第77話
文字数 625文字
上茶谷もリカコの大変さはわかっているつもりだ。青山表参道エリアは言わずとしれた美容室激戦区。さらにリカコは吉祥寺と自由が丘にも店をだしている。三店舗とも人気店として健闘してきた。けれどコロナ禍で美容業界もダメージは受けておりそれはラリュールも例外では無かった。
「なかなかカミちゃんみたいな人育たないからね。育っても独立しちゃうし」
リカコは上茶谷とは逆の方を向いてゆっくりと煙を吐き出す。それから彼へ静かに向き直った。
「だからね。カミちゃんに頼りすぎてるなっていうのはわかっていたんだけど……」
そういって力なく笑うリカコに上茶谷は口元を軽く歪めるようにして問いかける。
「リカコさん、何言ってるの? 私、独立するなんて言ってないでしょ」
リカコはチラリと上茶谷をみやったあとタバコをポンポンと叩いて灰皿に灰を落とす。
「単刀直入に言うね」
リカコは顔をあげて真っ直ぐ上茶谷を見た。その顔は独立する時一緒にきてくれないかと誘われた時と同じくらい真面目な表情で、上茶谷の背筋も思わず伸びる。
「私、経営から離れようと思ってるの」
「え?」
上茶谷は一瞬言葉を失う。けれどどうにか冷静さを保ってリカコの言葉を待つ。彼女はふぅ吐息をついて上茶谷を見て微笑んだ。
「……この十年必死に経営を学んでお店も三店舗まで増やして。それなりに成果も残せたと思ってる。だけど今回のコロナ禍でよくわかったんだけど」
リカコはそう言ってタバコの煙をその紅い唇から静かにに吐き出した。
「なかなかカミちゃんみたいな人育たないからね。育っても独立しちゃうし」
リカコは上茶谷とは逆の方を向いてゆっくりと煙を吐き出す。それから彼へ静かに向き直った。
「だからね。カミちゃんに頼りすぎてるなっていうのはわかっていたんだけど……」
そういって力なく笑うリカコに上茶谷は口元を軽く歪めるようにして問いかける。
「リカコさん、何言ってるの? 私、独立するなんて言ってないでしょ」
リカコはチラリと上茶谷をみやったあとタバコをポンポンと叩いて灰皿に灰を落とす。
「単刀直入に言うね」
リカコは顔をあげて真っ直ぐ上茶谷を見た。その顔は独立する時一緒にきてくれないかと誘われた時と同じくらい真面目な表情で、上茶谷の背筋も思わず伸びる。
「私、経営から離れようと思ってるの」
「え?」
上茶谷は一瞬言葉を失う。けれどどうにか冷静さを保ってリカコの言葉を待つ。彼女はふぅ吐息をついて上茶谷を見て微笑んだ。
「……この十年必死に経営を学んでお店も三店舗まで増やして。それなりに成果も残せたと思ってる。だけど今回のコロナ禍でよくわかったんだけど」
リカコはそう言ってタバコの煙をその紅い唇から静かにに吐き出した。