「辻沢日記 58」
文字数 1,535文字
「行こう。ここも奴らに嗅ぎつけられたらしい」
ユウが立ち上がってあたしの手を引いてくれた。
倉庫の扉を開けるとジメついた風が吹き込んできた。
「嫌な風だな」
広場の地面がぬらっと光っている。
その広場周りのブッシュが風もないのに揺らぐと数体の蛭人間が草を踏みつけて現れた。
ユウとあたしが倉庫から出てくるのを待っていたかのようだった。
ユウが黒木刀を握り直し、
「ゆっくりしすぎたかも」
と言った。
スレイヤー・Vでは確か、改・ドラキュラ、カーミラ・亜種と言ったっけ。
今やそんなどうでもいいようなことを考えていると、蛭人間たちが唐突に動いた。
最初に口火を切ったのは、右手の改・ドラキュラだった。
体勢を低くして鉤爪を前に突き出し突っ込んできたのだ。
足を狙っての攻撃と覚る。
「飛ぶよ」
ユウとあたしは上にジャンプしてその攻撃をかわし、着地後ユウが振り向きざま、見返った改・ドラキュラの額に黒木刀をぶち込んだ。
骨がへしゃげる音がして、改・ドラキュラはその場で滅死。
次は、正面の3体の改・ドラキュラが一斉に襲いかかってきた。
ユウがまず、先頭の横面を黒木刀で砕くと、返す刀で右端の喉を突き上げる。
それで2体はその場に伏し倒れ、残るは1体。ユウはあたしの腕を振り回したから、あたしは勢いで改・ドラキュラの真正面に。
「突いて!」
水平リーベ棒を前に出せば、ちょうど眉間に突き刺さり、改・ドラキュラは白目をむいて崩れ落ちた。
「次!」
左にカーミラ・亜種2体。
ユウはあたしを起点に体を反転させながら、最左翼のカーミラ・亜種の脇腹目掛けて黒木刀をぶち込んだ。
カーミラ・亜種の胴体が奇妙な形に折れ曲がり、横倒しにブッシュの中へ。
そしてラスト。
その個体はすり切れた赤襦袢を着ていた。
改・ドラキュラは背広、カーミラ・亜種はセーラー服だったはずだ。
これは?
「なんか違うの来た」
ユウは黒子木刀を敵の脳天に叩き込む。
けれど赤襦袢は両の鉤爪を頭上で交差してそれを受け止めた。
そのまま鉤爪をクロスに振り下ろす。
「ち!」
ユウのパーカーの前が切り裂かれる。
「大丈夫?」
あたしは手がなく、言葉を掛けるしかない。
「平気。後ろに」
言われるままユウの背後に付く。
その間もユウの黒木刀が鉤爪にはじかれ続ける。
「こいつ強い」
ユウが完全に押されている。
あたしが背後にいるせいでユウも攻撃を避けにくくなっているんだ。
そう思ってユウの横に出る。
ユウはそれに「何を?」という顔をしたが、意図を察して正面を見据え、
「次、頭行くからお願い」
ユウが頼ってくれた。
俄然はりきる。
「合図して」
ユウとあたしはじりじりと倉庫まで押し戻される。
もう後ろがない。
ユウが、
「行く!」
黒木刀を振り下ろす。
赤襦袢が両手でそれを押しとどめようと鉤爪を振り上げる。
あたしの目の前、赤襦袢の腋腹ががら空きだった。
あたしはそこを目がけて左腕をぶん回し、赤襦袢の横腹に水平リーベ棒を突き立てた。
意外と簡単に刺さった。
赤襦袢が金色の眼であたしを睨み付けてくる。
鉤爪をこっちに振り下ろすつもりだ。
でも、既に水平リーベ棒を引き抜いた所から大量の血汚泥がほとばしり出て広場の地面をぬらしている。
悪臭が鼻を突く。
赤襦袢がふらつき出し、鉤爪がだらりと垂れるとその場に膝を突いた。
ユウが真っ向から黒木刀で打ち据え脳天を破壊。
赤襦袢は滅殺された。
そして頽れた赤襦袢の体は青い炎を上げながら血汚泥とともに青墓の地面に染み込んだのだった。
「行こう。次に同じのが来たらやばい」
ユウを見ると白いパーカーのお腹のあたりが血に染まっていた。
赤襦袢の攻撃はユウにもそうとう響いたよだった。
あたしはユウの傷が気掛かりだったが、ユウに従って急いでここを立ち退くことにした。
ユウが立ち上がってあたしの手を引いてくれた。
倉庫の扉を開けるとジメついた風が吹き込んできた。
「嫌な風だな」
広場の地面がぬらっと光っている。
その広場周りのブッシュが風もないのに揺らぐと数体の蛭人間が草を踏みつけて現れた。
ユウとあたしが倉庫から出てくるのを待っていたかのようだった。
ユウが黒木刀を握り直し、
「ゆっくりしすぎたかも」
と言った。
スレイヤー・Vでは確か、改・ドラキュラ、カーミラ・亜種と言ったっけ。
今やそんなどうでもいいようなことを考えていると、蛭人間たちが唐突に動いた。
最初に口火を切ったのは、右手の改・ドラキュラだった。
体勢を低くして鉤爪を前に突き出し突っ込んできたのだ。
足を狙っての攻撃と覚る。
「飛ぶよ」
ユウとあたしは上にジャンプしてその攻撃をかわし、着地後ユウが振り向きざま、見返った改・ドラキュラの額に黒木刀をぶち込んだ。
骨がへしゃげる音がして、改・ドラキュラはその場で滅死。
次は、正面の3体の改・ドラキュラが一斉に襲いかかってきた。
ユウがまず、先頭の横面を黒木刀で砕くと、返す刀で右端の喉を突き上げる。
それで2体はその場に伏し倒れ、残るは1体。ユウはあたしの腕を振り回したから、あたしは勢いで改・ドラキュラの真正面に。
「突いて!」
水平リーベ棒を前に出せば、ちょうど眉間に突き刺さり、改・ドラキュラは白目をむいて崩れ落ちた。
「次!」
左にカーミラ・亜種2体。
ユウはあたしを起点に体を反転させながら、最左翼のカーミラ・亜種の脇腹目掛けて黒木刀をぶち込んだ。
カーミラ・亜種の胴体が奇妙な形に折れ曲がり、横倒しにブッシュの中へ。
そしてラスト。
その個体はすり切れた赤襦袢を着ていた。
改・ドラキュラは背広、カーミラ・亜種はセーラー服だったはずだ。
これは?
「なんか違うの来た」
ユウは黒子木刀を敵の脳天に叩き込む。
けれど赤襦袢は両の鉤爪を頭上で交差してそれを受け止めた。
そのまま鉤爪をクロスに振り下ろす。
「ち!」
ユウのパーカーの前が切り裂かれる。
「大丈夫?」
あたしは手がなく、言葉を掛けるしかない。
「平気。後ろに」
言われるままユウの背後に付く。
その間もユウの黒木刀が鉤爪にはじかれ続ける。
「こいつ強い」
ユウが完全に押されている。
あたしが背後にいるせいでユウも攻撃を避けにくくなっているんだ。
そう思ってユウの横に出る。
ユウはそれに「何を?」という顔をしたが、意図を察して正面を見据え、
「次、頭行くからお願い」
ユウが頼ってくれた。
俄然はりきる。
「合図して」
ユウとあたしはじりじりと倉庫まで押し戻される。
もう後ろがない。
ユウが、
「行く!」
黒木刀を振り下ろす。
赤襦袢が両手でそれを押しとどめようと鉤爪を振り上げる。
あたしの目の前、赤襦袢の腋腹ががら空きだった。
あたしはそこを目がけて左腕をぶん回し、赤襦袢の横腹に水平リーベ棒を突き立てた。
意外と簡単に刺さった。
赤襦袢が金色の眼であたしを睨み付けてくる。
鉤爪をこっちに振り下ろすつもりだ。
でも、既に水平リーベ棒を引き抜いた所から大量の血汚泥がほとばしり出て広場の地面をぬらしている。
悪臭が鼻を突く。
赤襦袢がふらつき出し、鉤爪がだらりと垂れるとその場に膝を突いた。
ユウが真っ向から黒木刀で打ち据え脳天を破壊。
赤襦袢は滅殺された。
そして頽れた赤襦袢の体は青い炎を上げながら血汚泥とともに青墓の地面に染み込んだのだった。
「行こう。次に同じのが来たらやばい」
ユウを見ると白いパーカーのお腹のあたりが血に染まっていた。
赤襦袢の攻撃はユウにもそうとう響いたよだった。
あたしはユウの傷が気掛かりだったが、ユウに従って急いでここを立ち退くことにした。