第205話
文字数 657文字
「いや俺、嘘はいわないよ。信じるか信じないかはまりあちゃん次第だけどね」
真摯な光を湛えた瞳でそう言う上島にまりあは言葉に詰まる。
「……それが本当なら。どうしてわざわざ負けそうな勝負をするんですか?」
じぃっと見つめるまりあから上島はそっと視線を外して微笑んだ。
「あいつをひどく傷つけてしまった自分への罰というかハンデかな。だからあえて悪い条件で賭けをする。勝つ可能性が少なくても、いや、むしろ少ないからこそ……万が一俺が勝てたら。もう一度大悟にちゃんと向き合えるスタートラインにたてるかなって、ね」
上島の言っている事は本当なのか嘘なのか。まりあには確信がもてない。けれど彼は上茶谷がかつて本気で愛した人なのだ。そんな人がこの場で嘘をいうだろうか。それとも上茶谷を愛するが故にまりあを騙そうとしているのか。心の中でそれらの考えがせめぎ合う。
「そんな大事なこと……わざわざ賭けにしなくてもいいのに」
ふたりの間にできた沈黙にそっと穴をあけるようにまりあがため息まじり呟く。
「俺の人生がそもそも、のるかそるかの博打人生だから。一番シンプルで納得できるやり方なんだよね。まりあちゃんもこの賭けに乗ることで真実が見えてくるはずだよ」
上島は自分にもいい聞かせるようにそう語ったあと、風で揺れる湖面のような静かな笑みをまりあに向けた。
「だからさ。俺と賭けをしようよ、まりあちゃん」
遊びをねだる子供みたいな軽い口調。けれど上島の笑みには切なげな何かが滲んでいた。まりあはしばらく彼の顔を見つめたあと心を決めて口を開いた。
真摯な光を湛えた瞳でそう言う上島にまりあは言葉に詰まる。
「……それが本当なら。どうしてわざわざ負けそうな勝負をするんですか?」
じぃっと見つめるまりあから上島はそっと視線を外して微笑んだ。
「あいつをひどく傷つけてしまった自分への罰というかハンデかな。だからあえて悪い条件で賭けをする。勝つ可能性が少なくても、いや、むしろ少ないからこそ……万が一俺が勝てたら。もう一度大悟にちゃんと向き合えるスタートラインにたてるかなって、ね」
上島の言っている事は本当なのか嘘なのか。まりあには確信がもてない。けれど彼は上茶谷がかつて本気で愛した人なのだ。そんな人がこの場で嘘をいうだろうか。それとも上茶谷を愛するが故にまりあを騙そうとしているのか。心の中でそれらの考えがせめぎ合う。
「そんな大事なこと……わざわざ賭けにしなくてもいいのに」
ふたりの間にできた沈黙にそっと穴をあけるようにまりあがため息まじり呟く。
「俺の人生がそもそも、のるかそるかの博打人生だから。一番シンプルで納得できるやり方なんだよね。まりあちゃんもこの賭けに乗ることで真実が見えてくるはずだよ」
上島は自分にもいい聞かせるようにそう語ったあと、風で揺れる湖面のような静かな笑みをまりあに向けた。
「だからさ。俺と賭けをしようよ、まりあちゃん」
遊びをねだる子供みたいな軽い口調。けれど上島の笑みには切なげな何かが滲んでいた。まりあはしばらく彼の顔を見つめたあと心を決めて口を開いた。