第138話
文字数 737文字
上茶谷は視線を逸らして仕事をする社員たちを見つめる。在宅ワークをしている社員が多いらしくフロアにはそれほど人は多くない。上島の会社では、社員から役員まで決まった席がなく、その日の気分や仕事の内容によって、フロアのどこでも仕事ができるようになっているらしい。呼び方も役職ではなくお互い名前で呼ぶ。社長である上島も上島さんか蒼佑さんと呼ばれている。
来客が上島を社長だと気づかないこともよくあるらしい。いまどきのIT企業とはいえそれなりの規模がある会社としては自由な社風の方だろう。年功序列的な上下関係を嫌う上島らしいやり方だ。年齢に関係なく仕事のできる人間には、それだけの報酬をだす。できないやつはいらない。自由な社風は実務的かつクールな上島の一面の裏返しでもあると上茶谷は思う。
「男……じゃないな。あの子だ」
上島がいきなり話しだしたから、視線を向けると彼はじっと上茶谷を見つめていた。
「あの子?」
上茶谷がガラス玉みたいな瞳で静かにそう問いかけたから、上島は片方の眉を軽くあげて小さく苦笑する。
「わかってるくせに」
「……それよりはやく仕事の話をしましょう。無駄話をしてても仕方ないでしょ。有能な社長さん」
からかうようにそういう上茶谷を見つめたあと、上島は困ったように笑って背もたれに体を預けたあと手元のファイルに視線を落とした。
「俺も仕事の話をしたいんだけどさ。ほら、上茶谷さんにプレゼンするために資料もちゃんと用意してる。めんどくさがりの俺が部下任せにしないで自分で全部作ったんだよ。気合い入れてるの、わかるでしょ」
ゆっくりと顔をあげて、上茶谷に視線を投げかける。
「だけど、
来客が上島を社長だと気づかないこともよくあるらしい。いまどきのIT企業とはいえそれなりの規模がある会社としては自由な社風の方だろう。年功序列的な上下関係を嫌う上島らしいやり方だ。年齢に関係なく仕事のできる人間には、それだけの報酬をだす。できないやつはいらない。自由な社風は実務的かつクールな上島の一面の裏返しでもあると上茶谷は思う。
「男……じゃないな。あの子だ」
上島がいきなり話しだしたから、視線を向けると彼はじっと上茶谷を見つめていた。
「あの子?」
上茶谷がガラス玉みたいな瞳で静かにそう問いかけたから、上島は片方の眉を軽くあげて小さく苦笑する。
「わかってるくせに」
「……それよりはやく仕事の話をしましょう。無駄話をしてても仕方ないでしょ。有能な社長さん」
からかうようにそういう上茶谷を見つめたあと、上島は困ったように笑って背もたれに体を預けたあと手元のファイルに視線を落とした。
「俺も仕事の話をしたいんだけどさ。ほら、上茶谷さんにプレゼンするために資料もちゃんと用意してる。めんどくさがりの俺が部下任せにしないで自分で全部作ったんだよ。気合い入れてるの、わかるでしょ」
ゆっくりと顔をあげて、上茶谷に視線を投げかける。
「だけど、
ソコ
が気になってせっかく作ったプレゼンが全力でできないの嫌だからさ。すっきりさせときたい」