「辻沢日記 47」
文字数 1,465文字
クロエからせっつかれてすぎてドナドナーズで情報交換かねた女子会を開くことになった。
サキを誘うと、ものすごく面倒くさそうだったけど了解してくれた。
みんなの都合を合わせたら案の定今度の満月の夜になった。
おそらくその日はユウの潮時だ。
けれど、月の南中前に女子会を切り上げて大曲の地下道に急げばユウのには間に合うからよいことにする。
問題はクロエだ。
満月新月必ず発現して徘徊するクロエは、女子会あたりから兆しがあるだろう。
ミユキに会って、いいところでクロエのお世話を交代するよう手はずを整えておかねばならない。
女子会もなんでこんな時にと思うけれども、これはクロエの潮時の特徴の一つなのだった。
やたらと人に会いたがる。集めたがる。
それを邪険にすれば潮時は荒れる。
そうなった場合、大変なのは御守り役のミユキだった。
ある時など、深夜の3時にミユキから電話がかかってきて、クロエがいなくなったから一緒に探してと言ってきた。
聞けば、クロエに飲みに誘われたけど、その日は陰からお守りするつもりでわざと放っておいたのだそうだ。
そうしたら月の南中とともに、ものすごい勢いで走りだし一瞬で見失ってしまったという。
一晩中、二人で心当たりを探して回ったけれど見つからなかった。
結局次の朝、クロエから電話があって、
「あたし、なんでか北海道にいるんだけど」
と言ってきた。
早朝の函館駅前でずぶぬれになって寝ているのを交番のおまわりさんに保護されたらしいかった。
新幹線に乗るはずもないから、クロエは一晩で900km駆けたことになる。
そんなクロエのことを、
「津軽海峡をどうやって渡ったかは考えないことにする」
と言ってミユキは迎えに行った。
潮時はどんなに準備していても何かと忙しいものなのだ。
今回はそれが二人分、しかもユウはこれまでで一番分からずやになってる可能性が高い。
女子会の待ち合わせ前に、ミユキに連絡を入れておく。
クロエをよく見てあげてって言われた。
そういえば潮時直前にクロエと飲むのは今回が初めてだった。
どんな風になるのか。
ミユキの苦労が少しは知れるかもしれない。
3人が集まると、初めからクロエは苛ついていて、なぜかサキに敵意をむき出しにしていた。
サキがすることいちいちが気に入らないようで、すぐに突っかかってゆく。
いい加減クロエをなだめるのに疲れてきたころ10時を切ったのでお開きにすることにして店を出た。
カラオケに行こうかってサキが言い出したのは、きっと仲直りのきっかけにしようとしたんだろうけど、クロエがさらにひどいことを言ってお流れになった。
流石にあれではサキも怒る。
駅前でミユキに会ってクロエの様子を伝えると、
「最近、荒れるんだよね」
と言った。
「人にちょっかい出したりするのは前からなんだけど、絡み方がしつこいの」
確かにうざかった。
鬼子の潮時が時によって変化するというのはあたしには初耳だった。
ユウの場合は凶暴化するけれど最初のころからそれはずっと一緒だったからだ。
鬼子だとて成長するとともに変化があるだろうとは思うけれど、あからさまに「悪く」なっているというのはミユキにとっても心配の種だろう。
そうであっても鬼子使いにはどうすることもできない。
受け入れて世話をし続けるほか手立てはないのだった。
「それに、変な嘘もつくしね」
「そうなんだ」
「例えば、最初の辻沢訪問の時、みんなとバスケして教頭先生に叱られたとかね。そんな大事な時にバスケなんてするわけないじゃんね」
いや、バスケはしたんだよ、あたしたち。
信じてもらえないかもだけど。
サキを誘うと、ものすごく面倒くさそうだったけど了解してくれた。
みんなの都合を合わせたら案の定今度の満月の夜になった。
おそらくその日はユウの潮時だ。
けれど、月の南中前に女子会を切り上げて大曲の地下道に急げばユウのには間に合うからよいことにする。
問題はクロエだ。
満月新月必ず発現して徘徊するクロエは、女子会あたりから兆しがあるだろう。
ミユキに会って、いいところでクロエのお世話を交代するよう手はずを整えておかねばならない。
女子会もなんでこんな時にと思うけれども、これはクロエの潮時の特徴の一つなのだった。
やたらと人に会いたがる。集めたがる。
それを邪険にすれば潮時は荒れる。
そうなった場合、大変なのは御守り役のミユキだった。
ある時など、深夜の3時にミユキから電話がかかってきて、クロエがいなくなったから一緒に探してと言ってきた。
聞けば、クロエに飲みに誘われたけど、その日は陰からお守りするつもりでわざと放っておいたのだそうだ。
そうしたら月の南中とともに、ものすごい勢いで走りだし一瞬で見失ってしまったという。
一晩中、二人で心当たりを探して回ったけれど見つからなかった。
結局次の朝、クロエから電話があって、
「あたし、なんでか北海道にいるんだけど」
と言ってきた。
早朝の函館駅前でずぶぬれになって寝ているのを交番のおまわりさんに保護されたらしいかった。
新幹線に乗るはずもないから、クロエは一晩で900km駆けたことになる。
そんなクロエのことを、
「津軽海峡をどうやって渡ったかは考えないことにする」
と言ってミユキは迎えに行った。
潮時はどんなに準備していても何かと忙しいものなのだ。
今回はそれが二人分、しかもユウはこれまでで一番分からずやになってる可能性が高い。
女子会の待ち合わせ前に、ミユキに連絡を入れておく。
クロエをよく見てあげてって言われた。
そういえば潮時直前にクロエと飲むのは今回が初めてだった。
どんな風になるのか。
ミユキの苦労が少しは知れるかもしれない。
3人が集まると、初めからクロエは苛ついていて、なぜかサキに敵意をむき出しにしていた。
サキがすることいちいちが気に入らないようで、すぐに突っかかってゆく。
いい加減クロエをなだめるのに疲れてきたころ10時を切ったのでお開きにすることにして店を出た。
カラオケに行こうかってサキが言い出したのは、きっと仲直りのきっかけにしようとしたんだろうけど、クロエがさらにひどいことを言ってお流れになった。
流石にあれではサキも怒る。
駅前でミユキに会ってクロエの様子を伝えると、
「最近、荒れるんだよね」
と言った。
「人にちょっかい出したりするのは前からなんだけど、絡み方がしつこいの」
確かにうざかった。
鬼子の潮時が時によって変化するというのはあたしには初耳だった。
ユウの場合は凶暴化するけれど最初のころからそれはずっと一緒だったからだ。
鬼子だとて成長するとともに変化があるだろうとは思うけれど、あからさまに「悪く」なっているというのはミユキにとっても心配の種だろう。
そうであっても鬼子使いにはどうすることもできない。
受け入れて世話をし続けるほか手立てはないのだった。
「それに、変な嘘もつくしね」
「そうなんだ」
「例えば、最初の辻沢訪問の時、みんなとバスケして教頭先生に叱られたとかね。そんな大事な時にバスケなんてするわけないじゃんね」
いや、バスケはしたんだよ、あたしたち。
信じてもらえないかもだけど。