第62話
文字数 813文字
「そうね。でも大丈夫だったわ。まりあが一緒にうどん食べてくれたから」
「……うどんが役にたったみたいでなによりです」
ふたりでくすくす笑いあっていたら、またすこし心が軽くなっていくのを上茶谷は感じた。
「まりあは人の気持ちがわかるコよね」
おやきの載った皿をローテーブルに置いて座りながら上茶谷が何気なくそういうと、まりあは大きく瞳を見開いた。それからペタリと座り込んで、缶に残っていたビールを一気に飲み干し、間髪入れずおやきに手を伸ばしてかじりつく。熱っ! といって暫くおやきを見つめた後、ぽつりと呟いた。
「そんなことないんです。よくわかっていないことだらけで。だから……」
「……だから?」
そっと問いかけた上茶谷に、まりあはベソをかいた子供みたいな顔で微笑んだ。
「結婚するのかなって思っていた人に、浮気された挙句振られたりするんですよ」
そこまで言うとまりあは俯いてゆっくりとやけどに気をつけながらおやきを食べ終え、テーブルに載っていたビール缶に手を伸ばした。
「頂いてもいいですか?」
「……好きなだけ飲みなさいよ。まだ冷蔵庫にも冷えてるし」
上茶谷も静かにそう答えると、まりあはじゃあ遠慮なく、といってプルトップをぷしゅりとひねり上げた。
「だからわたし、これからは一人で生きていこうと覚悟を決めてこのアパートに越してきたんです。節約しながら地道に生活して将来に備えようと」
「そうなのね」
上茶谷も余計な言葉を挟まず、話を先へと促す。
「それが今日……、会社の後輩の男の子に……いえ、まだよくわからないし、もし間違っていたら大赤面案件なんですけど、……わたしのことが好きみたいなことを言われたんです。いい加減気づけよ、くらいの勢いでなんだかこう畳み掛けられてしまったような……」
そこまで真面目に聞いていた上茶谷は我慢できずふきだしてしまい、慌てて口元を手で押さえる。まりあは酔いがほんの少し溶けた瞳をきゅっと上茶谷に向けてきた。
「……うどんが役にたったみたいでなによりです」
ふたりでくすくす笑いあっていたら、またすこし心が軽くなっていくのを上茶谷は感じた。
「まりあは人の気持ちがわかるコよね」
おやきの載った皿をローテーブルに置いて座りながら上茶谷が何気なくそういうと、まりあは大きく瞳を見開いた。それからペタリと座り込んで、缶に残っていたビールを一気に飲み干し、間髪入れずおやきに手を伸ばしてかじりつく。熱っ! といって暫くおやきを見つめた後、ぽつりと呟いた。
「そんなことないんです。よくわかっていないことだらけで。だから……」
「……だから?」
そっと問いかけた上茶谷に、まりあはベソをかいた子供みたいな顔で微笑んだ。
「結婚するのかなって思っていた人に、浮気された挙句振られたりするんですよ」
そこまで言うとまりあは俯いてゆっくりとやけどに気をつけながらおやきを食べ終え、テーブルに載っていたビール缶に手を伸ばした。
「頂いてもいいですか?」
「……好きなだけ飲みなさいよ。まだ冷蔵庫にも冷えてるし」
上茶谷も静かにそう答えると、まりあはじゃあ遠慮なく、といってプルトップをぷしゅりとひねり上げた。
「だからわたし、これからは一人で生きていこうと覚悟を決めてこのアパートに越してきたんです。節約しながら地道に生活して将来に備えようと」
「そうなのね」
上茶谷も余計な言葉を挟まず、話を先へと促す。
「それが今日……、会社の後輩の男の子に……いえ、まだよくわからないし、もし間違っていたら大赤面案件なんですけど、……わたしのことが好きみたいなことを言われたんです。いい加減気づけよ、くらいの勢いでなんだかこう畳み掛けられてしまったような……」
そこまで真面目に聞いていた上茶谷は我慢できずふきだしてしまい、慌てて口元を手で押さえる。まりあは酔いがほんの少し溶けた瞳をきゅっと上茶谷に向けてきた。