「辻沢ノーツ 42」

文字数 1,524文字

 サキのPCのモニターに真っ赤なページが表示され、しばらくその画面を見ながらかちゃかちゃしてて、

「これだね。獲得ポイントもそうとう貯めこんでる」

とパソコンを持って戻って来た。

そこには一覧表があって、真ん中ぐらいの欄に砂漠の友だち旅団とあった。

「多分そうだと思う。この人達に連絡したら証言してくれるハズ」

「それはダメ」

「何で? メアド書いてあるじゃない」 

「そうじゃない」

「じゃあ、何で?」

「全滅してる。全滅したパーティーとは連絡取れない」

欄の右端に赤い文字で「Wiped out」とあった。ユウも一緒?

「メンバー全員?」

「3人とも。ユーザー名はノタが言った通りか」

3人? ユウは逃げた? ちがうインチキして入ったから記録がないんだ。

「もう削除されてるかもしれないけど」

そう言うとサキはパソコンの画面で別のサイトを開いて「砂漠の友だち旅団」を検索した。

それは動画サイトらしかった。

「ユーチューブ?」

「これはゴリゴリ動画。『スレイヤー・R』専用の会員制動画投稿サイト。

あるね。なるほど猛者だ。

めぼしい祭にはほとんど参加してる。

幹事のマホメット3世は元自衛官か。

昨日の日付のは。あった。これだ」

動画は画質が悪い上に暗いせいですごく見づらかった。

内容は暗い森の中で2人の人間が刀を振り回してるのが延々と続く映像だった。

最後まで見たけど、全滅した様子はなかった。

「この大きい人が多分、寸劇さんで、こっちの小柄な人がサダムさんだと思う。サーリフくんは映ってなさそうだけど」

「そのサーリフってのがゴリプロ付けてたんだな」

「ゴリプロ?」

サキが目玉のおやじのような黒いガジェットを見せてくれた。

「これを体につけて戦闘を動画で記録する。いわゆるアクションカメラ。スーパーヤオマンで売ってる」

これで撮れるんだ。

でも、この動画は改・ドラキュラとかカーミラ・亜種とかが映ってない。

「これは準備体操か何かなのかな?」

「いや、多分蛭人間と戦ってるんだと思う。

動画になると何故か蛭人間は映ってなくて、こんな間の抜けた映像になる。

運営側でオブジェクトフィルターでも掛けてるのかもしれない」

カメラがどっちへ振られても、あたしやユウは映っていない。

この後あたしたちと合流したのかな。

「ノタのPT名は何?」

「PT名?」

「参戦するには、パーティーに登録するか傭兵にならないと。あんたなんか傭兵ってがらじゃないから、パーティーに登録してもらったんでしょ」

えっと、

(「PT名はアワノナルト、あたしはユウギリ、この子はイザエモン」)

「思い出した。アワノナルト。その子はユウギリって言ってた。あたしのことはイザエモンだって」

「アワノナルトのユウギリ? マジか? それが本当ならあんたは死人と一緒だったってことだよ」

どういうこと?

「今年の春、突然現れたPTが猛烈な勢いでポイントをゲットし始めた。

メンバーが女子2人だっていうこと以外に詳しい情報はなく、彼女たちを見たとかフィールドで会ったという者も現れなかった。

しかも動画をアップしない方針だったらしく、ひたすらポイント獲得数だけがアップしてゆくからみんなの注目が集まって、正体不明の最強女子PTと話題になった。

その後も彼女たちの勢いは止まらず、今までだれ一人満たせなかった第1ステージクリアの条件を半月で充足するってなったある日、全滅した。

多くは荒しと見做されBANされたんだろうという見方だったが、運営の策謀にハマったんじゃないかって噂されもした。

その日は青墓の杜がエネミーの数が尋常でなかったと言うから」

「策謀?」

「上のステージに行かれたらまずいから、意図的に抹殺された」

抹殺って。

「そして、その女子PTの名がアワノナルト、リーダーがユウギリ」
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