第170話
文字数 633文字
「気を悪くされたら本当に申し訳ないのですが、上茶谷さんは男性しか愛せない人じゃないですかって、そう聞いたんです。そうしたら……まりあさんはあれ、おかしいな、なんて言いながら、ポロポロ涙をこぼして泣き出して。なにか無意識のところで反応したみたいな泣き方でした。それを見ていて俺は……上茶谷さんはまりあさんをからかい半分で変に気を持たせているのではないか。そう考えてここまで来たんです」
そこでいったん言葉を切って、坂口は上茶谷に微笑んだ。
「でも、今日話をさせてもらったら、全然そんな事なくて。むしろまりあさんのことをとても大切にしているような感じがしたから……。今、ちょっと混乱しています。失礼なことを言っていたら本当にすいません」
そう言って頭をさげた坂口に、上茶谷は身動きが取れなくなった。坂口の言うとおりまりあは上茶谷にとってとても大切な存在だ。一緒にいると心が勝手に凪いでしまう。安らぐ。ずっと傍にいてほしい、そう思う気持ちを止められなくなっていた。まりあもそんな彼を受け入れてくれているのも感じていた。
けれどまりあは上茶谷は男しか愛せない人という言葉に反応して泣いたという。それは彼女が求める愛が上茶谷からは受け取ることが出来ない現実を、突きつけられたからではないか。上島に言われた言葉が、冷たい風のように、上茶谷の背中をすっと抜けて響く。
『……大悟は俺と同じだ。彼女のことがいくら好きでも、心も体も、女性をまるごと愛することはできない種類の人間なんだよ』
そこでいったん言葉を切って、坂口は上茶谷に微笑んだ。
「でも、今日話をさせてもらったら、全然そんな事なくて。むしろまりあさんのことをとても大切にしているような感じがしたから……。今、ちょっと混乱しています。失礼なことを言っていたら本当にすいません」
そう言って頭をさげた坂口に、上茶谷は身動きが取れなくなった。坂口の言うとおりまりあは上茶谷にとってとても大切な存在だ。一緒にいると心が勝手に凪いでしまう。安らぐ。ずっと傍にいてほしい、そう思う気持ちを止められなくなっていた。まりあもそんな彼を受け入れてくれているのも感じていた。
けれどまりあは上茶谷は男しか愛せない人という言葉に反応して泣いたという。それは彼女が求める愛が上茶谷からは受け取ることが出来ない現実を、突きつけられたからではないか。上島に言われた言葉が、冷たい風のように、上茶谷の背中をすっと抜けて響く。
『……大悟は俺と同じだ。彼女のことがいくら好きでも、心も体も、女性をまるごと愛することはできない種類の人間なんだよ』