「辻沢ノーツ 48」
文字数 1,597文字
一時間ほどたったころ、やっぱり外出することにして部屋を出た。
確かめたいことがあったから。
鍵はミヤミユが持って出てたので、フロントを通らずに外階段から出た。
バイパスまで歩いて行って辻沢駅行きのバスが来るのを待った。
しばらく待っていると、バイパスの大きなカーブを車体を傾けながらバスがやって来た。
「西廓3丁目まで」
(ゴリゴリーン)
バイパスから街に入り宮木野神社を過ぎて3つ目がAさん宅の最寄りのバス停だ。
バスを降り少し高台になった方向に歩いてゆくとやがて門や石垣、植込みが立派な界隈になる。
坂を上り切ったところのお屋敷の2階のテラスで大きな犬が猛烈に吠えていて、それに気を取られているうちに、Aさん宅の門の前に来ていた。
Aさん宅は変りもなく、あたしが霊感ないだけかもしれないけど、どこから見ても幽霊屋敷のようではない。
呼び鈴を鳴らす。
(ゴリゴリーン)
返事がない。
もう一度、ゴリゴ、
〈はい、どちらさまでしょうか?〉
Aさんでも、お嬢さんでもない女性の声だった。
「ノタクロエと申しますが」
〈ノタクロ様。お帰りなさいませ。ただ今門をお開けしますので、少々お待ちください〉
聞き慣れたくぐもった音をたてて門が開いた。
白いスロープが屋敷の中にあたしを誘っているように見えた。
玄関に入ると、出迎えてくれたのは、まったく見たことにない女性で家政婦だと言う。
「すみません。あたしのことをご存知ですか?」
「以前から存じておりますよ。奥様からノタクロ様が戻られたらお部屋にお通しするように言われています」
じゃあ、この人が見えない家政婦さん?
「いつもお食事をご用意いただきありがとうございました。とってもおいしかったです」
「いいえ、たくさん食べていただいてやりがいがありましたのよ。こちらの皆様はどなたも食が細くていらっしゃるものですから。お坊ちゃまなど、あのご様子でしょう。本当になにもしてあげられなくって」
やっぱりそうだ。結構しゃべる人だったんだな。
どことなくAさんにも似てるから身内の人なのかも。
総じてこの家の人はキレイってことで。
あたしがいた部屋に案内された。部屋の様子は元のままで、しかもびっくりしたことに、ベットの横にユウが持ち去ったはずのあたしの荷物が置いてあった。
家政婦さんが去って一人になってから、何か無くなった物はないか開けて見た。
大急ぎで荷造りしたので中は元からぐちゃぐちゃだったはずたけど、見た感じ荒らされてはいなかった。
ノートPCもあって、ハードディスクの内容も変わりなさそうだった。
それと、カバンの底に隠しておいた予備の現金も無事だった。
これでミヤミユに迷惑を掛けずに調査を続けられる。
夕方になって。Aさんが戻られて、
「この間は申し訳なかったわね。あの子のことになると私も取り乱してしまって。あのあとすぐにあの子も落ち着いて、あなたをホテルに呼びにやったんですけど、フロントに行き先は分からないと言われて困っていましたのよ」
「あたしの荷物はどうしてここに?」
「いえ、それがね。次の日の朝だったかしら、門を開けたら外に置いてあったとかで、ねえ、そうでしょ」
「はい奥様。ハイヤーが積み忘れたのかと」
「そんなはずないじゃない。何かの事情があって、荷物だけ持って帰って来たんだろう、だから、きっと戻っておいでだと思って、部屋に上げておいたのです」
「そうですか」
「不快な思いをさせましたのに、こんなことを申し上げるのもなんですが、予定通りに最後までいらしてくださいね」
このままでは宿の心配が残ってるし、予備のお金にしろ宿泊費を考えると途中どこかで帰らなければならなさそうだった。
だからすこしズーズーしいとは思ったけれどAさんのお言葉は渡りに船だった。やっぱり調査は最後までやり遂げたいから。
「ありがとうございます。大変たすかります」
明日からまたここを拠点に調査を再開できる。
ミヤミユに連絡しなきゃ。
確かめたいことがあったから。
鍵はミヤミユが持って出てたので、フロントを通らずに外階段から出た。
バイパスまで歩いて行って辻沢駅行きのバスが来るのを待った。
しばらく待っていると、バイパスの大きなカーブを車体を傾けながらバスがやって来た。
「西廓3丁目まで」
(ゴリゴリーン)
バイパスから街に入り宮木野神社を過ぎて3つ目がAさん宅の最寄りのバス停だ。
バスを降り少し高台になった方向に歩いてゆくとやがて門や石垣、植込みが立派な界隈になる。
坂を上り切ったところのお屋敷の2階のテラスで大きな犬が猛烈に吠えていて、それに気を取られているうちに、Aさん宅の門の前に来ていた。
Aさん宅は変りもなく、あたしが霊感ないだけかもしれないけど、どこから見ても幽霊屋敷のようではない。
呼び鈴を鳴らす。
(ゴリゴリーン)
返事がない。
もう一度、ゴリゴ、
〈はい、どちらさまでしょうか?〉
Aさんでも、お嬢さんでもない女性の声だった。
「ノタクロエと申しますが」
〈ノタクロ様。お帰りなさいませ。ただ今門をお開けしますので、少々お待ちください〉
聞き慣れたくぐもった音をたてて門が開いた。
白いスロープが屋敷の中にあたしを誘っているように見えた。
玄関に入ると、出迎えてくれたのは、まったく見たことにない女性で家政婦だと言う。
「すみません。あたしのことをご存知ですか?」
「以前から存じておりますよ。奥様からノタクロ様が戻られたらお部屋にお通しするように言われています」
じゃあ、この人が見えない家政婦さん?
「いつもお食事をご用意いただきありがとうございました。とってもおいしかったです」
「いいえ、たくさん食べていただいてやりがいがありましたのよ。こちらの皆様はどなたも食が細くていらっしゃるものですから。お坊ちゃまなど、あのご様子でしょう。本当になにもしてあげられなくって」
やっぱりそうだ。結構しゃべる人だったんだな。
どことなくAさんにも似てるから身内の人なのかも。
総じてこの家の人はキレイってことで。
あたしがいた部屋に案内された。部屋の様子は元のままで、しかもびっくりしたことに、ベットの横にユウが持ち去ったはずのあたしの荷物が置いてあった。
家政婦さんが去って一人になってから、何か無くなった物はないか開けて見た。
大急ぎで荷造りしたので中は元からぐちゃぐちゃだったはずたけど、見た感じ荒らされてはいなかった。
ノートPCもあって、ハードディスクの内容も変わりなさそうだった。
それと、カバンの底に隠しておいた予備の現金も無事だった。
これでミヤミユに迷惑を掛けずに調査を続けられる。
夕方になって。Aさんが戻られて、
「この間は申し訳なかったわね。あの子のことになると私も取り乱してしまって。あのあとすぐにあの子も落ち着いて、あなたをホテルに呼びにやったんですけど、フロントに行き先は分からないと言われて困っていましたのよ」
「あたしの荷物はどうしてここに?」
「いえ、それがね。次の日の朝だったかしら、門を開けたら外に置いてあったとかで、ねえ、そうでしょ」
「はい奥様。ハイヤーが積み忘れたのかと」
「そんなはずないじゃない。何かの事情があって、荷物だけ持って帰って来たんだろう、だから、きっと戻っておいでだと思って、部屋に上げておいたのです」
「そうですか」
「不快な思いをさせましたのに、こんなことを申し上げるのもなんですが、予定通りに最後までいらしてくださいね」
このままでは宿の心配が残ってるし、予備のお金にしろ宿泊費を考えると途中どこかで帰らなければならなさそうだった。
だからすこしズーズーしいとは思ったけれどAさんのお言葉は渡りに船だった。やっぱり調査は最後までやり遂げたいから。
「ありがとうございます。大変たすかります」
明日からまたここを拠点に調査を再開できる。
ミヤミユに連絡しなきゃ。