第58話
文字数 892文字
短い付き合いではあるけれど、いつものつき抜けた朗らかさがないのがわかる。心ここに在らず。そんな顔をしたまりあに無意識のうちに上茶谷は聞いていた。
「何かあったの?」
まりあは大きく瞳を見開いた。
「どうしてですか?」
「うーん。いつもとちょっと違うような気がしたから」
しばらく上茶谷のことを見つめていたまりあがふわり微笑んだ。雨上がりに咲いた花みたいな笑顔に、上茶谷も安心して一緒に微笑んでしまう。
「気にしてくれてありがとうございます。……えと、なんでもないんです。それよりダイゴさん、今日は早く仕事終わったんですね。夜ご飯は食べました?」
「ああ。そこのコンビニでなにか買って帰ろうと思ってたとこ」
すぐそばで明るい光を放つ店を指差すと、まりあはにっこり笑って言った。
「じゃあ今日は一緒に餃子を食べませんか?」
☆
「わあ! ダイゴさんの部屋、かっこいい! わたしの部屋と間取り一緒なのに、どうしてこんなに違うんですかね!」
まりあは上茶谷の部屋を興味深げに見回して、はしゃいでいた。
「さっきまでいつもの勢いがないって思ったのに。なんだ、結構元気じゃない」
上茶谷が苦笑まじりにそういうと照れたように笑った。
「ダイゴさんのおかげでテンションあがりました」
餃子を食べないかと誘われて上茶谷はあっさりと承知した。ただし上茶谷の部屋で、と条件をつけた。これまで何かを食べるのはまりあの部屋ばからで片付けは彼女に任せる形になってしまっていたから、今回は上茶谷がやろうと思ったのだ。
「モノトーンでの統一の仕方が完璧ですねえ。ダイゴさんらしい」
まりあがしみじみと壁にかかっているイラストをみつめながら言う。
部屋の雰囲気が冷たい印象にならないように、黒のカウチソファ、淡いグレーのラグやカーテンの他は、窓辺に小さなグリーンを置いたり温かみを感じさせる木目調の白い家具を使っている。まりあが見ている絵は上茶谷の友人が描いてくれた墨絵のような抽象的デザイン画で、そのなかにほんの一点だけ、赤色を使っているのが差し色になって印象に残る。まりあは本当に感心しているようで、しきりにカッコイイを連発している。
「何かあったの?」
まりあは大きく瞳を見開いた。
「どうしてですか?」
「うーん。いつもとちょっと違うような気がしたから」
しばらく上茶谷のことを見つめていたまりあがふわり微笑んだ。雨上がりに咲いた花みたいな笑顔に、上茶谷も安心して一緒に微笑んでしまう。
「気にしてくれてありがとうございます。……えと、なんでもないんです。それよりダイゴさん、今日は早く仕事終わったんですね。夜ご飯は食べました?」
「ああ。そこのコンビニでなにか買って帰ろうと思ってたとこ」
すぐそばで明るい光を放つ店を指差すと、まりあはにっこり笑って言った。
「じゃあ今日は一緒に餃子を食べませんか?」
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「わあ! ダイゴさんの部屋、かっこいい! わたしの部屋と間取り一緒なのに、どうしてこんなに違うんですかね!」
まりあは上茶谷の部屋を興味深げに見回して、はしゃいでいた。
「さっきまでいつもの勢いがないって思ったのに。なんだ、結構元気じゃない」
上茶谷が苦笑まじりにそういうと照れたように笑った。
「ダイゴさんのおかげでテンションあがりました」
餃子を食べないかと誘われて上茶谷はあっさりと承知した。ただし上茶谷の部屋で、と条件をつけた。これまで何かを食べるのはまりあの部屋ばからで片付けは彼女に任せる形になってしまっていたから、今回は上茶谷がやろうと思ったのだ。
「モノトーンでの統一の仕方が完璧ですねえ。ダイゴさんらしい」
まりあがしみじみと壁にかかっているイラストをみつめながら言う。
部屋の雰囲気が冷たい印象にならないように、黒のカウチソファ、淡いグレーのラグやカーテンの他は、窓辺に小さなグリーンを置いたり温かみを感じさせる木目調の白い家具を使っている。まりあが見ている絵は上茶谷の友人が描いてくれた墨絵のような抽象的デザイン画で、そのなかにほんの一点だけ、赤色を使っているのが差し色になって印象に残る。まりあは本当に感心しているようで、しきりにカッコイイを連発している。