第98話
文字数 725文字
「もうここでいいわ。送ってくれてありがとう」
アパートの階段の下まできた上島にそう言った時だった。
「ダイゴさん?」
ここ最近耳に馴染んだ気持ちを和ませる声が背後から響いてきた。すぐに振り返る。そこにはまりあともう一人、若い男が立っていた。まりあだけだと思っていた上茶谷は一瞬戸惑うものの、いつもどおり微笑んだ。
「あら、まりあ。今日は遅かったのね」
「はい。あの……会社の同僚とご飯を食べてきたんです」
まりあの背後にいる男を見て上茶谷はピンときた。不確定だと前置きしていたけれど、まりあのことが好きだといってきた同僚というのはこの男だろう。背丈は上茶谷と同じ位。運動でもしていたのか肩幅があり、スーツを着ていても体格がいいのがわかる。それでいててっぺんについている顔はベビーフェイスでパッとみたところ上茶谷より十歳は年下にみえる。けれど上茶谷と上島を遠慮なく観察してくる瞳は鋭い。警戒感がその表情からありありと伝わってくる。
(これはどうみてもまりあのことが好きで仕方ないって感じね。まりあの勘違いじゃないわ)
上茶谷が口を開くまえに上島が楽しげに口を開いた。
「えーと。まりあちゃん、だったよね。こんばんわ。まりあちゃん
まりあはこれまでにないくらい、瞳をめいっぱい見開いて上島を見つめた。彼女は上茶谷と上島の関係を知っている。さらには突然部屋に押しかけられて上茶谷が困惑していたことも。
「こ、こんばんわ。おやき、わたしも頂きました。美味しかったです。あのデートって……。えーとダイゴさん?」
まりあが心配そうに視線を投げかけてきたから、上茶谷は彼女の目を見て苦笑しながら首を振る。
「仕事の話よ」
まりあも安心したように目元を緩めそっと頷く。
アパートの階段の下まできた上島にそう言った時だった。
「ダイゴさん?」
ここ最近耳に馴染んだ気持ちを和ませる声が背後から響いてきた。すぐに振り返る。そこにはまりあともう一人、若い男が立っていた。まりあだけだと思っていた上茶谷は一瞬戸惑うものの、いつもどおり微笑んだ。
「あら、まりあ。今日は遅かったのね」
「はい。あの……会社の同僚とご飯を食べてきたんです」
まりあの背後にいる男を見て上茶谷はピンときた。不確定だと前置きしていたけれど、まりあのことが好きだといってきた同僚というのはこの男だろう。背丈は上茶谷と同じ位。運動でもしていたのか肩幅があり、スーツを着ていても体格がいいのがわかる。それでいててっぺんについている顔はベビーフェイスでパッとみたところ上茶谷より十歳は年下にみえる。けれど上茶谷と上島を遠慮なく観察してくる瞳は鋭い。警戒感がその表情からありありと伝わってくる。
(これはどうみてもまりあのことが好きで仕方ないって感じね。まりあの勘違いじゃないわ)
上茶谷が口を開くまえに上島が楽しげに口を開いた。
「えーと。まりあちゃん、だったよね。こんばんわ。まりあちゃん
も
デート?」まりあはこれまでにないくらい、瞳をめいっぱい見開いて上島を見つめた。彼女は上茶谷と上島の関係を知っている。さらには突然部屋に押しかけられて上茶谷が困惑していたことも。
「こ、こんばんわ。おやき、わたしも頂きました。美味しかったです。あのデートって……。えーとダイゴさん?」
まりあが心配そうに視線を投げかけてきたから、上茶谷は彼女の目を見て苦笑しながら首を振る。
「仕事の話よ」
まりあも安心したように目元を緩めそっと頷く。