251 仲裁と加護ならどちら?
文字数 1,227文字
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「だ、誰か発言するさね」
絵プロ鵜 が先般の卒業制作コンテスト審査委員長の力量を買われて総合司会をする。
テーマは、『純志 をどうやっていじめから救うか』
日曜日。僕、縁美 、絵プロ鵜、三春 ちゃん、真直 ちゃん、そして当の純志とその幼なじみの智位郎 がアパートの僕らの部屋に集まった。
「純志は日曜の午後はいつも苦しんでるんだ。『学校の始業時間までもう20時間しかない』とか」
「月曜の朝まで、智位郎くんがLINEで話しかけてあげてるの?」
「そうだよ。だって俺にはそれしかできないから」
僕は部屋に入って来た時から床しか見ていない純志の顔をもう一度よく見てみた。
とても辛いことだけど、死相が出てる表情ってこういうものなんだと思う。
まだ中一なのに。
「やっぱりぃ、先生にぃ、相談するしかないと思うけどぉ」
三春ちゃんがゆったりした声でそう言うと智位郎が反発した。
「ウチの担任、いじめっ子なんだぜ」
「えぇ?」
「教師だけでバーベキュー行った時にいつもいじめられてる若い教師を面白がって山ん中に置き去りにしたんだよ!」
ダメだな。
「なら警察に」
真直ちゃんが真剣な表情で発言した。
でもこれにも智位郎は声を荒げた。
「警察が24時間純志を守ってくれるのか?中途半端なら火に油だ!」
いつもの真直ちゃんらしくなく、素直にまた沈黙に戻った。
「純志くんの親御さんはどうしてるの?」
どうやら誰の発言よりも縁美の発言が一番辛く、しかも核心を突いていたようだ。純志が初めて声を出した。
「僕の父も・・・母も・・・『いじめられるのはお前が情けない奴だからだ』・・・・・って言うんです・・・」
「わかった」
僕は、その場で立った。
「真直ちゃん。迫田 さんには申し訳ないけど明日仕事を休ませてもらうよ」
「え?どうして?」
「純志に付き添って中学に行く」
「!」
「!」
「!」
「!」
「・・・・・なんだよそれ」
「授業の間もずっと純志の側に居る」
「何言ってんだよ!蓮見さんに何ができんだよ!訳わかんない奴がいきなり学校に入れる訳ないだろう!?」
「じゃあ他に何かいい方法を誰か言ってみてくれ」
「蓮見くん」
「縁美」
「わたしはとてもよく分かる。でも、多分みんなには分からないから話してあげて?」
「うん・・・・・・・みんな。僕には子供ができない。生物として物理的に。そういう病気だ」
「そ、そうなのか?」
「ああ。だから養子を迎えることを検討してる。養子縁組を支援する団体のスタッフさんからは養子制度は虐待に苦しむ子達を救うひとつの方法だと教わった。虐待もいじめも本質は同じだろう」
「だ、だからって純志は蓮見さんの子でも養子でもないだろ?」
「僕には理想がある。こういう大人になりたいという理想がある」
もう一度縁美の眼を見て、ふたりで頷き合った。
「自分の子にも他人 の子にも分け隔てないのが大人だろう。我が子の友達が苦しんでいるのなら同じように助けようとする父親になりたいと僕は願う」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「だ、誰か発言するさね」
テーマは、『
日曜日。僕、
「純志は日曜の午後はいつも苦しんでるんだ。『学校の始業時間までもう20時間しかない』とか」
「月曜の朝まで、智位郎くんがLINEで話しかけてあげてるの?」
「そうだよ。だって俺にはそれしかできないから」
僕は部屋に入って来た時から床しか見ていない純志の顔をもう一度よく見てみた。
とても辛いことだけど、死相が出てる表情ってこういうものなんだと思う。
まだ中一なのに。
「やっぱりぃ、先生にぃ、相談するしかないと思うけどぉ」
三春ちゃんがゆったりした声でそう言うと智位郎が反発した。
「ウチの担任、いじめっ子なんだぜ」
「えぇ?」
「教師だけでバーベキュー行った時にいつもいじめられてる若い教師を面白がって山ん中に置き去りにしたんだよ!」
ダメだな。
「なら警察に」
真直ちゃんが真剣な表情で発言した。
でもこれにも智位郎は声を荒げた。
「警察が24時間純志を守ってくれるのか?中途半端なら火に油だ!」
いつもの真直ちゃんらしくなく、素直にまた沈黙に戻った。
「純志くんの親御さんはどうしてるの?」
どうやら誰の発言よりも縁美の発言が一番辛く、しかも核心を突いていたようだ。純志が初めて声を出した。
「僕の父も・・・母も・・・『いじめられるのはお前が情けない奴だからだ』・・・・・って言うんです・・・」
「わかった」
僕は、その場で立った。
「真直ちゃん。
「え?どうして?」
「純志に付き添って中学に行く」
「!」
「!」
「!」
「!」
「・・・・・なんだよそれ」
「授業の間もずっと純志の側に居る」
「何言ってんだよ!蓮見さんに何ができんだよ!訳わかんない奴がいきなり学校に入れる訳ないだろう!?」
「じゃあ他に何かいい方法を誰か言ってみてくれ」
「蓮見くん」
「縁美」
「わたしはとてもよく分かる。でも、多分みんなには分からないから話してあげて?」
「うん・・・・・・・みんな。僕には子供ができない。生物として物理的に。そういう病気だ」
「そ、そうなのか?」
「ああ。だから養子を迎えることを検討してる。養子縁組を支援する団体のスタッフさんからは養子制度は虐待に苦しむ子達を救うひとつの方法だと教わった。虐待もいじめも本質は同じだろう」
「だ、だからって純志は蓮見さんの子でも養子でもないだろ?」
「僕には理想がある。こういう大人になりたいという理想がある」
もう一度縁美の眼を見て、ふたりで頷き合った。
「自分の子にも