったら違約金だぞ!』
『が、頑張ります』
『ちゅるっちゅちゅ、ちゅるりら〜』
「わあっ!」
「は、
急ぎの仕事は昨日の金曜までになんとか全部出来上がった。『エクステリアの
でも終わってもうなされ続けてる。
経営者としての『義務』の中で戦い続けていた迫田さんは偉大だったと思う。
そして僕が心底感心したのは
いやもちろん大工の孫娘としての技量やセンスという面もそうなんだけれども、驚愕すべきはその楽天さだ。
頓着ない、とでもいうか、やることが同じならばジタバタせずに平常心でギリギリの締め切りにも「ちゅるっちゅちゅちゅるりら〜」という歌混じりで作業を続け、夕方にはきっちり仕上げるということを何日も続けてやってのけた。
「
「おはよう、
「ううん。もう起きた」
迫田さんが亡くなってからは真直ちゃんは僕らのアパートで寝起きしてる。僕と真直ちゃんは朝一緒に出て迫田家の作業所に行って仕事して夜また縁美の待つアパートに戻って来て、っていう日々だったけど・・・・・・
「いつまでもこれじゃマズいな」
「蓮見くん。親子になるんだからいいんじゃない?」
「いや。今週は必ず縁美が居るタイミングばっかりだったけど・・・・・僕と真直ちゃんがふたりきりになることがあったらマズいだろう」
「蓮見さん。エッチな妄想してる?ひゃひゃひゃ」
笑いごとじゃない。
いや、僕はこの超イタズラっ子の真直ちゃんに恐怖を感じることこそあれ
そういう
気も起こらないし起こったところで僕は物理的にそういうこと
ができないカラダだ。けど、妄想逞しいのは世間のひとたちだろう。20歳の父親と15歳の娘を観て『麗しい』と済ませてくれるひとたちばかりじゃない。
それに縁美にも真直ちゃんにも要らぬ気遣いをさせたくない。
完全同居はマズい。
かと言って15歳の女の子を一軒家に一人で置いておくのも無防備だし・・・
「お邪魔するさね」
「「あっ!」」
無防備な訪問者の登場に僕も縁美も同時に声を上げた。
「
「?蓮見どの、基地みたいな部屋で気に入ってはいるが確かに仕事するには限界の狭さになってきてるさね」
「絵プロ鵜ちゃん、広ーい作業場があるんだけど」
縁美の言葉に絵プロ鵜がやや警戒を示し始めた。
「どこかね・・・・?」
「ウチ!ひゃひゃひゃ!」
当事者である真直ちゃんが僕と縁美の意図をすぐに察して発言すると。
「嫌さね!」
「でも、快適だよ?」
「嫌と言ったら嫌さね!」
そのまま朝ごはんを食べながら1時間僕と縁美とで絵プロ鵜を説得した。
とうとう折れてくれたけど。
「条件があるさね」
「絵プちゃーん。なんなりと」
「・・・・・・
「うん、分かった」
真直ちゃんは素直に返事した。
そして直ぐに付け足した。
「仕事中以外はイタズラし続けるから。ひゃひゃひゃ」
「やっぱり嫌さね!」