「辻沢ノーツ 38」

文字数 1,191文字

 日が落ちたのか、段々とあたりが暗くなりだした。

ユウとあたしたちは、寸劇の巨人のパーティーの後ろについて行くことにした。

あたしたちにはユウが用意したヘッドランプだけはあったけど、皆さんが持ってるような武器はない。

これから何が起きるかわからないけど、武器は必要なんじゃ。

「君たち、2人だけか?」

さっきからちらちら後ろを振り返ってた寸劇が話しかけてきた。

「はい、心細くって、従いて行っていい?」

ユウがこれまで出したことのないような艶っぽい声で言うと、寸劇は頭を掻きながら、

「そりゃあ、かまわんが。手ぶらで参加かい?」

「武器がいるなんて取説に書いてなかったんで」

「運営の取説を信じちゃダメだよ。おい、サダム! ロングスリコギ余ってたろ」

サダムと呼ばれた男は口ひげを生やしてはいたけどどう見ても日本人だった。

そのサダムが背負った長い棒を寸劇に渡すとそれをユウに持たせ、

「あんたはこれを」

と言ってから、自分の懐から取り出した銀色の短い棒をあたしに差し出した。

「『水平リーベ棒』だ。短いが奴らには効果絶大だ。これ持ってオレの後ろで身構えてたらいい。奴らが襲って来たらそいつで喉を突き刺すんだ」

襲ってくる?

「奴らって?」

あたしが言うと、

「君は初めてなのか?」

と今度は大きな荷物を背負った、年で言えば18くらいの男の子に、

「サーリフ、あれを出せ」

サーリフと呼ばれた男の子が、リュックのスリットから白いヒラヒラのものを取り出して寸劇に渡した。

寸劇はその場にしゃがんであたしに手招きすると、それをヘッドランプで照らし出して見せた。

それは白いクリアファイルで表面にイラストが描かれあった。

「こっちが改・ドラキュラで、裏のセーラー服のがカーミラ・亜種、どっちも蛭人間といわれるゾンビだ」

これ、フジミユの部屋で見たことある。

エグい凶器の手をしたハンプティーダンプティーだ。

「こいつらが、時に1匹で、時に数匹で襲ってくる。倒すごとにポイントだ。君たちが倒したら、それは君たちのポイントになる。だが全滅させた時のボーナスポイントは、我々、砂漠の友だち旅団がもらう。サポート料だ。申し遅れた、私は砂漠の友だち旅団長、マホメット3世。そしてサダムと、こいつがサーリフ」

寸劇さんにサダムさん、それとサーリフくんね。

よろしく。

「で、きみたちのPT名は?」

そんなのないから黙っていると、ユウが、

PT(パーティー)名はアワノナルト、あたしはユウギリ、この子はイザエモン」

「アワノナルト。どこかで聞いたような。で、ユウギリさんと、あなたがイザエモンさんね。君たち双子?」

寸劇さんがあたしとユウの顔をライトで交互に照らした。

「違いますよ。他人の空似ってやつです」

「本当かい? それにしてはよく似てるな。私には見分けがつかない」

そう言うと寸劇さんは膝を叩いて立ち上がった。

「さあ、狩場に行くぞ。そろそろ奴らがお出ましの頃だ」

「「スレイヤー」」
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