「辻沢ノーツ 28」
文字数 1,982文字
ドナドナーズ[ミヤ(女子会、6時にひさごで)
クロ(たのしみ)
サキ(り)]
ゴリゴリゴリ。
スリコギ摺るのってこんなに癖になるんだ。
ミヤミユもサキも夢中になってる。
注文とってからずっとゴリゴリ。
ミヤミユはお気に入りのカレー☆パンマンの黄色いパーカー着て、農作業で手はボロボロ、顔やお肌がカサカサだって嘆いてる。
サキはこの格好でどんな調査してるのか、例のアーミースタイル。
頭に包帯巻いてて、5針も縫ったとか自慢げに話してる。
みんな、色々(特に人間関係で)あるけど、とりあえずここまでは順調。
あと一ヶ月頑張りましょう。
「「「カンパーイ」」」
サキが横を通りかかった店員さんに焼き鳥5本セットと韓国海苔を注文した。
あたし海苔が嫌いだって言ってなかったかな。
運ばれて来た焼き鳥には山椒がたっぷりかけてあった。
ミヤミユが焼き鳥を串から外して取り分けながら、
「クロエの今のフィールドって四ツ辻だったよね。
あそこは農作業しに何回か行って知ってるけど、みなさん楽しい人ばっかりでいいよね」
「そう。いい人ばっかり。でも、遊女の話は全然出てこないんだよね」
教頭先生が四ツ辻を紹介した理由って何だったんだろう。
遊女の家系のことを話したら、それなら四ツ辻がいいって言ったはずなんだけど。
「そもそも論で、遊女の家系っていうのは存在するの?
『辻沢ノート』に書いてあるのが唯一の情報なんでしょ?」
もう辻沢に来て半月になるのに、全然それらしい話に出くわさないって、やっぱりそう思いたくなる。
四宮浩太郎が何か残してないかAさんにもそれとなく聞いてみたけど思わしい答えは帰ってこなかった。
実は存在しないから『ノート』も示唆で終わってるっていうことなら、ほんとワラエナイ。
随分前に頼んだビールがやっと来た。
改めて乾杯。
今後の調査が順調に行きますように。
なんか無性に喉が渇く。
これは意識飛ぶ前兆かも。
「クロエ飲み過ぎじゃない。明日もあるんでしょ。セーブしなよ」
「放置、放置。フジノ女史もよくこんなやつの面倒見るよ」
フジミユは関係なくない?
なんでかイライラしてきてサキに言ってやりたくなった。
「サキ、何でケガばっかしてんの?」
「ノタに関係ないっしょ」
「ミヤミユが心配してるから言ってるの。頭に5針も縫うなんて」
「サキはアクション・リサーチだからだよね」
ミヤミユがサキを庇った。
アクション・リサーチというのは、問題ある社会状況に積極的に関わってその変革を目指すエスノグラフィーだけど、アクションってそういう意味だっけ?
「ウチはオーディエンス・エスノ標榜してますが、何か?」
TVとかメディアの視聴者を観察するのがオーディエンス・エスノグラフィー。
でもITのオーディエンスって椅子に座ってモニター眺めてるイメージ。
ケガとか絶対しない部類。
「はあ?」
サキがやっとこっち見た。
「クロエこそ、遊女様は見つかりましたか?」
遊女探してんじゃないし。
「大昔の風俗女調べて何になるって」
そういう言い方は許さない。
差別的だし風俗の人をバカにするのもイヤ。
睨み返したらサキはスマホ見て知らない振り。
耳が赤いよ。
それ、飲みすぎたんじゃないよね?
全身が熱くなる。
ミヤミユが話題を変えた。
このままだったらけんかになってたから助かった。
ひさごを出て、仲直りの機会にと思って、カラオケ行く?って誘ったら、サキが言った。
「ウチ帰る。こんなの放っておいてミユウも早く帰んな。夜は変なのいるから」
ミヤミユと二人になった。
「サキ、すごく怒ってた」
「そう?」
「そう? じゃないよ。クロエ、ちょっとウザかった」
ウザかったのはサキのほうだもん。
「あたしも帰る」
「ミヤミユも怒った?」
「怒ってないよ。バスなくなるから。最終早いんだ」
カレー☆パンマンのパーカーが遠ざかってゆく。
バイバイ。
また、一人になっちまったよ。
天を仰ぐ。
チッ、星がよそよそしげに瞬いてやがるゼ。
頭痛い。
うぇ、気持ちわる。
ベッドから抜け出して、廊下を突っ切り、トイレに駆け込む。(エチケット違反)。
胃液しか出ないのに吐かなきゃだめなの?
もう2度とお酒なんか飲まないから。
ゆるしてランダ様。
トイレから出ると、部屋に戻ってベッドに突っ伏す。
今何時? 10時か。
よかった、インタビュー夕方からにしてもらっといて。
昨日はあれから、一人で飲み直す気になって目についた居酒屋に入って、ビール飲んで、芋焼酎ロックでやって、ワイン頼んだのまでは覚えてる。
記憶が混濁してて、途中からミヤミユと飲んでたような。
ガンバレって励まされて、いつもありがとうって・・・・。
スマホ見る。ミヤミユからメッセージ来てる。
12時前のだ。
[ミヤ(サキにあやまっときなよ)]
サキのほうから突っかかって来たのに。
[クロ(ヤダ)]
その後、ミヤミユとも連絡が取れなくなった。
クロ(たのしみ)
サキ(り)]
ゴリゴリゴリ。
スリコギ摺るのってこんなに癖になるんだ。
ミヤミユもサキも夢中になってる。
注文とってからずっとゴリゴリ。
ミヤミユはお気に入りのカレー☆パンマンの黄色いパーカー着て、農作業で手はボロボロ、顔やお肌がカサカサだって嘆いてる。
サキはこの格好でどんな調査してるのか、例のアーミースタイル。
頭に包帯巻いてて、5針も縫ったとか自慢げに話してる。
みんな、色々(特に人間関係で)あるけど、とりあえずここまでは順調。
あと一ヶ月頑張りましょう。
「「「カンパーイ」」」
サキが横を通りかかった店員さんに焼き鳥5本セットと韓国海苔を注文した。
あたし海苔が嫌いだって言ってなかったかな。
運ばれて来た焼き鳥には山椒がたっぷりかけてあった。
ミヤミユが焼き鳥を串から外して取り分けながら、
「クロエの今のフィールドって四ツ辻だったよね。
あそこは農作業しに何回か行って知ってるけど、みなさん楽しい人ばっかりでいいよね」
「そう。いい人ばっかり。でも、遊女の話は全然出てこないんだよね」
教頭先生が四ツ辻を紹介した理由って何だったんだろう。
遊女の家系のことを話したら、それなら四ツ辻がいいって言ったはずなんだけど。
「そもそも論で、遊女の家系っていうのは存在するの?
『辻沢ノート』に書いてあるのが唯一の情報なんでしょ?」
もう辻沢に来て半月になるのに、全然それらしい話に出くわさないって、やっぱりそう思いたくなる。
四宮浩太郎が何か残してないかAさんにもそれとなく聞いてみたけど思わしい答えは帰ってこなかった。
実は存在しないから『ノート』も示唆で終わってるっていうことなら、ほんとワラエナイ。
随分前に頼んだビールがやっと来た。
改めて乾杯。
今後の調査が順調に行きますように。
なんか無性に喉が渇く。
これは意識飛ぶ前兆かも。
「クロエ飲み過ぎじゃない。明日もあるんでしょ。セーブしなよ」
「放置、放置。フジノ女史もよくこんなやつの面倒見るよ」
フジミユは関係なくない?
なんでかイライラしてきてサキに言ってやりたくなった。
「サキ、何でケガばっかしてんの?」
「ノタに関係ないっしょ」
「ミヤミユが心配してるから言ってるの。頭に5針も縫うなんて」
「サキはアクション・リサーチだからだよね」
ミヤミユがサキを庇った。
アクション・リサーチというのは、問題ある社会状況に積極的に関わってその変革を目指すエスノグラフィーだけど、アクションってそういう意味だっけ?
「ウチはオーディエンス・エスノ標榜してますが、何か?」
TVとかメディアの視聴者を観察するのがオーディエンス・エスノグラフィー。
でもITのオーディエンスって椅子に座ってモニター眺めてるイメージ。
ケガとか絶対しない部類。
「はあ?」
サキがやっとこっち見た。
「クロエこそ、遊女様は見つかりましたか?」
遊女探してんじゃないし。
「大昔の風俗女調べて何になるって」
そういう言い方は許さない。
差別的だし風俗の人をバカにするのもイヤ。
睨み返したらサキはスマホ見て知らない振り。
耳が赤いよ。
それ、飲みすぎたんじゃないよね?
全身が熱くなる。
ミヤミユが話題を変えた。
このままだったらけんかになってたから助かった。
ひさごを出て、仲直りの機会にと思って、カラオケ行く?って誘ったら、サキが言った。
「ウチ帰る。こんなの放っておいてミユウも早く帰んな。夜は変なのいるから」
ミヤミユと二人になった。
「サキ、すごく怒ってた」
「そう?」
「そう? じゃないよ。クロエ、ちょっとウザかった」
ウザかったのはサキのほうだもん。
「あたしも帰る」
「ミヤミユも怒った?」
「怒ってないよ。バスなくなるから。最終早いんだ」
カレー☆パンマンのパーカーが遠ざかってゆく。
バイバイ。
また、一人になっちまったよ。
天を仰ぐ。
チッ、星がよそよそしげに瞬いてやがるゼ。
頭痛い。
うぇ、気持ちわる。
ベッドから抜け出して、廊下を突っ切り、トイレに駆け込む。(エチケット違反)。
胃液しか出ないのに吐かなきゃだめなの?
もう2度とお酒なんか飲まないから。
ゆるしてランダ様。
トイレから出ると、部屋に戻ってベッドに突っ伏す。
今何時? 10時か。
よかった、インタビュー夕方からにしてもらっといて。
昨日はあれから、一人で飲み直す気になって目についた居酒屋に入って、ビール飲んで、芋焼酎ロックでやって、ワイン頼んだのまでは覚えてる。
記憶が混濁してて、途中からミヤミユと飲んでたような。
ガンバレって励まされて、いつもありがとうって・・・・。
スマホ見る。ミヤミユからメッセージ来てる。
12時前のだ。
[ミヤ(サキにあやまっときなよ)]
サキのほうから突っかかって来たのに。
[クロ(ヤダ)]
その後、ミヤミユとも連絡が取れなくなった。