第175話
文字数 662文字
「そんな顔をしないで。友だちじゃなくなるわけではないのだから。いつでも会えるわ」
「……違う!」
まりあは反射的に小さく叫んでいた。上茶谷がびっくりしたように頭を撫でる手を止めると、まりあは顔をあげて彼をまっすぐに見あげた。
「友だちじゃないってダイゴさんも言ったじゃないですか。もっと違う存在だって!」
「まりあ……」
上茶谷は切なげに瞳を細めしばらくそのまま彼女を見つめた後、ゆっくりと吐息をついて微笑んだ。
「私達はやっぱり友だちよ」
感情の揺れを丁寧に折り畳んで、どこかにしまい込んだ大人の笑み。まりあは彼の心を開ける引き出しを見つけることができない。
「でも、ただの友だちじゃない。大事な、とても大切な友だち。たとえ傍にいなくてもそれは変わらない。そうでしょ?」
諭すように優しくそう言う上茶谷をじっとみていたら、今まで感じた事のない何かがまりあの心にふつふつと湧き上がってきた。それらは温度をあげ泡立っていく。コントロールできない。
いつものまりあだったら、上茶谷に斟酌 して、無理やりでも笑顔で頷いていただろう。子供の頃から、感情を爆発させたりしない
父親の浮気が発覚した時も、過去に彼氏から別れを告げられた時も。波風がたたないよう周りに気をつかうことが先になって、自分の感情に向き合うのは後回しになっていた。でもこの時は違った。上茶谷と簡単に会えなくなる。そう思ったら遠慮とか忖度とか、そんなものを考える前に気持ちが勝手に言葉になって飛び出した。
「ダイゴさんが傍にいないなんて……やっぱりイヤです!」
「……違う!」
まりあは反射的に小さく叫んでいた。上茶谷がびっくりしたように頭を撫でる手を止めると、まりあは顔をあげて彼をまっすぐに見あげた。
「友だちじゃないってダイゴさんも言ったじゃないですか。もっと違う存在だって!」
「まりあ……」
上茶谷は切なげに瞳を細めしばらくそのまま彼女を見つめた後、ゆっくりと吐息をついて微笑んだ。
「私達はやっぱり友だちよ」
感情の揺れを丁寧に折り畳んで、どこかにしまい込んだ大人の笑み。まりあは彼の心を開ける引き出しを見つけることができない。
「でも、ただの友だちじゃない。大事な、とても大切な友だち。たとえ傍にいなくてもそれは変わらない。そうでしょ?」
諭すように優しくそう言う上茶谷をじっとみていたら、今まで感じた事のない何かがまりあの心にふつふつと湧き上がってきた。それらは温度をあげ泡立っていく。コントロールできない。
いつものまりあだったら、上茶谷に
いい子
だったのだから。父親の浮気が発覚した時も、過去に彼氏から別れを告げられた時も。波風がたたないよう周りに気をつかうことが先になって、自分の感情に向き合うのは後回しになっていた。でもこの時は違った。上茶谷と簡単に会えなくなる。そう思ったら遠慮とか忖度とか、そんなものを考える前に気持ちが勝手に言葉になって飛び出した。
「ダイゴさんが傍にいないなんて……やっぱりイヤです!」