第240話
文字数 614文字
まりあは上茶谷と坂口が恋仲になったりすることはないとは思っている。けれどふたりを見ていると同性ゆえの共感 が確かにあって、さらにはそこに微かな色気すら感じてしまう。おそらくそれはまりあの気のせいではない。坂口もわかっているような節がある。上茶谷と話をしているときに、ふとまりあと目があう。そこでみせる問いかけるような視線。
(本当の意味で彼に愛されないってことに耐えられますか?)
そう言われている気がして、まりあの心はさわさわと小さく揺さぶられる。坂口は実際にそれを口にだしてまりあに突きつけてきたりはしない。からかってきたり意地悪を言ったりするくせに、こういう
それでいて彼はさりげないところで優しい。道を歩けば必ず車道側を歩いて車が通る度にまりあを守るようにガードする。雨が降ってまりあの傘ひとつで一緒に帰ったときは、ほとんどまりあに傘をさしかけてきて、自分の肩やら腕がびしょびしょになっていた。満員の通勤電車では、必ずまりあのスペースをつくるように壁になってもくれている。
そんなことをされたら、まりあだって多少なりとも坂口に対して気遣いをする。一緒の時間に家を出る坂口に朝ごはんをちょっと余分に作ってだすと、これまでみたことがなかった含羞 んだ笑みを浮かべる。そんな笑顔はまりあを戸惑わせるのと同時に、どこか落ち着かない気持ちにさせるのだ。
もしかしたらこの人は
(本当の意味で彼に愛されないってことに耐えられますか?)
そう言われている気がして、まりあの心はさわさわと小さく揺さぶられる。坂口は実際にそれを口にだしてまりあに突きつけてきたりはしない。からかってきたり意地悪を言ったりするくせに、こういう
一線
は越えてこないのだ。それでいて彼はさりげないところで優しい。道を歩けば必ず車道側を歩いて車が通る度にまりあを守るようにガードする。雨が降ってまりあの傘ひとつで一緒に帰ったときは、ほとんどまりあに傘をさしかけてきて、自分の肩やら腕がびしょびしょになっていた。満員の通勤電車では、必ずまりあのスペースをつくるように壁になってもくれている。
そんなことをされたら、まりあだって多少なりとも坂口に対して気遣いをする。一緒の時間に家を出る坂口に朝ごはんをちょっと余分に作ってだすと、これまでみたことがなかった
もしかしたらこの人は
普通
に好きになれるのではないか、と。