第103話
文字数 665文字
上島を見た瞬間まりあが感じたのは、上茶谷を守らなければいけないという使命感だった。隣にいた坂口のことも頭から一瞬飛んでしまった。けれどその心配は杞憂だった。上茶谷と上島は先日部屋の前で見た時よりもずいぶん打ち解けて見えた。さらには上島が上茶谷の肩に手を置いて何かを耳打ちしている様子をみて、息がとまりそうになった。
上島は最初に出会った時はどこか尖った印象があったけれどこの時は違った。上茶谷をいとおしげに見つめている上島の穏やかな表情。視線を落として静かに上島の言葉を聞いている上茶谷の綺麗な横顔。テレビドラマの一場面のようにふたりは絵になっていて、まりあは思わずぼおっと見つめてしまった。隣で坂口が息を呑んだのがわかったから、そう感じたのはまりあだけではなかったはずだ。
元恋人だったという二人。まりあは同性同士の恋人というものを頭では理解をしていたつもりだったけれど、どこか違う世界のような不確かなものとして感じていたのかもしれない。あの時目の前でみた二人の様子はごく自然で、尚且つ恋人だった時の余韻がまだそこに漂っていた。まりあはそこではっきりとした事実を突きつけられた気がした。
(そうだった。ダイゴさんは男性しか愛せないひとだった。わたしなんかが入る隙間なんて……ない)
そう考えている自分に気づいてまりあはハッとした。そんなことわかっていたつもりだったのに、どうしてこんなにショックをうけているのだろう。隙間に入るってどういうことなのだろう。この後だ。上茶谷が自室に戻ったのを見計らったように坂口が告白してきたのは。
上島は最初に出会った時はどこか尖った印象があったけれどこの時は違った。上茶谷をいとおしげに見つめている上島の穏やかな表情。視線を落として静かに上島の言葉を聞いている上茶谷の綺麗な横顔。テレビドラマの一場面のようにふたりは絵になっていて、まりあは思わずぼおっと見つめてしまった。隣で坂口が息を呑んだのがわかったから、そう感じたのはまりあだけではなかったはずだ。
元恋人だったという二人。まりあは同性同士の恋人というものを頭では理解をしていたつもりだったけれど、どこか違う世界のような不確かなものとして感じていたのかもしれない。あの時目の前でみた二人の様子はごく自然で、尚且つ恋人だった時の余韻がまだそこに漂っていた。まりあはそこではっきりとした事実を突きつけられた気がした。
(そうだった。ダイゴさんは男性しか愛せないひとだった。わたしなんかが入る隙間なんて……ない)
そう考えている自分に気づいてまりあはハッとした。そんなことわかっていたつもりだったのに、どうしてこんなにショックをうけているのだろう。隙間に入るってどういうことなのだろう。この後だ。上茶谷が自室に戻ったのを見計らったように坂口が告白してきたのは。