「辻沢ノーツ 47」
文字数 1,394文字
ドアの鍵を開ける音がした。
ミヤミユが戻って来たのだった。
「下着買って来たよ。サイズはMでよかったよね」
ありがとう、ホントに。
大きなコンビニ袋には食料がたくさん入ってた。
お赤飯と海苔なし塩おにぎりがいくつか。
お茶のペットボトル。
最近出たばかりのオレンギーナ・スカンポ。
あたしは飲んだら腹ギュルギュルいうから、これはそっち。
それから、冷したぬきうどんにつゆだく温玉とろとろ牛丼。
山椒風味ポッキー。
こんなことしてもらって申し訳ない。
ここにいたら迷惑がかかるから、調査を一旦切り上げて東京に帰ろうかな。
とりあえず帰りの電車代だけは融通してもらわないといけないけど。
「そんなこと気にしないでいいよ。お金ならあとで返してくれればいいから。部屋もツインに変えてもらって一緒に調査続けよ。ここケッコー安いんだよ」
そう言ってもらえるのはありがたいけど、あたしの手元には調査道具一式がない。
半月をかけて採録した四ツ辻の皆さんのお話が入ったハードディスクも、書き留めたあたしの『辻沢ノート』も、それを作成していたPCもなくなってしまった。
ユウに会うことが出来たら、PCは戻ってくるからあたしの『辻沢ノート』を書き継ぐことができるかもだけど、スマホをなくした今となっては連絡のしようがなかった。
ミヤミユがお赤飯のおにぎりの包装をとって、あたしに差し出してくれながら、
「サキ、納得してた。クロエに謝っといてって。電話する?」
話をしておいたほうがいいとは思ったけど、今、話をしてもサキとのわだかまりが取れるとはどうしても思えなかった。
「いいや。スマホ戻ったらメッセージする」
ついでにおにぎりも断ったら、
「そう」
と言ってミヤミユはそれを自分で食べた。
あたしはお茶のペットボトルをもらって口に含む。
口の中が嫌な味がしてどうしても吐き出したくなった。
「そうだ。歯磨き、フロントでもらったの洗面に置いてあるよ」
いたりつくせり。口にお茶を含んだまま洗面に行き、それを吐き出した。
お茶とは思えないようなドロドロした液体が洗面にぶちまけられた。
口の中に指を入れてみると、奥歯がぐらぐらしていて血の味がした。
おそらく昨日やられたのだろう。
散々だった。
洗面についた赤い飛沫を丁寧に洗い流して部屋に戻ると、ミヤミユが冷したぬきうどんを勧めてくれた。
せっかくだったけど、血の味がしそうなのでそれを断った。
それにさほどお腹も空いてない。
結局、買って来てもらったものはミヤミユだけ食べて、残りは備え付けの冷蔵庫にしまった。
「用があったんだよね」
ベッドに寝そべって、山椒風味ポッキーをポリポリしながらTVニュースを観ているミヤミユに話しかけると、
「顔見たかっただけだよ」
と言った。
そうなんだ。どうしてあたしがあのホテルにいるって知ってたのかは聞かないことにした。
ミヤミユは、農作業のお手伝いがあるからと、昼過ぎに出かけると言う。
「掃除が入る時間になっても開けなかったら中にいられるから」
とのことだったので、疲れてもいたし残ることにしてドアのところで見送った。
今日は早めに戻るから部屋にいて、久しぶりに一緒にご飯しようっていわれた。
少ししたら部屋の電話が鳴った。外線のマークが光っていた。
受話器を取ると、
「窓の外見て」
とミヤミユの声だった。
部屋の窓から下の道を見るとバス停でミヤミユが手を振っていた。
「絶対外出しないでね」
念を押された。
ミヤミユが戻って来たのだった。
「下着買って来たよ。サイズはMでよかったよね」
ありがとう、ホントに。
大きなコンビニ袋には食料がたくさん入ってた。
お赤飯と海苔なし塩おにぎりがいくつか。
お茶のペットボトル。
最近出たばかりのオレンギーナ・スカンポ。
あたしは飲んだら腹ギュルギュルいうから、これはそっち。
それから、冷したぬきうどんにつゆだく温玉とろとろ牛丼。
山椒風味ポッキー。
こんなことしてもらって申し訳ない。
ここにいたら迷惑がかかるから、調査を一旦切り上げて東京に帰ろうかな。
とりあえず帰りの電車代だけは融通してもらわないといけないけど。
「そんなこと気にしないでいいよ。お金ならあとで返してくれればいいから。部屋もツインに変えてもらって一緒に調査続けよ。ここケッコー安いんだよ」
そう言ってもらえるのはありがたいけど、あたしの手元には調査道具一式がない。
半月をかけて採録した四ツ辻の皆さんのお話が入ったハードディスクも、書き留めたあたしの『辻沢ノート』も、それを作成していたPCもなくなってしまった。
ユウに会うことが出来たら、PCは戻ってくるからあたしの『辻沢ノート』を書き継ぐことができるかもだけど、スマホをなくした今となっては連絡のしようがなかった。
ミヤミユがお赤飯のおにぎりの包装をとって、あたしに差し出してくれながら、
「サキ、納得してた。クロエに謝っといてって。電話する?」
話をしておいたほうがいいとは思ったけど、今、話をしてもサキとのわだかまりが取れるとはどうしても思えなかった。
「いいや。スマホ戻ったらメッセージする」
ついでにおにぎりも断ったら、
「そう」
と言ってミヤミユはそれを自分で食べた。
あたしはお茶のペットボトルをもらって口に含む。
口の中が嫌な味がしてどうしても吐き出したくなった。
「そうだ。歯磨き、フロントでもらったの洗面に置いてあるよ」
いたりつくせり。口にお茶を含んだまま洗面に行き、それを吐き出した。
お茶とは思えないようなドロドロした液体が洗面にぶちまけられた。
口の中に指を入れてみると、奥歯がぐらぐらしていて血の味がした。
おそらく昨日やられたのだろう。
散々だった。
洗面についた赤い飛沫を丁寧に洗い流して部屋に戻ると、ミヤミユが冷したぬきうどんを勧めてくれた。
せっかくだったけど、血の味がしそうなのでそれを断った。
それにさほどお腹も空いてない。
結局、買って来てもらったものはミヤミユだけ食べて、残りは備え付けの冷蔵庫にしまった。
「用があったんだよね」
ベッドに寝そべって、山椒風味ポッキーをポリポリしながらTVニュースを観ているミヤミユに話しかけると、
「顔見たかっただけだよ」
と言った。
そうなんだ。どうしてあたしがあのホテルにいるって知ってたのかは聞かないことにした。
ミヤミユは、農作業のお手伝いがあるからと、昼過ぎに出かけると言う。
「掃除が入る時間になっても開けなかったら中にいられるから」
とのことだったので、疲れてもいたし残ることにしてドアのところで見送った。
今日は早めに戻るから部屋にいて、久しぶりに一緒にご飯しようっていわれた。
少ししたら部屋の電話が鳴った。外線のマークが光っていた。
受話器を取ると、
「窓の外見て」
とミヤミユの声だった。
部屋の窓から下の道を見るとバス停でミヤミユが手を振っていた。
「絶対外出しないでね」
念を押された。