「辻沢ノーツ 58」
文字数 1,482文字
寸劇・Zが部屋を出ると、ドアが閉まってあたしは取り残された。
静まり返った部屋の中で、明日の朝どうやって皆さんに説明すればいいか考えてた。
ひだる様が来た。
と言ったら信じてもらえるだろうか。
でも、あれはひだる様じゃないなと思った瞬間、窓が割れる音がして外から枝切バサミが刺し込まれた。
これこそ、ひだる様。いや蛭人間。
ここにいたらやばい。
部屋から飛び出すと、廊下の奥の暗がりからじわじわと近づいて来る改・ドラキュラとカーミラ・亜種の群れ。
それならばと玄関に向かえば、そっちではすでに砂漠のゾンビ旅団が蛭人間と激闘中だった。
蛭人間が次々にゾンビ旅団に群がって来るけれど、見る見るうちに蛭人間が小爆発を起こして殲滅されて行く。
ゾンビ旅団は敵に対して圧倒的で、寸劇・Zの攻撃は折れた棒一本なのに凄まじいものだった。
棒を持たない手で蛭人間の頭を鷲掴み、それを振り回して攻め寄せる他の蛭人間をなぎ倒し、身に近づいたものは棒で突き刺して滅殺してゆく。
それが手慣れた流れ作業のように淡々と進められ、その凄惨さを忘れさせるほどだった。
あたしはゾンビ旅団の防護隊形の真ん中にあるNさんの棺桶にすり寄って、知らぬ間に手にしてた山椒の木で襲って来る蛭人間を突き返す。
それはいつか、あたしが突き、サダム・Zが頭を叩き落すという攻撃パターンになって、その場を切り抜ける一助にもなった。
蛭人間の波が引き、辺りが静かになった。
そこにいたのは、術もなく降りかかる血しぶきに慄いていたあたしと、砂漠のゾンビ旅団の二人。
当然いるものと思っていたサーリフ・Zは見当たらなかった。
あたしは機を見てゾンビ旅団から離れようとした。
するとサダム・Zがあたしの前に立ち塞がって牙をむいた。
でも、危害を加える様子はなく、ただ行くなと言いたいだけらしい。
そういうわけであたしもゾンビ旅団が棺桶をどこかに曳いて行くのに従う羽目になった。
同行3人いやNさんの遺体を入れたら4人か。
暗闇の中を黙々と進む。
しかしこのシチュ、いつか見たような気がする。
どこへ行くのか、舗装された道に出ることなく、ひたすら山道、裏道、獣道を行く。
ゾンビ旅団は棺桶を乗せたまま台車で、雨でぬかるんだでこぼこの道ばかりを行こうとっするものだから、棺桶を支えるのがあたしの役目になった。
台車の車輪など役に立たず、寸劇・Zのバカ力一つで、ずりずりと前進して行く有様だ。
途中、何度か蛭人間が襲って来たけど、それもゾンビ旅団の敵ではなかった。
あるときは寸劇・Zの剛腕で、あるときはサダム・Zの斬撃で改・ドラキュラやカーミラ・亜種は一蹴された。
寸劇・Zの足が止まった。
ゾンビ旅団の行進も止まる。
棺桶越しに前方の暗闇を見ると、先の木立の下にぼんやりと白く人の立ち姿があった。
それは近づいて来るでもなくただゆらりと佇んでいる。
これまで道を塞ぐものは何であれ、厳然と排除して来たゾンビ旅団も、まるで金縛りにあったようにそちらには歩を進めようとしない。
しばらくそうしていたけど、寸劇・Zがおもむろに踵を返して後戻りを始めた。
棺桶の台車もぐるりと回転して元来た道を戻る。
途中、どこかで道が逸れたのか、それまでずっと山の中だったのに、突然、舗装された道に出た。
そこを横切ろうとした所、また寸劇・Zが立ち止まる。
今度は、道路脇の森の中に白い人影が見えた。
しばらくの沈黙があって、ふたたび寸劇・Zが方向を変え進み出す。
その道の先には尾根の影に逆三角形に切り取られた、遠くに平らかな街の光とその手前を塞ぐ真っ黒い空間が見えていた。
ゾンビ旅団は、そちらに誘 われたようだった。
静まり返った部屋の中で、明日の朝どうやって皆さんに説明すればいいか考えてた。
ひだる様が来た。
と言ったら信じてもらえるだろうか。
でも、あれはひだる様じゃないなと思った瞬間、窓が割れる音がして外から枝切バサミが刺し込まれた。
これこそ、ひだる様。いや蛭人間。
ここにいたらやばい。
部屋から飛び出すと、廊下の奥の暗がりからじわじわと近づいて来る改・ドラキュラとカーミラ・亜種の群れ。
それならばと玄関に向かえば、そっちではすでに砂漠のゾンビ旅団が蛭人間と激闘中だった。
蛭人間が次々にゾンビ旅団に群がって来るけれど、見る見るうちに蛭人間が小爆発を起こして殲滅されて行く。
ゾンビ旅団は敵に対して圧倒的で、寸劇・Zの攻撃は折れた棒一本なのに凄まじいものだった。
棒を持たない手で蛭人間の頭を鷲掴み、それを振り回して攻め寄せる他の蛭人間をなぎ倒し、身に近づいたものは棒で突き刺して滅殺してゆく。
それが手慣れた流れ作業のように淡々と進められ、その凄惨さを忘れさせるほどだった。
あたしはゾンビ旅団の防護隊形の真ん中にあるNさんの棺桶にすり寄って、知らぬ間に手にしてた山椒の木で襲って来る蛭人間を突き返す。
それはいつか、あたしが突き、サダム・Zが頭を叩き落すという攻撃パターンになって、その場を切り抜ける一助にもなった。
蛭人間の波が引き、辺りが静かになった。
そこにいたのは、術もなく降りかかる血しぶきに慄いていたあたしと、砂漠のゾンビ旅団の二人。
当然いるものと思っていたサーリフ・Zは見当たらなかった。
あたしは機を見てゾンビ旅団から離れようとした。
するとサダム・Zがあたしの前に立ち塞がって牙をむいた。
でも、危害を加える様子はなく、ただ行くなと言いたいだけらしい。
そういうわけであたしもゾンビ旅団が棺桶をどこかに曳いて行くのに従う羽目になった。
同行3人いやNさんの遺体を入れたら4人か。
暗闇の中を黙々と進む。
しかしこのシチュ、いつか見たような気がする。
どこへ行くのか、舗装された道に出ることなく、ひたすら山道、裏道、獣道を行く。
ゾンビ旅団は棺桶を乗せたまま台車で、雨でぬかるんだでこぼこの道ばかりを行こうとっするものだから、棺桶を支えるのがあたしの役目になった。
台車の車輪など役に立たず、寸劇・Zのバカ力一つで、ずりずりと前進して行く有様だ。
途中、何度か蛭人間が襲って来たけど、それもゾンビ旅団の敵ではなかった。
あるときは寸劇・Zの剛腕で、あるときはサダム・Zの斬撃で改・ドラキュラやカーミラ・亜種は一蹴された。
寸劇・Zの足が止まった。
ゾンビ旅団の行進も止まる。
棺桶越しに前方の暗闇を見ると、先の木立の下にぼんやりと白く人の立ち姿があった。
それは近づいて来るでもなくただゆらりと佇んでいる。
これまで道を塞ぐものは何であれ、厳然と排除して来たゾンビ旅団も、まるで金縛りにあったようにそちらには歩を進めようとしない。
しばらくそうしていたけど、寸劇・Zがおもむろに踵を返して後戻りを始めた。
棺桶の台車もぐるりと回転して元来た道を戻る。
途中、どこかで道が逸れたのか、それまでずっと山の中だったのに、突然、舗装された道に出た。
そこを横切ろうとした所、また寸劇・Zが立ち止まる。
今度は、道路脇の森の中に白い人影が見えた。
しばらくの沈黙があって、ふたたび寸劇・Zが方向を変え進み出す。
その道の先には尾根の影に逆三角形に切り取られた、遠くに平らかな街の光とその手前を塞ぐ真っ黒い空間が見えていた。
ゾンビ旅団は、そちらに