「辻沢ノーツ 52」 

文字数 1,003文字

 ミヤミユに付き合ってもらって、N市のビックヤマダセンターでICレコーダーとデジカメを買い直した。

2人だけで出かけたのは、サキがお盆で帰省中だったから。

帰ってきて、駅前のゴリゴリモバイルのショップを覗いたら激安スマホが売ってて思わず買ってしまった。

スマホ代はちょっと掛かったけど、コミコミで月額1980円っていうのと3カ月間は解約自由だっていうのに惹かれた。

ヤオマン珈琲でミヤミユに初期設定してもらってから、ミヤミユと共通の知り合いの連絡先を登録させてもらった。

帰ってすぐにフジミユに番号とメアドを知らせるために電話した。

「しばらく連絡ないから心配した」

「ごめん」

「遊女には会わせてもらえたの?」

やっぱりそのこと聞きたいよね。

「会えたと言うか。話は聞けた」

「そっか。いろいろわかったんだ」

「うん」

鬼子のことを聞こうと思ったけどやめにした。

もう少し自分で調べてからにしようと思ったから。

地下道のことも気になっていたけど、こっちはフジミユに聞いても意味がなさそうだった。

「辻沢のヴァンパイアってさ、本当だったりしないかな」

「何を急に。口承だって鞠野フスキが言ってなかった?」

「そうだけど、ひょっとしてって」

「疲れてる?」

「ううん」

しばしの沈黙。

「あくまで冗談でだけどね、『辻沢ノート』の家系図はヴァンパイアの系図だってのは聞いたことあるよ」

「ヴァンパイアって遺伝なの? 感染するのかと思ってた」

「いろいろいるんじゃない?」

フジミユの声のトーンが下がった。怒ったのかな。

「ごめんね」

「いいよ。ガンバレ」

「ありがと」

 『ノート』の系図を見てみた。

最初に宮木野と志野婦の姉妹。

そして志野婦から下はなく、宮木野から5つの支流が伸びていて、それぞれが昭和まで連綿と続いている。

気になるのが、ところどころに附された「妓」という文字。

最初に、宮木野と志野婦の名の肩に附されていて、下にいくと世代ごとに一つ、二つあり、これも昭和まで続いている。

その妓の字があるのは、女性の名前で、しかも姉妹がいる場合だけだった。

凡例にはこれは芸妓の意味とあるけれど。

(「宮木野の子孫に、女の双子が生まれるとどっちかがヴァンパイアってのが続いたんだって」)

この系図の名は仮称だから、実際と照らすことはできないけど、もし事実関係と照らせる裏資料があれば。

裏資料?

『日記』だ。

四宮浩太郎の日記にそれがあるかも知れない。

・・・・あたし、疲れてるかな。
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