「辻沢ノーツ 46」
文字数 1,358文字
シャトー大曲を出て坂を少し上がったところにヤオマンホテル大曲はあった。
コナラ林に囲まれた落ち着いた感じのホテルだった。
やっぱミヤミユがいるのはこういう所だね。
確かに905号室っと。
(ゴリゴリーン)
「はい」
ドアの向こうでミヤミユの声がした。しばらくバタバタしている気配がしてから、やっとドアが少し開いた。
「クロエ?」
隙間に顔を持って行って、
「そうだよ。お久さ」
「ちょっと待って」
一旦ドアが閉まってガチャガチャ音がしたあと、今度は大きくドアが開いて、カレー☆パンマンのパーカーを着たミヤミユが立っていた。
「いらっしゃい。よく来たね」
部屋の中はちょっとムッとしてるけど、山椒の鉢植えがあちこちに置いてあってさわやかな香りがしている。
「これ」
「うん。手伝った農家でもらった。山椒にも、木の芽を採る葉山椒以外に実を採る辻沢サンショウ、朝倉サンショウ、ぶどうサンショウっていろいろ種類があって、その中でも、優秀系統の止々呂美系、北斗系・・・・」
「元気だった? ミヤミユ、すごい痩せたね。それに日に焼けて真っ黒」
なんかフジミユ化してないか?
「そう? 農作業ばっかだからかな」
全体的に引き締まった感じする。
「フィールドワークっていうより夏のアルバイトだよ、マジで」
「ラボールはどこ行った」
「それな」
ひとしきり、会ってない間のことを話して盛り上がった後、今あたしが置かれている状況とサキが変な誤解をしてることを聞いてもらった。
ミヤミユは少し考えてから、
「あたし雄蛇ヶ池なんて行ってないし。その写真って本当にあたしなのって思う」
「というと?」
「顔よく見た? カレー☆パンマンのパーカー着てる人、結構見るんだよね。辻沢で」
そう言えばサキに写真を見せられた時、あたしの顔ばかりに目が行ってたから、ミヤミユの顔をきちんと見たか自信がなかった。
黄色いパーカーを着てるのと髪型が同じってところでミヤミユと判断しただけだったような気もする。
「それに望遠っていうのも変だよね。サキが見てたんなら声かければいいじゃない」
「そっか。つまり撮ったのはサキじゃない」
「そう、誰かが紛らわしい写真をサキに送った」
何でそんなことする必要があるんだろう。
サキの目を騙してあたしと仲違いさせて何がしたいんだろう。
それにユウが関わってるとすると・・・・。わけわかんない。
「二人で考えててもしかたないから、サキに直接聞いてみるよ。その間にシャワー浴びてきたら」
ありがとう。もう自分のニオイが我慢ならなかった。
シャワーをしているとノックの音がして、ミヤミユが外から、
「あたし、ちょっとコンビニに行って来るね。着替えここに置いておくから」
「分かった。ありがとう」
「食べ物買って来るけど、何がいい?」
そういえば、昨日から何も食べてなかった。
何でもよかったけど、とりあえず喉が渇いてたから、飲み物だけ頼んだ。
身体をバスタオルで拭いて外に出ると、扉の前のスツールにパーカーとデニムが置いてあった。
下着は履いていたものを付けたけど、出来れば変えたかった。
ミヤミユの部屋は9階だけあってとても眺めがいい。
宮木野バイパスを背にして立っているせいで、街中からはあまり感じられない辻沢の郊外の広がりが一望できた。
さらに遠くには辻沢の山間部が見える。
あのどこかに四ツ辻があるはずだった。
コナラ林に囲まれた落ち着いた感じのホテルだった。
やっぱミヤミユがいるのはこういう所だね。
確かに905号室っと。
(ゴリゴリーン)
「はい」
ドアの向こうでミヤミユの声がした。しばらくバタバタしている気配がしてから、やっとドアが少し開いた。
「クロエ?」
隙間に顔を持って行って、
「そうだよ。お久さ」
「ちょっと待って」
一旦ドアが閉まってガチャガチャ音がしたあと、今度は大きくドアが開いて、カレー☆パンマンのパーカーを着たミヤミユが立っていた。
「いらっしゃい。よく来たね」
部屋の中はちょっとムッとしてるけど、山椒の鉢植えがあちこちに置いてあってさわやかな香りがしている。
「これ」
「うん。手伝った農家でもらった。山椒にも、木の芽を採る葉山椒以外に実を採る辻沢サンショウ、朝倉サンショウ、ぶどうサンショウっていろいろ種類があって、その中でも、優秀系統の止々呂美系、北斗系・・・・」
「元気だった? ミヤミユ、すごい痩せたね。それに日に焼けて真っ黒」
なんかフジミユ化してないか?
「そう? 農作業ばっかだからかな」
全体的に引き締まった感じする。
「フィールドワークっていうより夏のアルバイトだよ、マジで」
「ラボールはどこ行った」
「それな」
ひとしきり、会ってない間のことを話して盛り上がった後、今あたしが置かれている状況とサキが変な誤解をしてることを聞いてもらった。
ミヤミユは少し考えてから、
「あたし雄蛇ヶ池なんて行ってないし。その写真って本当にあたしなのって思う」
「というと?」
「顔よく見た? カレー☆パンマンのパーカー着てる人、結構見るんだよね。辻沢で」
そう言えばサキに写真を見せられた時、あたしの顔ばかりに目が行ってたから、ミヤミユの顔をきちんと見たか自信がなかった。
黄色いパーカーを着てるのと髪型が同じってところでミヤミユと判断しただけだったような気もする。
「それに望遠っていうのも変だよね。サキが見てたんなら声かければいいじゃない」
「そっか。つまり撮ったのはサキじゃない」
「そう、誰かが紛らわしい写真をサキに送った」
何でそんなことする必要があるんだろう。
サキの目を騙してあたしと仲違いさせて何がしたいんだろう。
それにユウが関わってるとすると・・・・。わけわかんない。
「二人で考えててもしかたないから、サキに直接聞いてみるよ。その間にシャワー浴びてきたら」
ありがとう。もう自分のニオイが我慢ならなかった。
シャワーをしているとノックの音がして、ミヤミユが外から、
「あたし、ちょっとコンビニに行って来るね。着替えここに置いておくから」
「分かった。ありがとう」
「食べ物買って来るけど、何がいい?」
そういえば、昨日から何も食べてなかった。
何でもよかったけど、とりあえず喉が渇いてたから、飲み物だけ頼んだ。
身体をバスタオルで拭いて外に出ると、扉の前のスツールにパーカーとデニムが置いてあった。
下着は履いていたものを付けたけど、出来れば変えたかった。
ミヤミユの部屋は9階だけあってとても眺めがいい。
宮木野バイパスを背にして立っているせいで、街中からはあまり感じられない辻沢の郊外の広がりが一望できた。
さらに遠くには辻沢の山間部が見える。
あのどこかに四ツ辻があるはずだった。