第228話
文字数 687文字
坂口が同居を提案してきたあの夜、わかっているでしょうと問いかけてきたのは、どんな結論であれ覚悟をこの同居で決めろということだと上茶谷はおもっている。
上茶谷と同様、いやそれ以上に坂口もまりあとすごす時間が増えている。二人はおなじ会社ゆえに生活時間帯はほぼ一緒だから、彼らが過ごす時間は上茶谷よりも余程多い。そして彼はその時間を無駄に使うような人間ではない。
坂口は上茶谷の部屋での話しあいのあと玄関に送りにきた上茶谷にぼそりと囁いた。
『俺、諦め悪いですから』
上茶谷は小さく首をふる。それからまりあに向かって微笑む。
「まりあ、今日飲んでこなかったのなら軽く飲む? いいワイン貰ったの」
☆
「ダイゴさん!」
部屋着に着替えてリラックスした様子のまりあは、瞬きをパチパチしながらいきなり声をあげたから、上クラッカーのうえに載せたチーズを齧ろうとしていた上茶谷は苦笑した。
「そんな大声を出さなくても、ちゃんと聞こえてるから」
「えーとですね。前もって言っておきますが、わたし酔ってません」
「……そりゃ、グラス一杯しか飲ませてないのに、もう酔ってたらびっくりするわ。……ちょっと酔ってるみたいに見えるけど」
「え? なんて?」
「いーえ。なんでも」
まりあはそう言って苦笑する上茶谷をじぃっと見たあと、弛緩したようにヘラッと笑った。
「居心地がよくて」
「……そのソファが?」
揶揄 うように上茶谷がそういうと、まりあもそりゃダイゴさんが選んだソファですから最高にいいですよ、と笑った。
「ソファもそうですけど。この空間が心地いいんです」
まりあは穏やかに微笑んだまま、視線をどこか遠くに向ける。
上茶谷と同様、いやそれ以上に坂口もまりあとすごす時間が増えている。二人はおなじ会社ゆえに生活時間帯はほぼ一緒だから、彼らが過ごす時間は上茶谷よりも余程多い。そして彼はその時間を無駄に使うような人間ではない。
坂口は上茶谷の部屋での話しあいのあと玄関に送りにきた上茶谷にぼそりと囁いた。
『俺、諦め悪いですから』
上茶谷は小さく首をふる。それからまりあに向かって微笑む。
「まりあ、今日飲んでこなかったのなら軽く飲む? いいワイン貰ったの」
☆
「ダイゴさん!」
部屋着に着替えてリラックスした様子のまりあは、瞬きをパチパチしながらいきなり声をあげたから、上クラッカーのうえに載せたチーズを齧ろうとしていた上茶谷は苦笑した。
「そんな大声を出さなくても、ちゃんと聞こえてるから」
「えーとですね。前もって言っておきますが、わたし酔ってません」
「……そりゃ、グラス一杯しか飲ませてないのに、もう酔ってたらびっくりするわ。……ちょっと酔ってるみたいに見えるけど」
「え? なんて?」
「いーえ。なんでも」
まりあはそう言って苦笑する上茶谷をじぃっと見たあと、弛緩したようにヘラッと笑った。
「居心地がよくて」
「……そのソファが?」
「ソファもそうですけど。この空間が心地いいんです」
まりあは穏やかに微笑んだまま、視線をどこか遠くに向ける。