ONE HUNDRED EIGHT 煩悩と禁欲とふたりはどっち?
文字数 1,274文字
人間の煩悩は108あってだから除夜の鐘は108回突くらしい。
なら煩悩はあるけどカラダが伴わない、ってのはどういう分類かな?
「蓮見 くんは最近サービスが足りない」
「そう?」
平日のなんでもない夜。
就寝前に唐突に言われた。
縁美 がどういう意図でそんなことを訊いてきたのかはわからないけど僕は自分がエッチだという自覚はある。
だって縁美を観てると煩悩が浮かんでくるから。
5年間、何度も裸を観たり肌に触れたりしても彼女の横顔を観る度にどうしようもなく切ない気持ちになるから。
仮に僕のカラダに
永遠に息を吸い込みきれないような、そういう切なさ。
「蓮見くん。もしかして禁欲してるの?」
「え。どうして?」
「だって、最近、ぎゅーっ、てしてくれない」
「そんなことないよ。ほら」
ぎゅーっ、ってした。
「頬に触れてくれてない」
「そんなことないよ」
掌で包むようにして彼女の小さな頬と、それから喉元から顎にかけたきれいなシェイプに触れてあげた。
「頭髪ぽんぽんもご無沙汰だし」
「やるよ」
ぽんぽん。
「どう?」
「まだ足りないね。甘いね、蓮見くん」
なら。
「うわ」
縁美の両手の指と指の間に僕の指を交互に差し込んで。
それから、くっ、と力を込めた。
「痛い痛い!」
「ごめん。でも効くでしょ?」
「うん。効く〜。蓮見くんの指刺激」
指先を刺激したりマッサージしたりすると脳の皮膜が一枚剥がれるような感覚になる。
「あ、蓮見くん、覚えてる?」
「なに」
「温泉に泊まりがけで行った時、大浴場に小石が敷かれたお風呂が女湯にあったの。男湯は?」
「あったよ」
「すごくなかった?」
思い出した。
お湯の中に手すりがあって、横からはジェットバブル、底には丸っこい小石が敷かれてて、その上を歩くと足裏が痛いぐらいに刺激される。
「脳が覚醒したよわたしは。蓮見くんはどうだった?」
「僕も。ビシビシ音がする感じで脳がスッキリしたな」
「ねえ、やってみない?」
「ええ?」
温泉のような設備はないので今の手の指を挟む要領で足に刺激を与えることにした。
互いの足指をぴったりと組み合わせるようにして・・・・・・
「蓮見くん。指をぎゅーっ、てして
みて」
足指を思ったようにコントロールするのはとても難しいけど、縁美の足指一本一本を交互に挟んだ僕の指を絞った。
「あ・・・・・・・」
多分、僕たちは同じ感覚を共有した。
すごく気持ちいい。
「蓮見くん、いいこれ」
「うん。まさかこんなに気持ちいいなんて」
縁美の、ナチュラルなのに透明なペディキュアを塗ったみたいな滑らかな爪と、ほのかにピンク色になっている指先の乳酸が、僕の刺激で潰されて拡散する感触。
わかるよね?
わからなければ、自分で手の指を組んで、ぎゅっ、ってしてみるといい。
それから自分の足の指の間をやっぱり足の指で、ぎゅっ、ってしてみるといい。
これが煩悩だっていうならそれもいい。
すごくカラダが解放されてく。
ココロも。
「蓮見くん。いい」
なら煩悩はあるけどカラダが伴わない、ってのはどういう分類かな?
「
「そう?」
平日のなんでもない夜。
就寝前に唐突に言われた。
だって縁美を観てると煩悩が浮かんでくるから。
5年間、何度も裸を観たり肌に触れたりしても彼女の横顔を観る度にどうしようもなく切ない気持ちになるから。
仮に僕のカラダに
そういうこと
のできる能力と形態が備わってて最後まで想いを遂げることができたとしても、やっぱり切なさを感じるだろう。永遠に息を吸い込みきれないような、そういう切なさ。
「蓮見くん。もしかして禁欲してるの?」
「え。どうして?」
「だって、最近、ぎゅーっ、てしてくれない」
「そんなことないよ。ほら」
ぎゅーっ、ってした。
「頬に触れてくれてない」
「そんなことないよ」
掌で包むようにして彼女の小さな頬と、それから喉元から顎にかけたきれいなシェイプに触れてあげた。
「頭髪ぽんぽんもご無沙汰だし」
「やるよ」
ぽんぽん。
「どう?」
「まだ足りないね。甘いね、蓮見くん」
なら。
「うわ」
縁美の両手の指と指の間に僕の指を交互に差し込んで。
それから、くっ、と力を込めた。
「痛い痛い!」
「ごめん。でも効くでしょ?」
「うん。効く〜。蓮見くんの指刺激」
指先を刺激したりマッサージしたりすると脳の皮膜が一枚剥がれるような感覚になる。
「あ、蓮見くん、覚えてる?」
「なに」
「温泉に泊まりがけで行った時、大浴場に小石が敷かれたお風呂が女湯にあったの。男湯は?」
「あったよ」
「すごくなかった?」
思い出した。
お湯の中に手すりがあって、横からはジェットバブル、底には丸っこい小石が敷かれてて、その上を歩くと足裏が痛いぐらいに刺激される。
「脳が覚醒したよわたしは。蓮見くんはどうだった?」
「僕も。ビシビシ音がする感じで脳がスッキリしたな」
「ねえ、やってみない?」
「ええ?」
温泉のような設備はないので今の手の指を挟む要領で足に刺激を与えることにした。
互いの足指をぴったりと組み合わせるようにして・・・・・・
「蓮見くん。指をぎゅーっ、てして
みて」
足指を思ったようにコントロールするのはとても難しいけど、縁美の足指一本一本を交互に挟んだ僕の指を絞った。
「あ・・・・・・・」
多分、僕たちは同じ感覚を共有した。
すごく気持ちいい。
「蓮見くん、いいこれ」
「うん。まさかこんなに気持ちいいなんて」
縁美の、ナチュラルなのに透明なペディキュアを塗ったみたいな滑らかな爪と、ほのかにピンク色になっている指先の乳酸が、僕の刺激で潰されて拡散する感触。
わかるよね?
わからなければ、自分で手の指を組んで、ぎゅっ、ってしてみるといい。
それから自分の足の指の間をやっぱり足の指で、ぎゅっ、ってしてみるといい。
これが煩悩だっていうならそれもいい。
すごくカラダが解放されてく。
ココロも。
「蓮見くん。いい」