第81話
文字数 907文字
「イヤというか……」
上茶谷がそのまま黙るとしばらくふたりの間に沈黙が落ちた。リカコが指に挟んだままだったタバコを口に咥えた。銀色のライターがカチッといい音をたてて小さな炎がたちあがる。ぼんやりとその様子を上茶谷がみつめていると、リカコがゆっくりと横に煙を吐いて微笑んだ。
「こういう時タバコって便利よね。なんとなく間がつながるから」
その言葉に上茶谷も思わず笑うとリカコも笑う。
「上島くんとは平等の立場よ。依存じゃない。彼はビジネスとして成功すると考えているから、あなたと組もうとしてる。カミちゃんだって資金繰りやら経理とか。経営にくっついてくるクソめんどくさい事に煩わされることなくヘアメイクに集中できる。これってカミちゃんにとっても飛躍できるチャンスよ。資金力がある上島くんが関わるとなると経営拡大していくはずだからね。私から見ればウィンウィンの関係よ。でも……」
リカコはいったん言葉を切って上茶谷を見つめた。
「上島くんは、ビジネスだけじゃなく、もう一度、このことをきっかけにしてあなたとの日常を取り戻したいとも望んでいる」
リカコは強い瞳で言葉を続ける。
「もしカミちゃんが彼とどうしても組みたくないというなら、それも仕方ないって思ってる。だから私に遠慮したり気を遣うような決断だけはしないで。カミちゃんがどうしたいのか。それを知りたいの」
「……リカコさん」
二人はしばらく見つめう。先に沈黙を破ったのは上茶谷だった。
「話が先に行き過ぎてて。頭がまだうまく整理できないです」
上茶谷がため息をつきながらそういうとリカコもそりゃそうよねと微笑んだ。
「うん。じっくり考えてみて」
リカコが壁にかかっている時計に視線を向けた。十三時五十分を指している。
「カミちゃん、二時から予約はいってるって言ってたっけ」
「ですね。もういかないと」
上茶谷が立ち上がるとリカコがタバコを消しながらたずねてきた。
「上島くん、カミちゃんと連絡をとりたいんだって。電話番号を教えても大丈夫?」
上島と別れたあと、当時持っていた携帯はすぐに解約して電話番号を変えていた。上茶谷は一瞬口ごもるが、こういう状況ならば教えないわけにもいかない。
上茶谷がそのまま黙るとしばらくふたりの間に沈黙が落ちた。リカコが指に挟んだままだったタバコを口に咥えた。銀色のライターがカチッといい音をたてて小さな炎がたちあがる。ぼんやりとその様子を上茶谷がみつめていると、リカコがゆっくりと横に煙を吐いて微笑んだ。
「こういう時タバコって便利よね。なんとなく間がつながるから」
その言葉に上茶谷も思わず笑うとリカコも笑う。
「上島くんとは平等の立場よ。依存じゃない。彼はビジネスとして成功すると考えているから、あなたと組もうとしてる。カミちゃんだって資金繰りやら経理とか。経営にくっついてくるクソめんどくさい事に煩わされることなくヘアメイクに集中できる。これってカミちゃんにとっても飛躍できるチャンスよ。資金力がある上島くんが関わるとなると経営拡大していくはずだからね。私から見ればウィンウィンの関係よ。でも……」
リカコはいったん言葉を切って上茶谷を見つめた。
「上島くんは、ビジネスだけじゃなく、もう一度、このことをきっかけにしてあなたとの日常を取り戻したいとも望んでいる」
リカコは強い瞳で言葉を続ける。
「もしカミちゃんが彼とどうしても組みたくないというなら、それも仕方ないって思ってる。だから私に遠慮したり気を遣うような決断だけはしないで。カミちゃんがどうしたいのか。それを知りたいの」
「……リカコさん」
二人はしばらく見つめう。先に沈黙を破ったのは上茶谷だった。
「話が先に行き過ぎてて。頭がまだうまく整理できないです」
上茶谷がため息をつきながらそういうとリカコもそりゃそうよねと微笑んだ。
「うん。じっくり考えてみて」
リカコが壁にかかっている時計に視線を向けた。十三時五十分を指している。
「カミちゃん、二時から予約はいってるって言ってたっけ」
「ですね。もういかないと」
上茶谷が立ち上がるとリカコがタバコを消しながらたずねてきた。
「上島くん、カミちゃんと連絡をとりたいんだって。電話番号を教えても大丈夫?」
上島と別れたあと、当時持っていた携帯はすぐに解約して電話番号を変えていた。上茶谷は一瞬口ごもるが、こういう状況ならば教えないわけにもいかない。