「辻沢ノーツ 50」 

文字数 821文字

四ツ辻に前回の調査報告書を届けに行くことにした。

急だったのに快くご承諾いただいので、バスに乗って出かけた。

夏休みだから、こんな早い時間に小学男子たちがたくさん乗ってる。

サッカーの試合かなんかかな。

みんな座席に座って足をぶらぶらさせてて可愛い。

「辻沢の都市伝説その1、言える人?」

「はーい。先祖にヴァンパイアがいるー」

「「「あるあるあるー」」」

「オレのばーちゃんのばーちゃんのばーちゃん、ホントにヴァンパイアだって」

「オレんちなんか、おばさんがヴァンパイア」

「おばさんは先祖じゃないよ。ダイキ」

一番端に座った年長そうな子が言う。

「そっか。じゃあ、取り消し」

「その2」

「えっとねー、地下道は全部青墓とつながってる」

「こわーい。地下道歩けねーじゃん」

「ママに地下道には行くなって言われてる。オレ」

「オレもー」

「オレ、この間ニーニーに連れてってもらった。だから怖くなかった」

「うそだー」

「地下道って、水だらけだよ」

「入れないよ」

「ほんとだもん。ニーニーすごいんだもん」

半泣き状態。可愛い。

「すげーじゃん、ショーとこの兄ちゃん」

年長そうな子が感心して見せた。この子エライ。

「その3はオレね。・・・・なんだっけ、忘れた」

「「「じゃあ、オレオレオレ」」」

年長の子が、

「オレ言ってないから、オレ。えっと」

小学男子みんな黙って聞いてる。

「人が燃えるのは青墓のしわざ」

隣の子がおずおずと、

「オレのおかあさんも言ってた。宮木野さんが怒ってるって」

 小学男子たちは山道に入る手前の大門総合スポーツ公園で降りて行った。

それから30分、いつになく運転手さんの機嫌がわるいのか、右に左に大揺れに揺られながらで、さすがに酔った。

うぇ。超やばい。

〈次は四ツ辻公民館です。わがちをふふめおにこらや、歴史の里、四ツ辻へようこそ〉

ようやくいつものアナウンス聞けた。

(ゴリゴリーン)

なんとかこらえた。公民館に入ると、靴が一組揃えてあった。頼んだ方がもう待っていてくださっているらしい。

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